姉の身代わりになった引きこもりは身勝手な社長の妻になる

獅月 クロ

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番外編

兄の好きな人~ 蓮 視点 ~

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小さい頃から二歳半年上の兄貴に憧れていた
これといって勉強が出来るわけでもなく、部活だってバスケをそこそこやってる程度

一つの事に夢中になり、囚われることのない兄貴が、唯一手にしたのは幼い子供だった

「 俺、この子と結婚するから。宜しく 」

詰まらないと言っていた、欠伸をしてやり過ごそうとした兄貴が急に決めた相手はとても小さくて、幼い女の子

そして父親は笑っていた、その娘ではなく姉にしろと……
兄貴はあり得ねぇと吐き捨てた女の子

皿をもってひたすらバクバク食べてるような子もまた、立場を理解してるのにフォークを向けた
その姿が気に入ったのだろ、父親はどうしても彼女達を欲しがったらしい

兄貴には言えなかった……後から、俺だけに伝えられた父親からの言葉

「 蓮、ちょっといいかね? 」

「 はい、なんですか 」

パーティーが終わった数日後に
父親から呼ばれて部屋へと行けば、彼は俺に差し出してきた
お見合い写真に見立てた、幼い子供のルイの写真を…

「 隆一にはルカと付き合ってほしいけど、この子は将来、可愛くなるだろ。蓮、ルイはどうかね? 」

「 兄の……選んだ子ですし…… 」

逆らうことの出来ない、絶対的な父親からの言葉
俺より七歳年下のルイは兄が決めた相手
それなのにこの人は、何一つ気にせず目を細めて口角を上げる

「 年齢が近い方がいいと思うんだがねぇ。蓮、君はいい子だろ?お父さんの期待を裏切らないでくれ 」

「 はい、お父さん…… 」

兄貴が羨ましい
相手を選べて、そして父親にまで逆らうことの出来る
先に生まれたってだけで特別扱いに、俺は徐々に自分の存在意義を失っていた

感情を表に出すのが苦手であり、唯一小さい頃から始めた空手にて、相手を倒しても文句を言われ無いことにストレス発散をしていた

「 蓮ってつえぇな……俺は簡単に負ける 」

「 ちゃんと練習すればいいだけです。何故、来ないんですか? 」

「 んー、飽きた。面白くないし 」

そう言ってサボっては来なくて、空手なんて詰まらないとボール遊びをする兄貴に呆れていた
その反面憧れも強くなる
俺にはない自由気ままな言動と身勝手だが、ちゃんと意味のある行動だと知ってる

だからこそ、二十一年後にルイさんに媚薬を盛ることすら気にしなかった

「 子供は好きですか? 」

『 きらいです…… 』

何年ぶりに会うだろうか、亡き父親から妻になれと言われた娘に……
スタイルも良いわけでもなく、顔も飛び抜けて綺麗な訳じゃない
素朴でハーフと言う点をのぞけば沢山いるようにも見える
こんな子のどこがいいのか?感情すら鈍い俺には、良さなんて分からなかった

「( 嗚呼、めんどくさい…… )」

二人が新しい新居に来て、喧嘩した初日
明日も兄貴と仕事をすることになってるから単純に不機嫌にさせたく無かった

仕事に支障が出るからこそ、優しい言葉を投げ掛ける

「 兄は口下手ですが、最初から貴女を選んでました。二人産むのは直ぐでなくていいんです…( 貴女は妊娠するしか道はない…… ) 」

『 ……でも、それが条件って 』

「 えぇ、結婚してるんです。子供は欲しいものでしょ?兄は俺と二人兄弟なので……"二人“が目標なだけですよ( 跡継ぎ以外の兄弟はいらないでしょうけど…… ) 」

冷めた口調をなんとか防ぎながら、心の中では毒を吐く俺を知らず、彼女は涙を溜めて此方を見上げた

「( 女を慰めるのは得意じゃないんだ…。面倒ですね…… )」 

跡継ぎの為に子育てをする
結婚したら愛情より外見を選ぶのを知っている
恋愛などに興味がない俺には、女の扱い知らない
だが、多少はフォローする事もこの歳になれば自然と仕事で身に付く為に言えば、彼女の瞳に希望が見えた

