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しおりを挟む「 待たせたな 」
「 歯ぁ食いしばれ 」
「 落ち着け 」
「 これが落ち着けるか!妊娠してるって言われたんだよ!?避妊薬呑んでたはずなのに、便秘薬なんて!! 」
私服でやってきた彼は、爽やかな笑顔を見せるが私は拳を握り締めて殴る気満々だった
文句を言えば、彼は反省する様子もなく軽く首を傾げた
「 喜ぶべき事だろう?俺達の子だ 」
「 貴方は孕ませて放置だからいいだろうけど!こっちは産まなきゃいけないんだよ!キツイし、痛いだろうし!私、痛いの嫌いなんだよ! 」
ドMじゃ無いと思えば、彼は距離が空いていたのを縮め、そっと近付いてくれば俯いた私の頭に触れてから、背中へとそっと片腕を背中へと回して抱き締めてきた
「 すまない…。出来るだけのサポートはするから産んでくれないか?。御前ばかりに負担にさせるのは理解してるが…俺は、御前との子が欲しい 」
「 っ……… 」
付き合って、買い物デートした時も赤ちゃんポンポみたいな場所を眺めては、そんな事を言っていた
゙ 子供いいな。俺は御前との子供がほしい ゙
゙ 気が早すぎ… ゙
私は本気にしてなかったけど、彼はずっと子供が欲しいと言っていた
年齢もあるのだろう…
三十六歳か、七歳前に生まれる子供が…
成人した時には彼は五十代後半になってる
それがあるから、子供を急かすのは分からなくは無いけど…
私は何一つ、心に整理ができてないままの妊娠だから不安でしかない
「 仕事出来なくなるかも…。ギリギリまではするけど… 」
「 育児休暇はしっかりしてるんだ。構わない。下のオフィスに預かり保育もあるだろ?心配ならそこに置けばいい 」
「 本当…簡単に言うよね。いいよ…ほら、女医さんの話聞こう 」
「 嗚呼… 」
知らない男の子ならまだしも、知ってる人の子供を下ろす選択肢は無い
色々不安であるけれど、彼が望むなら…
これは望んだ妊娠に入るのだろう
そっと手を取って引けば、看護師さんに連れてきたことを言えば、すぐに奥の診察室へと通された
女医さんに、相当ネチネチと遼は怒られていたけど、ざぁまない
「 ここに書いてあるものは妊娠中は食べてはだめよ 」
「 はい…」
それはさっき見た物より、細かく書かれた紙だった為に分かりやすいと思う
色んな説明を聞いたり、もう少し大きくなったらエコーとか始めるって言われた為に、今日は帰ることにした
「 そういえば、私が生理来ないって悩んでた辺りから生魚も酒も禁止にしてたよね! 」
「 そんな気はしてたからな 」
「 なんで牛肉ばかりなのかなーって思ってたけど…酷い!もういい…高い焼肉食べに行く! 」
「 いいな、食おうか 」
婚姻届けは、日付を決めてから届けに行くことにした
今は、悪阻が酷くなる前に食べようと思い
食べれるものは食べていた
「 あれ、私…悪阻酷くないかも? 」
胸焼けすらする事なく、悪阻が酷い時期でも食べれていた為に、想像していたよりずっと辛くはなかった
「 元々食うのが好きだから、腹の子も食いしん坊なんじゃないか 」
「 そうなのかもー?私がお腹空いたら、君も腹ぺこになるもんね 」
「 ふっ、そうだな 」
妊娠三ヶ月を過ぎても悪阻は来なく、食欲は普通にあった
そして、時間がある度に彼は私の横に座ってはお腹に触れて、優しく撫でて来るのを気に入ってる様子
仕事の時よりずっと優しげな顔をするようになる
妊娠四ヶ月目に入り、検査に来れば
ずっと気になっていたことを教えてもらえるのだが…
「 性別は… 」
「 待って!聞くのに勇気いる! 」
「 ……… 」
女医さんの心の声が分かる彼は、分かったらしく口元を緩めていたが、
私はパっと耳に手を当てては、落ち着いてから聞くことにした
「 よ、よーし。どっちでもいいよ!ばっちこい! 」
「 フフッ、性別はね… 」
「 男の子だ。そうだろう? 」
「 えぇ、正解よ。流石パパね 」
女医さんのわかってたくせに!と思うけど、男の子だと告げた彼は、嬉しそうに微笑んでいた
沢山食べるって言ってたから、男の子かな?なんて思ってたけど、
まさか…本当にそうだとは…
「 男の子かぁ…パパの跡取りになるかな 」
「 如何だろうな。どの仕事をしようが構わない。コイツの行きたい道に進ませればいい 」
「 …そういう、台詞はちょっとかっこいいと思う 」
「 ふっ、そうか 」
パパって言ってるけど、
婚姻届けを提出しただけだった!!
何故か、私の誕生日にね!!
そしてこの人はパパ呼びを普通に受け入れてる辺り、ちょっとあれだけど…
幸せそうに微笑んでくれるから良いのかな??
「( …まぁいいか )」
妊娠は実感無いし、お腹にもう一の命があるってのは不思議だけど
検査に来る度に大きくなってたり、
社員に身体を気遣って貰う言葉を投げかけられたり、
凄く気の早いこの人が、赤ちゃん用の物を買い始めた時には、言うのを止めた…
そして、もう一ついいことがあった
「 私の奥さんも、妊娠したのですよ 」
私達が六ヶ月目に入った頃に、熊狼さんに言われた言葉に驚けば、二人でこそっと笑いあっていた
「 良かったね!奥さん、頑張って 」
「 えぇ、ありがとうございます 」
ウキウキ気分の熊狼さんの心の声は、遼には分かるのだろうね
彼は、祝とばかりに好きなキャラの缶コーヒーを上げていた
「 ウチの息子共によろしくな 」
「 っ!?あ、こちらこそ… 」
缶コーヒーを嬉しそうに持つ彼に、私達は笑顔で見詰める
もう、普段通りは無理そうだけど…
それでも、新しい日常は楽しいと思う
「 ソフトセックスでいいから、しないか…? 」
「 …性欲は少しは抑えられて欲しかったかな。まぁいいけど…。私もそんな気分だったし 」
「 ふっ、知ってる… 」
夜だけは、あまり変わらなかったけどね
ちょっと控えてくれてるぐらいにはなったけど…
触れる口付けに幸せだと実感すれば、彼はそっとお腹を撫でては身体を下げ、服の上から腹へと口付けを落とす
「 愛してる。透羽。…これから生まれてくる息子も二人纏めて…… 」
「 ふっ、ありがとう。私も愛してるよ、りょーちゃん 」
その内、最強のコブラは…
最強の息子に負けるんだろうね
「 パパ…あーんぱーーんち!! 」
「 ぐはっ!!!( がわ゙い゙い… 」
「( ……最強のコブラは、息子には弱い )」
~ マングローブはコブラに勝てない。完 ~
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