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十話 最終章
07
しおりを挟む月に照らされた静かな海の水面に顔を出せばウィンドは岩に手を付き深く息を吐く
『 はぁ....遠い... 』
自分の体力の無さと、相手の海軍船も進み此方が追い掛けていたらまるでいたちごっこだと思い俯いた後に腕へと視線を向ければ眉を寄せ隠すように其処に触れる
『 もう、此処まで.... 』
ぐっと腕を握り締め、もう一度海へと飛び込み泳いでいく
只ひたすらに、会う為に.....
日付は一日、二日と過ぎていく
三日目の太陽が真上に昇る頃、甲板にて食事を行っていた二人はアランは予定通りにその我儘をいい放つ
「 俺ねぇ、やっぱりラム肉のソテーが食べたい。此処で焼いて? 」
「「 っ、分かりました 」」
一瞬顔色を変えた食事を準備した海軍に気付いた二人は目線が合えば僅かに笑い合う
「 駄目じゃないかアラン、我儘を言っては... 」
「 だって、魚料理なんて海の上だと飽きるよね 」
デリットは先に口に含んだ料理に盛られてることを気付いた為に合図を送ったのだ
例え記憶が無くても目の視線一つで何を言いたいのか分かることに
目の前で焼かれ初めた肉を見た後にアランはフォークを揺らしていればデリットはフルーツバスケットに入っていた皮の付いた果物である桃を取ればナイフを求める
「 アラン、ナイフをかしてくれるか? 」
「 いいよ、はい 」
腰から抜いた短剣を海軍へと差し出せば其を受け取った海軍はデリットへと渡す
距離のあるテーブルの為の行動だ
彼は短剣を受け取り鞘を抜けば
取り皿である皿を手元に置いた後に皮を剥いていく
「 ルイって桃好きだよねぇ。昔もよく、桃を食べてたんだよ 」
「 そうだったか? 」
「 そうだよぉ、人魚にもあげてたし、俺が熱出したときも食べさせてくれた 」
「 そうか、なら半分やる 」
皿へと切り分けて置いたのをデリットはアランへと渡すように言えば桃の半分を受け取った彼は笑みを溢し食べていく
焼き上がったソテーもまた互いのところに置かれればデリットは桃を食べた後に眉を寄せれば立ち上がった
「 ちょっとトイレに行く...先に食べてくれ 」
「 はいよ、 」
デリットがその場を離れ船内に入ったことを確認すれば彼は自身の桃を食べ終わった後に立ち上がり剣を抜いた
「「 っ!! 」 」
その場にいた数人を斬れば血の付いた剣を振り血を弾き飛ばし鞘へと戻す
「 ボサッとしてないで片付けて。不味い料理を作った責任だよ 」
「 チッ.... 」
僅かに舌打ちを漏らした海軍は倒された仲間を片付けていく
まるで捨て駒のように
「 ゴホッ、ゴホッ.... 」
廊下にて血を吐いたデリットは胃に感じる違和感に軽く笑う
「 容赦なく...盛るもんだから、隠すつもりねぇな...これは、先にバテるかもな.... 」
口元の血を拭けば壁に手を付き嫌な汗が滲む額を拭くこと無く部屋へと戻れば先に着替えて居たアランはごく平然に傾げる
「 おや、長かったね?大? 」
「 すげー頑固だった。というより、汚したのか? 」
「 そう脂が弾いたから嫌でね 」
ソテーはそこまで脂ぎってるかと思ったデリットだが余り言わずにソファーに腰を降ろせばアランはその前に座った後チェスの駒を動かす
「 少し顔色悪いけど大丈夫? 」
「 問題ない...また負けたと行って文句言うなよ 」
「 ふふん...今度は勝つから、いいよ 」
デリットもまた黒いチェスを動かしていく
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