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二話 売られる人魚

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ほんの15年前の話だ

当時5歳だった俺は母親の帰りを海の底から待っていた
暗く寒い海の底、人魚に家はあるもそれは落ちた沈没船や古代の遺跡の場所に只寝る為に子育てするために居座る 

お伽噺のような美しい城なんて存在しない
光が届かない程の底

まるで泳ぐ魚と同じ様にいつの間にか産まれ生きてきた
どうやって生きてきたかそんなの思い出せないほど海の底は静かだ

『 少しだけ、ほんの少しだけだから.... 』

言い聞かせるように見たことのない世界を見たくて、海の底から海面へと泳いでいく

何故か海面に近付く程に潮は激しく渦を巻いてる場所があった

『 これが、あらし!? 』

初めての経験で泳ぐ事すらままならず必死に水面へと顔を出せば打ち付ける雨の中で影の上から一人の幼い子が海の中から泣いていた

「 おにいちゃん!! 」

『 まさか、おちたの? 』

人間だと直ぐに分かった
母親は人間とは関わるな、野蛮な生き物だからと教え今の今までは見たこと無かった
けれどこの時だけは金髪の子供の泣き声に俺の幼い胸は打たれもう一度辺りを見渡せば目を見開く 

「 たす、け....っ! 」

『 いた、あの子だ!! 』

この状況で水面に居た事に必死になって泳いでたんだと思えば俺は流れに逆らい、海底へと行き手を伸ばした

『( あと、もうちょっと.... )』

うっすら目を開いた子供の手首を掴み身体を支えれば直ぐに気を失ったことに焦り、水面へと泳いだ

『 はぁ、はっ..... 』

雨に濡れる砂浜に必死に引きずり、こんな時に尾びれが邪魔だと思いながら子供を仰向けにさせる

『 ほら、めをさまして。おきるんだよ! 』

乱暴だが頬を叩き肩を揺するも何一つピクリとも動かない子供に涙は浮かぶ

『 せっかく、たすけたんだから!めをさましな!! 』

どうしたらいいか分からず声を上げた後にふっと、海の底に流れ落ちた本で見たことあると見よう見真似で顔を支えれば口付けを交わした

何度も何度も、きっと間違えだらけだったかも知れないが子供はごほっと海水を吐いた 

「 はっ、はぁ.... 」

『 よかった!よかった..... 』

種族は違えど初めて人を助けた事で安心感と達成感に涙は流れ起きあがった幼い身体を抱き締めた
まだ3歳程度の子供、それがよくあの中で生きててくれたと泣いていれば子供は俺の尾びれへと触れた

「 これは、なに? 」

『 ! 』

其処で俺は自分の姿に気付き内心焦るも不意に子供の口元へと指を当てシーと呟けば微笑む

『 ぼくはにんぎょ、ほら.....げんきで 』

「 にんぎょ?かわいい、きらきらだね! 」

『 ありがとう、じゃね 』

鱗を褒めたのだろう
人魚の鱗は感情で色鮮やかに輝く 
この時の俺は胸の高鳴りと人間にバレてしまった事の焦りを含め感情に波があればそれは反して光輝く

手を振り砂浜から必死に這いずって海へと戻れば、隠れた後にその子供とさっきの泣いてた同じような子供は抱き着きあい、そして大人達は安心したように告げた

けれど、俺のせいで....幼い子供の一言海は荒れた

それから気になった俺はちょくちょくと子供の様子を見に海から顔を出しては見ていた 
子供また大きな御城の窓から俺を見れば手を振ってきた

『( かわいいな、 )』

人魚の世界で同い年や其より下の子を見ることは滅多にない
大半は大型の魚に食われたりするために俺もまだまだこの先生きれるか分からない状況だった為に母親から遠く離れるのは危険だった

「 なんて事をしてるの!! 」 

『 っ、ごめんなさい.... 』

「 人間の子供を助けたって、私達が此所の周辺に住んでるのがバレたら人間は.... 」

母親にバレて、頬を叩かれて痛む頬に自業自得だと内心笑えてくる
薄い水色の尾びれを持つ母親は何処か焦りを見せれば辺りを見渡す

「 住む場所を変えましょう。直ぐに支度をしない 」

『 ....はい 』

親に逆らえば生きていけないことを知っている
だからこそ素直に頷いてから頬を撫でた 
あの子を見守る事は出来ない

其が何故かとても胸が痛み自然と涙は溢れていた
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