「( 嗚呼……不味い…… )」

背後から感じる、兄貴の不機嫌な声に嫌な感覚になる 
手を出す気は全くないのに、向けられる嫉妬はきっと俺を味方につけようとしたルイに気付いたからだろ

自分を一番に愛してほしい、好きになって欲しいと願う兄貴にとって、俺の存在は邪魔な男になる

「 おい……。弟だろうが、男と仲良くするんじゃねぇ 」

「 おや…嫉妬深いですね 」

「 黙れ、用がないからもう出ていけ 」 

「 はいはい……では、ルイさん。また 」

下手に突っ掛かれば後からしつこい
此所は早々に離れて背を向ければ、去り際に不安そうに見つめる顔は頭に焼き付く

「( 荒く抱かれるでしょうな…… )」

どうでもいいはず、なのにルカが兄貴を選べば助けを求めるその手を取るのは俺の役目だった
直ぐに、胸に感じる気持ち悪さに気付く

「 ルイが、すげー可愛くてな 」

「( 聞きたくないですね…… )」

自分勝手に抱いて、好きだと言ってるのだろ
聞かされる惚気は吐き気がする
冷たくいい放つ俺に、付き合えば?とか結婚するといい、と言う無神経な言動に苛ついた

「 っ……俺も、そう言って、彼女を考えると……興奮するなんて…… 」

自分の家で、兄貴から強制的に送られたルイの写メを見ては使い道のない陰茎に触れ擦っていく

ほぼ毎日、繰り返す自慰を知られるわけにはいかず肩で呼吸し手に付く白濁りを見れば、舌先で指を舐める

不味いと思い、もう一度陰茎に触れていれば、スマホに着信が来る
" 隆一 "という文字を見ては仕方無くテッシュを掴み手と陰茎を拭きながら聞く

「 なんですか? 」

" 蓮!ルイが吐いて…… "

「 吐く?おめでた、でしょう。良かったですね 」

" おめでた……? "

そろそろだと思っていた 
だからこそ他の原因を考える事は無く妊娠発覚したのだと思い、これは直ぐに病院に連れていくだろうとティッシュをゴミ箱へと捨て立ち上がり、スマホを切る

シャワーに浴びようと風呂場へと向かえば、自分の身体に触れ、壁へと凭れる

「 はぁ…。俺の、子だったかも……知れないのか…… 」 

恋愛には興味ない
だが、自分の物だと言われた物が兄貴に奪われ
そして俺の待っていた二十一年も消えていく
その事に興奮を覚えていく

人妻程、興味がある

『 あ、蓮さん来てくれたんだ!お疲れさま。おかえり 』

「 えぇ……ただいまです 」

彼女の良さに気付くのは早かった
よく笑い、そして素直に思った言葉を告げる
どこか兄貴に似てる言動に" いい人 "の仮面を張り付けた俺は、言い訳をしては遊びに来る頻度が増えていた

「 隆一が遅いので、俺が作りますね。食べたいものとかありますか? 」

『 肉じゃがとか、作れる? 』

「 えぇ、では……作りますね 」 

安定期に入った彼女のお腹が気になって仕方無い
俺の子だったかも知れない、そう思うと腹に感じるグツグツと煮えるような感覚に息は荒くなる

『 蓮さん、どっか調子悪い? 』

「 いえ……考え事をしてただけです 」

軽く笑って首を振った俺に、カウンター席へと座ってる彼女は傾げた

可愛いと思うと同時に愛しくて、そして今更俺を選んで欲しいと思う醜い感情を知る
気持ちを抑える事に抵抗は無かった筈なのに抗いたくなる……

そんな事をすれば、俺は嫌われるだろう……

『 いただきます!んー、久々の和食。美味しい 』

「 それは良かった。食べれる範囲でいいので食べてくださいね 」

『 うん! 』

隆一が帰ってくる時間を知っている
まだ二時間は帰ってこない……
もう少し彼女を見ていたいと自分の物を食べるのを止めて、只見ていれば頬に膨らませてハムスターのように含む様子に笑みを浮かべる

