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風呂から上がり、なんかキチンと畳まれたインナーとシャツがあった為にそれを着れば、洗濯機にゴンゴン回ってる自分の下着と、彼のボクサーパンツが回ってるから、見てみぬフリをする

「( てか…下履いて無いの…気になる… )」

ノーブラなのはまだ許せるけど、ノーパンなのはちょっと抵抗ある
そりゃ、社長は身長あるし、肩幅もあるから二十五cm差はありそうな身長差によってお尻は隠れるぐらいは裾があるけども…

「 うぅ…… 」

やっぱりスースーするのが気になると思い、使い捨て歯ブラシとチューブを使用し、歯磨きを終え

ドライヤーを勝手に借りて、
長いミルクティーグレージュ色の髪を乾かしては、首筋にあるキスマークに目が行く

相当数が有り、覚えてないのが逆に申し訳無く思えてきた

「( 思い出せぇ…思い出すんだぁ… )」

散々、クルミの脳ミソだと言われた頭で懸命に思い出そうとするが、
なんか…時間が経つにつれてどんどん記憶が薄くなってる気がするんだけど、ヤバくない?

「 その内、思い出す!うん! 」

もう考えるのを止めた方がいいと思い、ドライヤーを片付けては、自分のスマホと鞄を探す
寝室に有るように見えなかったから他の部屋だろうか?って思い、廊下に出ればフローリングは綺麗だし、シンプルに纏められてる家だと思う

無駄な物が一切無くて、寧ろモデルハウスより無いんじゃない?って位に、物を置いてない

元々、オフィス机の周りや上も最低限の物しか出してないぐらい片付いてるから、きっちりした性格なんだろうな

「 ……あ 」

リビングに行けば社長の姿を見つけた

カウンターキッチンにはバーみたいになって
テーブルに様々な酒が並んで、グラスだけ入った食器棚もある

そして本人は、白いVネックのシャツに黒のセットアップの上着を羽織って、似たような素材のズボンを履いて、ちゃんと服を着てるじゃないか…
いつも上げてる髪も下がってるから、雰囲気が違うように見えるけども!

「 ねぇ……下…ないんですけど… 」

「 洗ってるからな 」

なんか、さっき聞いたような台詞にムスッとすれば彼は指先を舐め、何やらフライパンを動かし皿へと盛り付けていく

そういえばクリーム系の良い匂いがすると思う

「 そろそろ昼になるし、腹減ったから作った。御前の分もある 」

「 えっ、ありがとうござぃます… 」

目線を向けた先にある、高価そうな壁掛け時計を見れば、昼と言っても十一時前
此れで昼御飯と言われても悩むけれど、朝と昼が込みになってるのなら、納得出来る

というか、私は何時間寝てるんだ?って位に寝てたと思うから、
その間…彼が何処で寝てたのかも疑問だよ

いや…考えない方が身の為かも知れない

なんかポケーと見てる間に白いテーブルに中央が窪んだ洒落た紺色の平皿に入ったカルボナーラの上には、生卵が乗っている
普通に美味しそうだと思い、席へと座れば氷の入った水やフォークが置かれる

「 ほら、食え 」

「 はい…いただきます… 」

なんか、家庭的?と思うぐらいの手際の良さに困惑しつつ、そっと手を合わせてはフォークを掴み、端の辺りから数本抜き取って、空いたスペースで丸めてから口へと含む

「 ん、美味しいです… 」

生クリーム、黒胡椒、卵のシンプルな味付けだけど、ベーコン特有の豚の甘みが出て美味しい
そして何より、この生パスタみたいなのは反則だと思う

「 そうか 」

小さく呟いては、同じ様に食べてる社長を見上げれば、普段と違うような雰囲気がある
私服っぽいセットアップのせいか、それとも垂れ下がる髪型のせいかは知らないけど、
鼻に付くほどの前髪から覗く、長めの睫毛や薄っすらと色の付く唇、日本人離れした整った顔立ちを見て、黙っていればイケメンなんだよね…

喋ると只の鬼って知ってるから、パスタをどんどん口へと運んでいく

「 んふっ、おいひー 」

こってりとしし過ぎず、後味がくどくないカルボナーラはついついフォークが進む

「 これに白ワインあったら最高ですね 」

「 御前…盛大に吐いてたの忘れたのか…。一時、酒は控えることだ 」

「 大丈夫ですよ?もう、落ち着いてるので 」

そうじゃない、みたいな顔を向けられたが軽く傾げて一口残した皿を向ける

「 おかわりください 」

「 無いぞ、二束しか作ってないからな 」

「 そうなんですか……残念 」

仕方無く残してたパスタも綺麗に食べ終えては、両手を合わせる

「 じゃ、洗いますよ。作ってくれたので 」

「 ……食器洗い機に入れりゃいいから、シンクに置いててくれ 」

「 ……はい 」

どうやら私は何もすることがないようで、シルクに立ち、皿を軽く水で流してから、嵌め込みタイプの食器洗い機へとセットして、飲み終えたコップも置く

「 そういえば…私のカバン見てませんか? 」

「 そこに置いてある 」

「 おー、ありがとございます! 」

カバンは大きなTVがある側のソファに置かれていた為に、スマホを取りに行く

そして、財布を確認すれば見覚えのない居酒屋のレシートとすっからかんの財布に肩を落とす

「 私…相当、呑んでたようです 」

「 今更か 」

少し、外食を控えようって思った

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