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日本大学を首席で卒業して、そのまま会社に勤めて、社長から厚い信頼を受けて
私がアイスココアが好きだと知ってから、
時々奢ってくれるような、社員達にも優しくて、相談しやすくて頼りになる、お兄さん的な秘書さんが…

ホラーちっくなV系着て、髪の毛の所々がオレンジ色で、顔に蜘蛛の巣みたいな模様を描いてる、ハロウィン仕様の格好で出歩いてる…
なんて、誰が分かるか!!

こんな人、店や街で見掛けても゙ あの秘書 ゙とは思わないからね!

「 やぁ、夕凪くんに朝陽くんしゃないか。こんな場所で会うなんて奇遇だね 」

「 よう、相変わらずド派手な格好だな? 」

「 こんにちは…( タメ口なのが新鮮!! )」

凄い堅い敬語しか知らないから、タメ口で爽やかに話し掛けて来るのが、別人レベルに誰ですかって思うぐらい、新鮮なんだけど!
声は、熊狼さんだけど!

前髪上げて、其々にカボチャ、ユウレイ、コウモリのヘアピン付けて可愛いけど…
顔立ちが凄くいいから、格好良く思える!
てか、赤色のカラーコンタクトがよくお似合いですね!

「 そうかな?ハロウィン仕様さ。今日はハロウィンだからな 」

「 嗚呼、そんな時期か… 」

「 そう!今日は姫ちゃんとハロウィンパーティーするし、紫芋のシチューが食べたいって言ったから、作ろうと思って 」

「( 紫芋のシチューって…紫色にならない? )」

一瞬、想像してみたけど…
エゲツい色のシチューではないかな?と思う
そりゃ、ハロウィンの料理って相当エグいのはあるけど…
この姿の、熊狼さんが作るって考えると本格的なんだろうね

「 いいんじゃないか。偶に夫婦揃ってゆっくり出来るなら 」

「 ゆっくりは出来ないかな。夜のラジオあるし、帰ってくるのは二十三時過ぎみたい。でもいいんだ、パーティー出来るだけ嬉しいからさ 」

「 え…熊狼さんって、結婚してたんですか… 」

ずっと仕事で一緒に居るのに、その話を聞いてなかったと思い驚けば、彼は視線を此方へと向け、片手を自らの頬に当て照れたように笑った

「 してるよ。ニ年前に、まぁ…婚姻届けを提出しただけで、式はしてないんだけどなー。それでも幸せ過ぎて、毎日楽しいよ 」

「 おぉ、それはおめでとうございます… 」

なんか、仕事じゃ無口だから
人生楽しくないのかな?って思ってたけど、全然そんな様子じゃないから、安心した

「 ありがとう。と言うか、お二人さんもやっと恋人同士になったんだな? 」

「 ん?嗚呼…付き合う事になった 」

「 へぇ、おめでとう!夕凪くんは、朝陽くんが好きだったもんなぁ~。俺は安心したよ 」

そうだ、手を繋いだままだった!と思い恥ずかしくなるも、熊狼さんの言葉に視線を遼に向ければ、少しだけ目線を外された

ちょっとは照れるみたい

「 嗚呼… 」

「 へぇ、りょーちゃんって…前々から私の事が好きだったんだ? 」

「 結構前からだよなっ。朝陽くんの為に、この体型を維持してるぐらいには 」

「 え? 」

「 熊狼…黙れ 」

「 フフッ、そんな二人にはハッピーハロウィンだから、俺からプレゼントをしよう 」

結構前、それも体型を維持してるのは私の為って事に驚くけど、何やら肩掛けの鞄から探り始めた熊狼さんは、黒いドクロマークがついた財布を開き、中から四枚紙を出して、私へと差し出してきた

「 これは…? 」

「 本当は姫ちゃんと予定を組んでたけど、彼女は休め無かったから、必要なくなってさ。使って?映画のチケットと、遊園地のチケット 」

「 え…いいの? 」

貰ったのは、映画のペアチケットと遊園地のペアチケット、特に遊園地は最近出来たばかりの人気の場所らしく、友達でも誘って行きたいと思ってたところだ

「 いいよ。映画も遊園地も、姫ちゃんがいないと意味ないし、俺は姫ちゃんと映画を一緒に観れなきゃ、観ないって決めてるから 」

「 へぇ…ありがとうございます 」

「 映画は三時間後ね?遊園地は、半年間は有効だから、いつでもどうぞ 」

「 うん…、りょーちゃん…一緒に行こ? 」

私だけが決めてもどうしようもないから、彼に問えば、小さく頷き目元は薄っすらと笑みを浮かべた

「 嗚呼、そうだな。ありがとうな、熊狼 」

「 いいって。あ、ハロウィンの合言葉と言えば? 」

「「 トリックオアトリート? 」」

「 正解、じゃ…こっちもどうぞ 」

まるで、田舎のお婆ちゃんみたいな感じで
彼は鞄の中から、ハロウィン柄のラッピングが施された、クッキーの詰め合わせを私達に一つずつくれた

「 声を掛けてきた子供用に持ってたから、あげる。手作りだから、早めに食べてな 」

「 …凄い、ありがとう 」

遼もそうだけど、熊狼さんも手作りクッキーとか料理作れるとか、ウチの会社の上司って実は女子力高くないか
それも、かなり綺麗な本格的なハロウィン柄のアイシングクッキーだ

「 声を掛けられるのか… 」

「 そうだよー?今日は、ハロウィンの衣装イベントもあって、子供達はそんな感じの人に声を掛けたらお菓子を貰えるって知ってる。俺は一般部門の参加、これでも衣装替えしたから、優勝したイベント衣装じゃないけどな 」

「 ……凄いな 」

「 うん、すごいね 」

語彙力無くなるぐらい、ハロウィンに本格的な人が居て、私達は驚いたよ
さらっと一般部門で優勝したってなに?
どんな服装で参加したのか、すごく気になるんだけど…聞くのをやめとくよ

「 だから、そのイベントが終わったから残り。そういう事で、お疲れさまー。お二人とも、お幸せにな 」

「「 お疲れさま… 」」

笑顔を向けた彼は、嵐のように去っていく
何気無く二人揃って振り返れば、ちびっこに声を掛けられて、お菓子をせびられていた彼は、鞄の中から別のお菓子の詰め合わせを渡していた

四次元ポケットなのだろうか…

「 熊狼さん…仕事の時より、生き生きしてるんだね… 」

「 そうだろう。あれが彼奴の素だ 」

何気無く、アイスココアとかくれる理由がわかる気がする

あの人、絶対に年下が好きだ

そして…貢ぐ金額を死にしないタイプ

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