姉の身代わりになった引きこもりは身勝手な社長の妻になる

獅月 クロ

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エピローグ

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初めての子育てには、予想以上に大変だった

退院して家に来た頃は夜泣きをしても可愛いな~なんて二人で笑ってたのだけど、それが一ヶ月ぐらい経って、声も大きくなり深夜になる度に泣かれれば丸一日面倒見てる私は、起き上がるのに苦戦するし
仕事で疲れて、尚更寝不足の隆一も泣き声に唸るときはある

一時間置きのミルクやらオツム替えなんて、
正直、舐めてた……

『 いちれん…… 』

「 いい……俺がみる…… 」

『 ん、ありがとう………… 』

今夜も深夜二時頃に泣き始めた声
心配で起きようとすれば、私の頭に触れて寝とけと言ってくれる隆一に任せることにした

寝室に置かれているロータイプのベビーベッドに近付く彼は、少し足取りがフラついて欠伸をしては一蓮を見ては、先にオムツを確認する

「 ふぁ~……ミルクの方か…… 」

大あくびをし一蓮を抱くのは慣れた様子で、腕へと抱きリビングへと行く
相変わらず泣いてる声が聞こえ遠く離れてても、気になるもので、目を擦りベッドから起きて同じく見に行く

哺乳瓶に入れた粉ミルクにポットのお湯と冷蔵庫に入ったペットボトルの水を入れ、蓋を締めて振るう彼は腕に抱きあやすようにしていた
大丈夫そうかな?と入り口でそっと見ていれば、哺乳瓶の先端を手首に当て、温度を確認してから一蓮の口へと含ませる

「 ん、飲め……嫌か?んー……嫌なのか……あぁ、泣くな……ママが寝れなくなる…… 」

正直、市販の哺乳類と乳首って全然、形も硬さも違うと思う
私達が買ってるのが悪いのか分からないけど、夜泣きしてるときはよく嫌がる
仕方なく、入り口から入り近付けば隆一は私を見て苦笑いを漏らす

「 すまん…… 」

『 いいよ…んー……一蓮、おいで…… 』

「 なんで、御前が抱くとすぐ泣き止むんだ? 」

受け取って優しく抱けば、泣き止んできた一蓮にソファーに座り寝間着のファスナーを下げて胸を出して乳首を吸わせれば、泣き止み飲んでいく

『 ……ママだからね、パパの腕は硬いってさ 』

「 はぁー…昼間見ててくれるから、夜は任せて欲しいんだが…… 」

横に座り溜め息を吐く隆一に、軽く笑みを浮かべ手を伸ばし頬へと触れれば、彼は此方を向き片目を閉じ擦り寄せてくる

『 大丈夫、働いてない分。平気……隆ちゃんはお仕事と家事を頑張ってるんだから……いいよ? 』

「 俺は、育児もしたい…… 」

肩へと頬を当て凭れてきた彼の頭を軽く撫でてから、満足した一蓮を持ち上げ背中をトントンと優しく叩けばゲップした声に安堵する

前にイクメンだね~なんて言ったら「自分の息子を育ててイクメンって意味わからん」とサラッと言われてからは、彼を褒めることが無くなった

当たり前のように世話をしようとしてくれる夫は、疲れていても私の心配をしてくれるなんて……

そんな彼のために出来ることは、早々に休むこと

『 よし、部屋に戻ろっか 』

「 嗚呼…… 」

一緒に立ち上がって、寝室へと行きベビーベッドに寝かせれば隆一はベッドに座る
いつもの場所に横向きになれば、彼の片手は服の中へと入る

『 っ……なに? 』

「 一蓮……ばかり狡いなと……少しだけ…許して欲しい… 」

『 甘えん坊だよね……おっぱい、吸う? 』

「 嗚呼、舐めたい…… 」

半分寝惚けてると思うけど、相変わらず触ってくる彼の好意が嬉しいのは確か
脱ぎやすい寝間着をずらし授乳ブラは少し下げればいいだけ、腰に触れていた手を胸元へとやり、優しくマッサージするように揉む感覚に息は詰まる

