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しおりを挟む「 ド下手だな 」
「 う、うるさい!そんな事言うなら、りょーちゃん取ってよ 」
「 必要ないだろう 」
「 ほしいもん!!ウタに似てるから! 」
ゲームセンターに来て早々に、目についたクレーンゲームでまん丸ハムスターのぬいぐるみがあって、
すでに三回はやってみたけど、取れる様子がない
底に小さなボールが敷き詰められてる、三本爪の確率機と言われる、UFOキャッチャートリプル
大きめのぬいぐるみだし、ウタみたいに珍しい黒白模様だからこそ、欲しい
「 ネットで買えば良くないか 」
「 そんなの努力の意味がない…。そりゃ、ネットで買うと早いけども 」
スマホを取り出して検索し始めた遼に、其れじゃ意味が無い!と言おうとして、財布の中身を見れば、酒を飲んだせいですっからかんだった事を思い出し、彼に告げる
「 ちょっと通帳から下ろしてくる 」
「 別に下ろさなくてもいいだろ。遊びたいなら、やるぞ 」
「 え? 」
スマホをポケットに直した彼は、財布から諭吉を取り出すなり、私の方へと差し出してきた
新札だし、すげぇ綺麗なんですけど!
え、ブラの試着してた時に下ろしてきたの?ってぐらい
「 ほら、遊べばいい 」
「 いや…流石に人様のお金で遊べないです… 」
一万円を稼ぐのにどれだけ大変なのか分かってるから、流石に遠慮する
そりゃ、ブラでそれ以上を支払わせたばかりといえど…!
それとこれとは別!使う物と遊ぶものでは!
「 なら、この金でぬいぐるみを注文する 」
「 遊ばせて貰いまーす!絶対に三千円以内で取ってやる! 」
「 ファイトー 」
そういう事なら、それより安く取ればいいと思い、喜んで諭吉を受け取れば近くの両替機を探して、向かう
両替機が見つかれば、一万円を入れ五千円と千円札に替え、千円札分を全て百円玉に変えれば財布へと入れる
ふっと、お金を直していれば子供の声が聞こえてきた
「 にぃちゃんすげぇ!!いいのか!?ありがとう! 」
「 いいよ、どういたしまして 」
あれ、この声は…
もしかして、と思い両替機から離れて声のする方を見に行けば、脚は止まった
「 このヒーロー欲しかったんだよなー!へへっ、すっげぇ嬉しい! 」
そこには小学生に箱に入っていたフィギュアを取って上げたらしい、熊狼さんがいた
それも既に肩に掛けてある透明な袋には、アニメグッズが入ってる
あの、玉藻前ってやつ!
他にもあるけど…女の子キャラしかないから、多分…奥さんのやってるキャラなんだろうなって思う
てか、この人…材料買った後にここ来るの早くない!?
私達より、行動力早い気がする…
「 あ、あの…熊狼さん! 」
「 ん?あ、朝陽くん…また会ったね 」
これは声を掛けなくては!と本能が言った
こっちに振り返った彼は、ニッコリと笑顔を向けてきた
やっぱり、仕事の時と雰囲気が違うから別人?と思ってしまうけど、指をさっきのクレーンゲーム方向に向けて言う
「 映画前にちょっと遊びに来てて。熊狼さんってクレーンゲーム上手い?よかったら、取って欲しいのあって 」
「 上手いって程じゃないけど…種類によるかな。何かな?」
「 こっちこっち 」
買うよりも、自分で挑むよりもきっと早そうだと思い、彼に着いてきて貰えばクレーンゲーム近くで待っていた遼は、此方へと視線を向ける
「 これ、この黒白のハムスターが欲しくて… 」
「 確率機か…。これ、移動させちゃった系でしょ? 」
「 あはは…三回は頑張ったよ 」
やっぱり、変なところにあるよね
分かってると思って、苦笑いを浮かべれば彼はポケットに直接入れてたコインを三枚入れる
「 あ、お金出すよ?りょーちゃんから貰ったし 」
「 なら、取れた時にその金額貰うな。夕凪くんが払うなら遠慮無しに 」
「 別にいいが…。買った方が早くないか? 」
「 金額的に、取った方が安いよ。まぁ…リサイクルならもっと安いけど 」
確かにリサイクルで買えばいいけど、何となくぬいぐるみは新しいのを買いたくなるし、取りたくなる
その家の、幽霊でも付いてたら怖いし…
私、そういうの苦手なんだよね…
ホラー系の映画やアトラクションは絶対に無理だと内心思い、熊狼さんは真正面から見たままクレーンを動かす
「 一回目は位置を戻して…こんなもんかな 」
ぽんとボタンを押して、アームは丸い形のぬいぐるみへと当たり、くるんと背中の向きが横向きへと変われば、取れなかった事に悔しがる様子も無く、ニ回目のコインを入れる
「 朝陽くん。見てて 」
「 うん? 」
「 今、横向きじゃん?右のアームだけゴムが付いてるから、敢えてそれは背中の方に当てるようにして、左の何もついてない方を脇腹の隙間に入れて、若干上側を狙うんだ 」
「 ふん…( ん?どういうこと? )」
頷いたけど、全く意味分からなくて見ていれば彼が言った通りに、アームの左側は脇腹の隙間に入り、持ち上げると同時に腕の隙間へと刺さった
なんで!?と驚けば、浮いたぬいぐるみはそのままポケットへと吸い込まれるように落ちていく
「 取れたよ、どうぞ 」
「 凄い…!!ありがとう!!!ウタのお友達増えた 」
下から取り出してから差し出してくれた熊狼さんに、喜んで両手で受け取れば彼は小さく微笑み、視線を遼へと向ける
「 そんな分かりやすく妬かなくても… 」
「 別に妬いてない 」
「 どうだろうな? 」
「 熊狼さん、次ね、このシリーズの別のが、板みたいなの動かすのあって、あれもお願いしたい 」
「 うん、いいよ 」
「 やった! 」
持つべき先輩はクレーンゲームが上手い人!なんて思うぐらい、ぬいぐるみを2つ取ってもらってから、使わせてしまった金額は彼に戻した
「 熊狼、これを勝負しろ 」
「 カーレース?いいよ 」
「 あ、私もやる! 」
ヘヘッとウタが増えたことに喜ぶも、カーレースを誘った彼によって、三人で遊ぶことになった
というか、夕凪社長って…
嫉妬すると分かりやすいんだね
凄く、可愛いんだけど
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