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七話 人魚の恋心

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食事を終えてすぐにデリットはティタンから果実を二つ貰えばその場を後にする
ウィンドは何処かその様子を見て着いていこうか迷うも身体は動かなかった

『( 桃を二つ...... )』

デリットが無意識に欲し要求したのは桃でありそれはウィンドにとって思い出のある食べ物
例え彼が記憶を無くし覚えてなくても見てしまうのは心が痛むと
ズキリッと痛む心の訳に気付いたウィンドは自分ではなにも出来ないことにそっと視線を外した


「 ほら食え 」

「 ん?これ....なんですか? 」

地下にやって来たデリットは暇そうにしていたシレーヌへと持ってきた桃を一つ見せた後に知らないと分かればその場にしゃがみこみ
一つを膝の上に乗せれば腰から小剣を取り出し目の前で剥いていく

「 甘い、匂いがします! 」

「 そうだ....っ、 」

ふっとシレーヌの言葉にデリットは手を止めれば映像の様に浮かび上がり流れていく


前よりハッキリとそして幼い視点の中で声は聞こえてきた

『 あ、甘い...! 』

「 でしょ?おいしいんだよ、__はおさもうとかすきだったから、どうかなって 」

『 ん、おいしい! 』

「 そうでしょ、おつきさまみたい 」

誰かに桃を上げて一緒に食べた気がすると
必死に思い出そうとし眉を寄せたデリットは不意に聞こえてる音に顔を向ける

ちゃぽんっ

水面を揺れ動くシレーヌの尾びれを見た後にその恐らく幼い自分が話していた相手に気付いた


「 俺は昔....人魚と...遊んでいた? 」

鮮やかな色と尾びれをもつ者の顔までは分からないがあの不意に聞こえてきた音は尾びれが水面から僅かに出ては動いた音だったと

「 デリット? 」

「 あ、あぁいやなんでもない....ほら、食え 」

シレーヌに呼ばれた事でハッとし綺麗に剥いた其を差し出し、彼とその手の上の桃を交互に見た後両手でそっと受け取り恐る恐る齧ってみればすぐに笑みは溢れる

「 ....あまい! 」

「 そうか、人魚は....甘いものが好きなんだな 」

「 ん? 」

「 俺は少し行ってくるが、中の種は取るん
だぞ? 」

分からないまま何度か頷いたシレーヌを見た後にデリットはもう一人の元へと向かった
片方の桃を渡したいと思い

昼間の雲が広がる晴天が甲板を包み込む
暖かな気温と風は絶好の航海日和
洗濯を干すクルーや暖かな内に甲板の掃除をする者
其々を船内から出てきたデリットは探すように見れば此処にはいないかと中へと戻り次の部屋へといく

其処は必ず居るだろう航海士の部屋

「 ウィンド、居るか? 」

『 っ!キャプテン....! 』

扉をノックする事さえ忘れ開けたデリットは丁度風呂上がりで着替えていたウィンドは驚き目を見開くも生憎男の身体には見慣れている彼は気にもせず中へと入り後ろで扉を閉めれば、近付く

アワアワと一人焦り服を着替えたウィンドは平然と保つように問い掛ける

『 えーと、なにか御用ですか? 』

「 食事のデザートに桃は食べないか? 」

『 !桃....いいんですか? 』

それは恐らく二つの内の一つだとわかったウィンドは嬉しくなり頷けば彼は椅子に座り剥き始める

「 当たり前だろ。その為に持ってきた....それとも角砂糖の方がよかったか? 」

『 え、角砂糖? 』
 
「 いや、なんでもない 」

急に角砂糖と言われても分からないウィンドは傾げるも少しだけ会った彼奴かと確認してみたデリットは違うかと内心思いながら剥けば半分に切れ目をいれ其を更に半分に切ったところで差し出せばウィンドは一つ掴み口へと入れる

『 ん、やっぱり美味しいです 』

微笑むウィンドは彼の前の椅子へと座り頬を緩め頷く

「 ....甘いよな、シレーヌも喜んだが人魚ってのは甘いものが好きなのだろうか 」

『 えっ? 』

一つ取り口にいれ食べるデリットはそんな言葉を漏らせばウィンドは自分の正体に気付いてるのだろうかと内心驚も直ぐに笑みをこぼす

『 さぁ、どうでしょ?好みは有ると思いますけどね 』

「 そうだよな 」

『 あ、そうです!桃の御礼と言うか....もっと早く渡したかったんですが..... 』   

人間と同じ様にあるかと思ったデリットは一人納得していれぱ彼は立ち上がり今なら渡せると隠すように置いていた箱を持って来れば彼へと差し出した

それはウィンドとスクードが選んだワインの箱だ

『 あの、おつかいの.....酒です。スクードと選んだのですよ 』

ちょっとだけ照れた様なウィンドに彼は桃を置きポケットから出したハンカチで手を拭けば其を受け取り中を開ける
 
箱に描かれたのは女の人魚の姿

その酒の名前はmermaidマーメイド
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