『 はぁ…… 』

たまに痛くなる胸は、隆一に揉まれることで柔らかくなり痛みも減るのを知ってる
彼にも揉んで欲しい時は伝えてるが、こうやって求められると恥ずかしくなる

乳首の先を弄り、手についた母乳を舐めれば、彼の顔は寄って胸元に口付けを落とせば、右側へと舌を当てる

『 っ……ん…… 』

一蓮と違って、快楽を与えるための舐め方は恥ずかしくなり彼の頭に触れ
その舌先が乳首を弄り、チュッと吸えば飲み込む音に頬は熱くなる

「 母乳の、味がする…… 」

『 そりゃ、出るから……ぁ、ん…… 』

「 一蓮は狡いな……俺の胸、なのに… 」

いや、誰の胸でも無いんだけど
寧ろ私の胸!!と思って目線を下げれば、彼は片手で左胸を優しく触り、反対の口は右胸を吸ったり舐めたりを繰り返す

『( これじゃ……どっちが子供か、分かんないや…… )』
 
出産したばかりで余り性欲は無いために、反応していた身体はいつしか冷静になり
それよりも寝ぼけたまま吸ったりして、赤ちゃん返りしたように吸ったり飲むのを見て逆に冷めてくる

『 余り飲むと、お腹壊すよ? 』

胸が張って痛いし、ラクターゼっていう酵素は年齢と共に減ってお腹が下りやすくなると聞いたことがある
そもそも三十五歳にもなる男が乳首吸ってるのさえ、変なんじゃないのか?と冷静になってきた頃には満足したように彼は眠っていた

『 ……明日、知らないから… 』

枕元にある除菌シートを手に取り、乳首や胸元を拭いてからゴミ箱へと捨てる

眠りにつく隆一の頭を撫でて、私も軽く眠る

翌朝に一蓮のオムツ替えをしていれば、朝から青ざめている彼の姿がある

「 俺、昨日……変なもの食ったか?腹が…… 」

『 寝惚けて母乳、飲みまくってたよ。そのままで 』

嗚呼、やっぱり腹が下ったんだと思って態とらしく言えば彼は壁に腕を当て腹に手を置き溜め息を吐く

「 ……忘れてたのは謝るが、もう…俺が欲しがっても、殴ってでも断ってくれ……っ……トイレ行く…… 」

『 うん……ごゆっくり 』 

余りにも腹痛が痛かったのだろ、二度と飲みたがらなかった隆一の話をしたら蓮さんは冷めた目を向けていた

「 通りで、一日中死にそうな顔をしてたんですね 」

『 という事で蓮さん、飲んでみる? 』

「 は? 」

一蓮の残りで良ければと、哺乳瓶を向ければ彼は眉を寄せた
現在、仕事から帰ってきてもトイレに向かった隆一は此処にはいない
チャンスだよ?とばかりにすれば、彼は受け取った

「 ルカさんのは、苦かったんですよね…… 」

『 えっ…… 』

「 いただきます…… 」

ルカちゃんにも飲まされたの?いや、蓮さんそこは断っていいんだよって!驚けば彼は蓋を開けてから口へと含んだ

「 嗚呼…やっぱり普段食べてるものが違うと、こんなにも違うんですか 」

『 えっ、苦いとか? 』

「 いえ……ほんのり甘かったですよ。糖分の塊みたいで 」

糖分の塊って言い方!確かにおやつやら、お肉ばかり食べてるから
増えた体重を減してるダイエットしてるけど、それは酷いと思えば隆一は帰って来た

「 甘いだろ……だから、多分…気にせず飲めたんだと思う 」

「 それでお腹壊してたら馬鹿ですよ。というか…姉妹揃って男に母乳飲ませることをすすめないでください 」

『 いやー、経験よ?一蓮の気持ちってね。私は勿体無いから余ったら飲むけど 』

「「 えっ…… 」」

そんな、嘘だろ?みたいな顔を二人揃って向けなくとも
蓮さんは目の色と髪型以外は案外隆一に似てるから、双子みたいな反応に見える
其々が此方を向けば、私は軽く笑った

『 だって自分の血液から出来てるんだから、戻ろうと一緒かなーって。お腹は下らないし 』

「 ……それもそうか 」

「 納得したら駄目だと思います 」

 栄養なんて殆ど糖分っぽいけど、それでも貧乏だった頃の勿体無い主義が出る!
乳首の休憩やら痛いときに哺乳瓶に入れても、飲まなかったら直ぐに捨てるし
寧ろ直飲みされた方が勿体無くないと思うほど

