月が綺麗ですね~無銘の海賊と声無き人魚~

獅月 クロ

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八話 閉ざされた真実

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ウィンドの話しにデリットは僅かに目を見開くも口を閉じた
オルガは彼の話を聞いた後に溜め息を吐く 

「 だからこの船に乗ったのか。使用人とその弟の事があって..... 」

自分が" 人魚 "と言う事は伏せて話したウィンドの言葉にオルガは言えば彼は緩く頷き握り締めていた拳を程く

『 例え王家が貿易に関して悪徳だったとしても、仲のよかった双子が喧嘩をするのは俺は見たくない...... 』 

「 だからって、御主は記憶の無いデリットとその海軍中将をどう話をつける気じゃ? 」

『 それは...... 』

例え長く過去話を語ったことで此れからの事は海賊であるキャプテンの考えと向こうの出方かを伺う事しか出来ないのは確かな話で
廊下に居たデリットは視線を落とし目を閉じれば直ぐに開けゆっくりと歩き出す

「 記憶のある弟から見れば兄弟喧嘩に過ぎんじゃよ。御主が元使用人ならばわかるじゃろ...上の者の命令は絶対なんじゃ。キャプテンが接触するというなら従うクルーはなにも言えん 」

確かにその通りだとウィンドは眉を寄せた
自分が無力な使用人だから此処に来たところでなにも変わらない
本来の目的である" ルイの傍にいたい "という理由だけなら弟を無視して海賊としてデリットに従い続ければいいだけど
けれどその" 従う "だけという気持ちは薄れ別の恋心が芽生えてるからこそ首を突っ込みたくなると

『 俺は.....あの人の後ろではなく。隣に立って支えたいんだ 』

デリットが居なくなったからこそ発するのとの出来る想いにウィンドは内心何処かスッキリとすればオルガは頷く

「 なら" ルイ "ではなく、御主が見るべきなのは今の" デリット "の姿じゃ。御主にはまだルイと重ねておる。此処にいるのはデリットとして、見るべきじゃな 」

『 ルイではなく、デリット.... 』

ふっと自分がルイ王子の面影を探していた事を思うも彼はオルガの言葉にゆるりと笑みを浮かべた

『 それならとっくに" デリット "を見ている。仕事に戻るので失礼します。話を聞いてくださりありがとうございました 』
 
深く頭を下げたウィンドは部屋を出れば急いでデリットの背中を追うように向かって行けば急に胸に感じた痛みに目を見開き壁に手を付いた

『 っ!! 』

締め付けられるほどの痛みと胸の苦しみに息をすることさえ困難で彼は廊下に差し込む月を見れば目を見開いた

『 もう....時間が、ないんだ...... 』

十日夜の月は姿を現していた

ウィンドに残された時間は10日間

その間にデリットに心と身体を愛してもらわなければいけないことに無性に涙は流れる

『 残り、10日で....無理だ.....でも、無理だとわかっても傍にいるって決めたんだから 』

今更後悔はしないと
人魚の寿命である約15年間はずっと片想いしていた相手のために使ったのだからと思えば平気だと涙を拭きデリットの傍にいく


柔らかな部屋の灯りが船長室の廊下に届いていればウィンドはそっと中に入れば彼は視線を上げれば緩く笑みを溢す

「 まだ寝ないのか? 」

『 キャプテンこそ、寝てないじゃないですか 』 

「 そうだな....考えていたら寝れなくてな 」 

『 弟のことで? 』

ウィンドは扉を閉めればそっと窓際に居た彼の近くへと行き其処から外へと同じ様に眺める

「 それもあるが、シレーヌの事や...この船やクルーのことだな....キャプテンになれば色々あるんだ 」

彼はウィンドの方を向けばその手を腰へと伸ばし引き寄せた
この状況で触れられるとは思わなかったウィンドは少しばかり驚くも素直に嬉しいことには変わらず同じ様に腰へと腕を回せば額を合わせる

『 キャプテンは、忙しいですね... 』

「 ....癒してくれるか? 」

『 俺でよろしければ、もちろん.... 』

微笑んだウィンドに鼻先を掠めたデリットはそのまま唇へと軽く口付けを落とせば柔らかい感触を楽しむように何度も優しげな口付けを交わす

『 貴方は狡い...... 』

「 海賊はズル賢い生き物さ... 」

腰を撫で抱き締めながら何度も身体を僅かに左右に揺らしながら口付けを交わせばウィンドは何気無く肩へと腕を回せば理解した彼は緩やかにステップを踏む

『 ダンス、出来るのですね? 』

「 俺は何でも出来る...多分な? 」

『 ふふ、なんですかそれ 』

女側の方で身を任せるようにダンスをするウィンドに彼はゆるりと回転させ腰を抱き持ち上げまた近寄らせ抱けばそのまま窓際からベッドへと移動しどさりと音を立て押し倒した

「 御前がいれば、何でも出来そうだ...弟に会うときは...出てくるな。航海士はこの船にとって必要だ 」

『 それ、んっ......! 』

まるで自分が死ぬとでも言うような彼の言葉に何か言い返そうとしたウィンドだが深く重なった唇によってそれは塞がれ何度も重なりながら手は服へと伸び舌を重ねて擦り合わせる

ゆっくりと柔らかな時間が流れる
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