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一章 聖獣への道のり編

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正直、ちょっと気持ち悪い動き方をすると思ったが其を見ていれば青年は次の問いをする

「 能力を付けてやろう。何が欲しい? 」

『( 能力?って、なんだ……? )』

なんだその質問、まるでゲームの世界で一番最初に選びそうな内容
死んだと思っている俺がパッと思い付くわけもない

「 羽根とか、空を自由に飛べるぞ? 」

獣の姿へと変わった粘土に、新たに追加されたのは彼の言った羽根だった
梟のように白く大きな羽根だが、俺はそんなものに興味はない

『( 俺は人だ。地を歩く。飛べない空は望まない )』

「 なんだ、羽根はいらないか。なら変わりに大地を蹴り、何処までも走る事の出来る、丈夫で速い脚を与えよう 」

一瞬、頭の中でダチョウが思い浮かんだ
チーターは持久力に欠けてるから最速と言えばダチョウなんだが、他になんか動物はいただろうか
余り動物について詳しくないから青年が粘土遊びをするのを只見ていた

「 毛色は闇に紛れる黒。瞳は深い海のように蒼く、可愛いげない顔立ちにして…… 」

この人にとって可愛いと思われる動物を否定したのがよっぽど、気に触ったのか
可愛いげない顔立ちと連呼される……

そんな言わなくてもいいだろう、と思うが触ることの無い粘土は徐々に獣の姿を得ていく、けれど全てが完成する前に粘土はポンッと煙を立てるような音を出し消えた

『( ん? )』

「 よし、ある程度イメージ出来たところで君に"真名"を与えよう 」

『( 真名? )』

「 其が御前の新たな魂に刻まれる名だ 」

最後まで見れなかった事に少しだけ残念に思うも、真名と言われピンっと来ない
人間が産まれたばかりの子供に付けるのとは違うようにも思えた

「 全ての獣には命を司る神(私)から与えられる真名がある。御前にも新しい名前が必要だ 」

新しい名前と言うことは、前の名前は捨てたのか消えたりしたのか
やっぱり俺は死んだのか、其が不快とは思わずスッと胸の中へと入る

自称 命を司る神、と言う青年は手を伸ばし俺へと触れた

『( あたたかい…… )』

冷たい場所に居たせいか、手はとても温かく安らかな気持ちになる
遠い記憶にある、祖母に頭を撫でられた時と良く似てるほどにこの歳でも嬉しくも思う
 
「 氷牙、それが御前の真名だ 」

『 コウガ…… 』

空っぽの胸の中に入ってくる温かさは
まるで雪解けの大地から芽吹く春の草花のように
俺の冷たい心も身体も満たされる気がする

「 けれどこの真名は簡単には口には出せない。魂に刻まれた名だから御前は、出逢うもの達に新たな名で呼ばれるだろ 」

『( そうなのか…… )』

よく分からないが、本名があっても渾名で呼ばれる感じと同じだろうと
独りでに納得していれば青年の手は離れ自らの腰に片手を当て、整った笑みを浮かべる

「 氷牙、御前は私の子でもある。また会う日が来るだろう。それまで、頑張って"召喚獣"として新しい生を楽しんでくれ 」

『( ん?? )』

「 それじゃ、またな 」

『( いや、待ってくれ!! )』

最後の最後で、一番聞き捨てならない
よく分からない事を言われた気がするんだが
笑った青年は片手を振れば辺りは激しい光に包まれ

思考は止まり意識は消えていた

氷牙、それが俺に与えられた新しい名前だが……
最後に聞きなれない言葉を聞いた気がする

それに俺とそこまで変わらない青年の子供なんて、よく分からないし
結局、俺はなんで死んでなんでまだ生きてるのかも謎のまま

あの青年が本当に生を司る神なのかも怪しいところだろ

" そうそう、特別に。普通は無いんだけど獣の機能も備え付けといたからな!……なんて既に言っても遅いか…… "

あの青年が一体何者で
俺がどんな姿で新しい生活をするのかまだ分からないが
あの青年から見たら"可愛いげない獣"ってだけは理解した
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