だからこそ、出来るだけ一蓮に直飲みしてるんだけどね

『 ははっ。ルカちゃんはどうしてるの? 』

「 母乳を与えるのが嫌らしく、毎回母乳瓶にいれますね…。それに…粉ミルクが多くて瑠璃ルリはブクブクに肥えてきて…… 」

瑠璃ルリはルカの赤ちゃんの名前
女の子で、一蓮より一回り大きく生まれてそのまま孟スピードで成長していた
子供が生まれて半月もたたず、彼氏の拓真さんはいなくなって
変わりに蓮さんが子供の面倒を手伝ってるらしいけど、二人って急接近して付き合い始めた?って思うぐらい仲がいい
母乳、飲ませたぐらいだもんね……

『 粉ミルクか…… 』

「 生後五ヶ月までは母乳で、って言われてるだろ?頑張ってみたらどうだ? 」

『 歯の事を聞けば胸が痛くなる…… 』

「 そこは母親次第でしょ。頑張って下さい 」

『 ありがとう…… 』

私は生後五ヶ月までは母乳で頑張りたいけど、生え始めた歯を想像すると乳首が痛くなる
きっと痛いだろうなって思っていれば、一蓮はぱっちりと目を開け此方を向いた

まだ目の発達はハッキリしてないし、私達を見てもモノクロだと思う
それでもじっと見つめる顔は可愛い……というか……

『 目力ある? 』

「 隆一似なので……将来が可哀想に…… 」

「 おい、どう言うことだ。イケメンになりゃいいだろ? 」

『 自分で言うとか…… 』

グレーの目の色をした一蓮は、目線を上げた先にいる隆一と似たような感じだ
なるほど、髪の金髪は私なのに他の部分は隆一なんだね……可愛い

「 瑠璃はルカさんによく似てますよ。金色の髪に青い目をしてますし……まぁ、肥えてますが 」

『 赤ちゃん位はムチムチでいいんだよ 』

「 一蓮は細いよな…… 」
 
細身の赤ちゃんって大丈夫だろうか?って思うけど婦人科医の先生が大丈夫っていうのだから信じてる
粉ミルク嫌いで母乳ばかりが原因なのかな…

誰に似てる、どんな子になる、そんな話をしてるだけで一日過ぎていくもの

夜泣きはお腹空いた事が多くて、そのあとはおしっこしたりしてまた泣くんだけど次第に夜行性になった私は、昼間に眠くて死にかけて
変わりに隆一が見てくれる
彼は眠気に堪え切れず、仕事を休憩するために
一歳二ヶ月まで育児休暇なんて貰ってるからね…

「 一蓮、風呂いれる。任せろ 」

『 大丈夫?頭、支えてね。首座ってないし 』

「 嗚呼、少し休憩しとけ 」

心配で休憩出来ないと思っても、私より扱いが上手いことに謎に思う
流石、器用なだけあるのだろうか……

泣き止ませる事以外は得意な隆一と一緒に世話してたら、幸せだなって実感する

「 ルイ……もう一人、頑張らないか? 』

『 痛いからだやだ…… 」

そういってた筈なのに、二人目は一蓮から二歳半…約三歳離れてやって来るなんてね
当時の私は思わなかったよ

そして、二人目もまた男の子でルカの方は女の子だったらしい

『 んんーー!!ママとして女の子欲しい!! 』

「 頑張るか?三人目、俺はいいぞ? 」

三人目、頑張ってから体力というか望み通りの女の子だった為に子育ての方を優先した

命より大切な二人の息子と、一人の娘
そして愛してる旦那の五人で
ずっと幸せに暮らしていくのでした

めでたし、めでたし


~ 完結 ~
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