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プロローグ

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大きな水飛沫と共に冷たく凍るような青く暗い海の底に引き込まれるような感覚に、僅かに口から空気は漏れる

もがく気力も無く只沈む感覚に身を委ね、そっと遠くに見える月の光を掴むように幼く小さな手を伸ばす

" 誰か、助けて... "

沈む身体と反して息苦しさに意識は薄れていく
こんな事ならばもう少し泳ぎを教えて貰えばよかったのだろうか
そんな事さえ考える余裕すら無く泡と共に涙は流れ上がる


" ッ....! "

意識が薄れる寸前で見えた気がした

青く深い海に揺れ動く魚よりも遥かに美しい青みがかった尾びれを...

其処で意識は途切れた


「 はぁっ、ゴホッゴホッ! 」

『 王子!! 』

溜まった海水を吐き出し咳をすれば聞こえてくる自分の使用人の声
それと同時に複数の大人達は急いで近寄ってきた

" 王子 "...自分をそう呼ぶ声の主へと、身体を起こせば顔を向ける
生まれて直ぐに自分の使用人となった王族に使えるメイドの子供
黒髪に美しいセルシアンブルーの瞳と自分より少しだけ年上だがいまだ幼さ残るその顔は心配そうに此方を見た後に身体へと抱き着いてきた

『 王子、よかった...御無事だったのですね 』
 
「 ん、キース...心配かけてごめん 」

『 いいえ、王子が御無事なら其だけで十分です 』 

溺れた自分より肩を震わせている使用人のキース
その背中に触れれば濡れてることに抱き締めたからだろうかと思いながら、視線を辺りへと向ける
あの助けてくれて尾びれの持ち主は居ないのだろうかと

「 キース、誰かいなかった? 」

『 いえ...見てませんよ?王子が船から落ちたときは心臓が飛び出るかと思いました。もう、海に身を乗り出さないで下さいね 』

口煩いキースに王子と呼ばれた少年はその金色の髪とコバルトブルーの瞳を細めやっと笑みを溢した

「 そっか、心配かけたね 」

海へと身を乗り出す前に何か見た気がしたけれど溺れたことの方が印象的で何も覚えてない

只、美しい青みがかった尾びれを見たと言うことだけは覚えていた

「 さて、王子様。風邪を引くので中で着替えましょう 」

「 ん、分かった 」

大人達につられるままに王子と呼ばれた少年は砂浜から立ち上がり城の方を入っていく

『 ......本当、無事でよかった 』
 
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