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三話 新米航海士

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深夜になり聞こえてきた御丁寧なノック音にウィンドは顔を上げる
古い時計へと視線を向ければ既に深夜の0時を回っている
何時から考えていただろうかと、思考を巡らせるも頭の中は地図の事でいっぱいの為思い付かない

『 はい、あ....! 』

ガチャリと扉を開けたウィンドは目の前に立つデリットに驚く彼がまともにノックするとは思わずに固まったほんの数秒には彼は既に部屋の中に入っていた

「 航海士が寝不足になって天候の変化に鈍ればどうするんだ 」

『 !....すみません、ですがもう少しで解けそうな気がするんです 』

開き口から出た言葉にその通りだと謝ることしか出来ず、部屋の扉を締めテーブルに広げられた地図と紙を見れば もう少し、いやほとんど詰まってると言っていい程行き詰まっていた

「 ったく.....もう少し柔軟に考えられねぇのか 」

『 柔軟に....? 』

「 嗚呼、取り敢えず晩飯そんな食ってなかったろ。これでも食え 」

テーブルに座るデリットは持ってきていた二つの桃を見せ片方を差し出した
柔らかく果汁が多く甘い匂いが既に想像できる
淡いピンク色の桃をそっと受け取ったウィンドは有ることを問いかける

『 覚えていたのですか?俺が、桃が好きだと..... 』

「 は?いや、知らねぇが....寧ろ御前とは昨日程度しか一緒にいないだろ 」

『 .....そうですね、 』

腰のホルスターから取り出した小型のナイフで剥いていくデリットは会ったこともないだろと呟く
期待したと反面にもう8年前の事は忘れてるだろうかと肩を落としていたウィンドの手に桃は置かれ変わりに剥いてない桃はデリットの手に戻る

『 え? 』

「 食え、甘いものはいいぞ 」

『 ありがとう御座います.... 』

桃は手が汚れないよう底の皮だけ残し後は花のように剥かれ食べやすいように4等分に切られていた
其を見て微笑み一つ取れば口へと含む

『 甘くて、おいしいです.... 』

感動する程かと同じ様に剥き一つ食べるデリットはふっと昔もこういった風に食べた気がすると僅かに視線をウィンドに上げた後に目線を反らし地図へと向ける

お堅い頭が考えそうな程に地図に素直に騙されてることに何処と無く仕方無いかと思うが一枚だけの地図では流石に無理があるかと

「 .....地図ってのは.... 」

『 ん? 』

「 只、真上から見ればいいってものじゃないんだ 」

ヒントを告げるつもりは無かったが仕方無く呟き、桃を食べながら微笑んでいたウィンドは地図へと視線を向け傾げる
真上から見てたのか、いや、横からも見ていたととまた考える

『 難しいですね.... 』

「 地図を知らなければそうかもしれんな。ん、俺の分もやる 」

『 いいですか?フフッ、桃好きなので嬉しいです 』 

一つだけ食べ残りを差し出したデリットに食べ終わったそれをゴミ箱に捨て新たに受け取れば食べていく 
甘く香る桃の味に緩やかに笑い食べるウィンドの様子をちらっと見た後に一つ息を吐く

「 まぁ、御前なりに解釈すればいい 」

『 頑張りますね、 』

ほんの前には剣を向けてきたウィンドがどうして其処まで自分の前で笑みを溢すのか考えたデリットは問い掛ける

「 俺は、御前の知り合いに似てるのか? 」

『 ....えぇ、似ていますよ。とても.... 』 

「 そうか....なんと無く気に入らないな 」

似てると言われれば気に入らないのは特に誰も同じだろ特にキャプテンであり人の上に立つデリットにとって他者と比べられる事に嫌気がし立ち上がればウィンドの顎を掴む

『 っ....? 』

「 俺はキャプテン・デリット。罪を背負う男だ....御前が言う" ルイ "って奴と比べるな彼奴は死んだ、そう....元キャプテンから聞いた 」

『( 聞いた? )』

その口振りは前に聞いた、王の悲鳴はよかったと言う言葉が出鱈目だと言うかのよう
そして、港町で飯を食った時に海賊は嘘をつくと言う自分の言葉に笑うデリットの様子を思い出す

『 貴方は........っ!? 』 

過去を覚えて無いのですか、そう告げる前にウィンドの唇はデリットの唇で塞がられる

『 っ、....ん! 』
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