鬼上司は部下を甘く激しく愛する

獅月 クロ

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結局、熊狼は最後まで挿入をする事は無かった

途中からは俺だけに任せて、本人はさっさとシャワー浴びに逃げたぐらいには、部下に手を出す事は出来なかったのだろう

「 帰る。また機会があったら呑みに誘う 」

「 そうして… 」

眠った彼女を客室に戻し、シャワー浴び直してからカッターシャツを着て、服を着直せば熊狼はテーブルの上を片付けては呟く

「 俺は、遼の事を信用してるし尊敬もしてる。けれど、今回の件は…少し幻滅した。これじゃ酒を呑ませて連れ帰る連中となんら変わりない 」

「 責任持つさ。此奴が相手がいない時に付き合えばいいだろ 」

「 なんでも簡単に言うな。そう…現実は甘くないよ 」

この時は、そんな事は無いだろうと思ったまま、後の事は全て押し付ける形でマンションを出ては借りているホテルへと戻った

相変わらず、連絡はしない為にあれから朝陽という女が如何なったかは知らないが、俺はジムに通いながら、体格を作り上げていた

「 なぁ、オヤジ。日本支部の方…俺にくれよ 」

「 随分と急だな。なにが目的だ? 」

「 只、利益を上げてやるだけさ 」

そして2年前
父親から日本支部の社長になる事を認められ、その席に移動する事が出来た

既に五人存在する幹部の一人として、朝陽という女は、秘書である熊狼の隣へと立っていた
俺を睨む表情を見ると、あの日の事は覚えてないんだなって思う

「 本当にこっちに来るとは… 」

「 そりゃ、気になる女が居るなら来るだろ。それで、あの日の事はどうなったんだ? 」

「 起きたら覚えていなかった 」

缶コーヒーをお互いに買って、ステイオンタブへと片手の指を掛け開ければ、一口飲む俺の横で、彼は溜息を吐く

゙ 嫌な夢を見た…と言ったから…。夢で片付けたんだろうけど… ゙

「( 現実逃避したってことか… )」

そりゃ片方は上司、もう一人は知らない男とヤッたと思うなら、事実から目を背けて無かった事にするだろう
それを敢えて、ほじくり返す程に俺は性格が歪んだ訳じゃない

嫌だと思われたなら、言わないでいるさ

「 そうか…。御前も嫌な気持ちにさせてたな 」

「 いや…別に。彼女は普通に可愛いですから 」

゙ 好みじゃないが…。部下や妹としては可愛い ゙

そう心の中で呟いた熊狼に、此奴がどれだけ気に掛けてるのかは、仕事をしてる中で知っていく

そして、あの日…此奴が子供っぽい方が年齢に合ってると言ってた意味も分かるほどに、彼女は仕事場では完璧であった

「 今月の成績、前回より155%UPで朝陽くんですね 」

「 流石、朝陽さん! 」

「 若いのに実績優秀だよね 」

「 …いえ、当たり前のことをしてるだけなので 」

一切、笑いもしなければ俺を見るなり、顔を背ける
よっぽど後から入って来て社長になったのが気に入らないのだろう
親しくなるつもりでいたが、嫌われていくばかりなのは心の声を聞かなくても目に見える

だが、それは時間が経過するにつれて
彼女は俺をライバルへと認識し、そして体格がいい、尻が良いと言い始めた

いや、実際には心の声なんだが…

「 夕凪社長、書類の確認お願いします 」

「 嗚呼、分かった 」

゙ 上腕二頭筋、前より少し発達したかな。今の方が良くなってる… ゙

こいつは些細な事でも気付き、それを心で呟く
ちらっと目線を上げれば、全く違う方向を見てるから、見てるのを察しられないようにしてるのだろう

だが、それは俺にとって好都合であり
楽しいと思うようになった

「 夕凪社長、おはようございます。今日の確認ですが… 」

「 おはよう。嗚呼、なんだ? 」

゙ あ、少し髪切ってる。今日の方が格好良い ゙

「( ありがとうって言い掛けてしまいそうだ )」

髪を切った、ネクタイピンが変わった、爪を綺麗にしてる、肌がいい、筋肉がいい、下着は何が似合いそう
仕事の言葉とは裏腹に聞こえてくる、俺の容姿の些細な変化も見落とさず思ってくれるのが、毎日嬉しくて仕方無い

゛ 夕凪社長、こわっ…… ゛

゛ 人でも殺したんじゃない? ゛

゛ マフィアのボスとか噂あるらしいし ゛

「( ねぇよ、そんなもん )」

俺の顔だけを判断する、奴の心の声は苛々するが、
朝陽だけは違っていた

「 夕凪社長、飲み物をお持ちしました。どうぞ 」

「 嗚呼…ありがとうな 」

゙ 本当、蛇みたい…。そう、タイパンみたいな? ゙

「( タイパン? )」

なんの種類だ、と思い後々から調べてみたが…
目が丸い感じの黒い蛇だと知れば、俺はそんな風に見られてるのかと思った

いや、只キングコブラなんて言われるより全然いいけどな

心の声を聞くのは簡単で、意識をしなくても耳に入る
だが、聞きたいと思うようになったのは此の世で一人しか出会わなかった

「 透羽、俺は…御前だから聞いていても苦ではない。だから…俺と結婚してくれ 」

「 一周回ってから如何してそうなるかは分かんないけど…。考えとく… 」

「 フッ、ありがとう 」

色んなことを言わずに、ラブホで告白すれば、彼女はもう少し良い場所があるだろうと思いながらマグロを口へと含む

゙ 心の声……。あ、何が好き? ゙

「 サーモンが好きだよ、俺は 」

「 !…私は全部好き 」

「 知ってる、だから色々入れてるんだろう 」

色々食べたい!といいながら寿司屋を楽しみにしてるのを知ってるからこそ、これに決めた
嬉しそうに食べているのも、俺が心の声が聞こえると分かってから、敢えてそっちで問い掛けてくるのも可愛いな

「 ……やばい、キスしたい 」

「 生臭くなるから、拒否 」

髪を撫でては、疼くが否定された為に我慢して箸を掴み直し口へと運び、夕食を食べていく

俺が心の声が分かると言っても、
離れる気は無いようで安心はしたがな…

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