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二話 売られる人魚
05
しおりを挟む沈没船を見つけ中へと入れば老婆は中央に座っていた
まるで俺を待っていたかのように
「 海の噂は、私のところにも流れてくる....望みはなんだい? 」
濃い紫色の尾びれを揺らし問い掛けてきた言葉に驚いた後に直ぐに胸元に手を置き告げる
『 会いたい、人間の元に行くために....俺に、人間の脚をください! 』
きっと出来ないと分かっていてもルイと同じ人間になりたかった
だからこそ告げれば老婆は驚くこともなく静かに告げる
「 会っても人と人間では生きる時間が違う。人魚の寿命を知ってるかね? 」
『 .....いえ 』
「 ほんの、20年じゃ 」
20年それがどのくらい短いのかこの時には何一つ分からなかった
だからこそ平気だと頷いた
『 俺の残りの人生、あの子の傍にいられるなら十分 』
「 ....そうかい。人の脚を手にいれることは簡単じゃ。それと人魚の命が短いだけで人の命は長い 」
『 どういうこと? 』
「 心から初めて愛した者と心も身体も繋がればよい 」
老婆はその後に説明をしてくれた
俺の声を貰うとそれは"想いを伝える"言葉と
俺からは言えない愛の言葉
その時の俺は愛の言葉がなんなのか分からないまま頷いていた
そして貰った薬を手にまた長い道を戻り
ルイの城に戻ったときにはまた夏が訪れた
7歳の俺、ルイは5歳だろうかと心弾ませながら砂浜へと行けば薬を飲みこんだ
『 っ!!あつ、いっ!!あ"ぁっ!! 』
焼かれ様に痛む脚にもがき苦しんで尾びれが消えたところで俺は息を吐き自分の身体を見て驚いた
『 はぁ、成長....してる? 』
一時的に人になったことで前より数歳成長しこの時の俺は12歳ぐらい
伸びた手足を見た後に起き上がろうとすれば転ける
『 なにこれ、人間って、なんで....あるけるんだ 』
生まれたての子鹿のようにプルプルとしてなんとか立ち上がれる程度
やった歩けてもフラフラの状態でそれでも城へと目指した
門の前で何度か叩けば兵士をまた後に俺は此処まで来る間に泳ぎつかれそして歩き疲れた事に気付き気を失った
「 な!?急いで医者のもとへ! 」
「 私は王に連絡を 」
見た目も声も多少変わってしまって
一年前、それもほんの夏の間しか居なかった俺の事など幼い二人が覚えてるはずもなく
ここで俺は言えない言葉を分かる
" 逢いたかった "
その言葉は出ずに喉でつっかえる
そうか、これは一方的な俺からの思いだと察する
そしてあの優しげなメイドの子供として此処に雇わせて貰えることになった
アランには既に他の使用人がついていた為にまだ居なかったルイの専属の使用人として俺は教えられた身の回りの事から、剣術や馬術も教えた
それは俺が影でずっと学んだこと
まず怒られたのが言葉遣いと上下関係
これが案外めんどくさくて広い海で自由を好む人魚にとって窮屈で苦しい
だから先をルイが言ってくれた
俺は言葉を発することが出来ない
まるで思い人が喋った言葉だけ話せるようなそんな感覚
「 キースが、ここに来てくれると嬉しい!ずっといたい 」
『 !!私も、いたいです 』
喋る想いの数だけルイが俺にくれた想いの数
だからこそやっと言えた言葉に嬉しくなる キース、それは唯一俺が名乗ることを許された単語
人魚の世界に名で呼び合う習慣がなくてよかったと思う
「 俺はキースが好きだけど、教えるときのキースは嫌いだ 」
『 私も我儘な王子は嫌いですよ? 』
「 うっ、そんなこと言うなよ.... 」
自分から嫌いと言ってふてくしたのに俺が言ったら悲しそうにするルイに軽く困ったように笑ってから抱き締める
言葉では伝わらないが出来ることはスキンシップ
誰もいない場所なら抱き締めることは可能だと知った
『 嘘ですよ。私はルイが好きです 』
「 へへっ、そうだろ! 」
人魚と時とは違う、独占欲
傍にいる事は周りから許されてるために何を俺がすると告げて自分でやっても許される
人魚の時は遊ぶだけで部屋に入ることさえ許されなかったが王子であるルイの一言俺は傍にいれる
「 ルイ王子!もう寝ましょう? 」
「 やだ!寝るならキースと寝る! 」
「 でもキースは....使用人で 」
「 俺がいいっていってんだ、いいんだよ 」
『 では、私はその命令を受けて一緒に寝ましょう 』
我儘が多いルイに振り回されるメイド達
けれど俺はそれが嬉しかった
ルイが言えば何処にでもいれる
それは他のメイドが許されないこと
だからこそ一緒に寝ることも出来たのだ
「 へへ、キースってちょっと冷たいから気持ちがいい 」
『 ん、ルイが熱いから俺もまた気持ちがいい 』
二人きりの時だけ許された
タメ口はルイの影響で似てしまう
それすら心揺れるのは何故だろうかと思いながら腕の中に居るルイを抱き締めた
やっとこの温もりと匂いを独り占め出来てかのまま俺が死ぬまで傍にいれと思った矢先の海賊
許すはずは無い
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