『 なんか、そうやって見て笑ってたら隆ちゃんみたい 』

「 そりゃ兄弟ですから…… 」

『 うん、だから蓮さん居てくれると寂しくないよ 』

「 ……そう、ですか 」

兄貴の代わり、今までと何一つ変化のない事なのに、何故か少しだけ胸が締め付けられた 

ルイが見てるのは兄貴なんだと、知ったからこそ俺は" いい人 "の仮面を壊さなくて済んだ
少しでも俺へと好意が向いたと分かったなら、
きっと無理矢理でも抱いて泣かせていた

ルイさんの事を諦めながら、定期的に彼女の母親へと連絡をするために家へと向かっていれば
玄関の前でルカさんと拓真さんを見掛ける

「 お願い!考え直して……! 」

「 子供は嫌いなんだよ!!おろせば良かったじゃねぇか! 」 

「 っ……待って…… 」

「 俺は趣味に金を使いたいんだよ!金が欲しいなら金持ち野郎に媚を売れ!! 」

ルカを振り払い逃げていった拓真に、呆れて追い掛ける気にもならなかった 
其より涙を堪えてる彼女に近付く

「 泣くなら部屋にいきましょ?。話を聞きますよ 」 
 
「 っ……蓮…… 」

弱ってる女が、優しい男に落ちるなんてよくある話
泣きながら俺の身体に抱き付くその姿を見て、一瞬ルイと重ねたのは事実

「 子育て手伝いますし……寂しい思いはさせませんよ? 」

「 ん……ありがとう…… 」

兄貴へと文句を言った彼女は、今はもう俺にしか目を向けない
子供を守るために新しい男を掴まえて、安定な生活を求めるのは防衛本能で、それに従うように
愛情の欠片もない、俺を受け入れる

「 はぁ……痛いですか? 」

「 ぁ、はっ……平気っ…… 」

「 では……動きますね…… 」

「 んぁっ、あっ! 」

目を閉じればルイと良く似た声で喘ぎ、僅かな香りも良く似ていた
俺は彼女に黙ったまま、何度もルイの変わりとして抱いていた

深く繋げるも、出産直後の為に激しく動くことはせずに繋がった肉体の感覚を楽しんでる俺に、ルカは気付くのが早かった

表情も、態度もかえてない筈なのに姉の勘は恐ろしい……

「 ……私ってそんなにルイちゃんに似てる? 」

「 ……似てますよ。声も、髪の質も 」

裸で座る彼女の横で、横たわる俺は隠すことを止めた

「 ルイが……好きになったときには、隆一のものだった…… 」

「 …蓮はやっと感情に花が咲いたんだね 」

代わりに抱いた俺を許して、涙を流した目元に触れ頭を撫でた
優しく何度も触れる感触に眉を寄せ目を閉じ受け入れる

「 我慢したんだね、蓮 」

「 っ…… 」

閉じた心に簡単に入ってくる人だと思った
ルイと似てるから、それもあるが母親になった彼女の優しさに只殺していた感情は破裂していた

「 フラれた私の傍に居てくれてありがとう、ルイちゃんに優しくしてくれ… 」

「 俺は…… 」

「 ん……なに? 」

起き上がり、ベッドへと倒せば彼女は驚いた素振りを見せた後に頬へと触れた

「 貴女を愛してもいいですか…?瑠璃と共に、幸せにしたい…… 」

「 隆一とルイに影響されたね?いいよ……一緒に恋愛を始めよう 」

「 はい…… 」

ルイではなく、ルカに溢れる想いを向けたいと願う俺にそれを承諾し彼女は受け入れた

兄達の前では見せない言動を向け、それでも微笑んでくれる優しさに次第にひかれていた

瑠璃を我が子同然に愛するのは難しいが、ルイの出産に立ち会ってから、母親がどんな思いで産むのか知って……ルカ共に尚更、愛しく思う

「 くっ……ルイが、生きてて、良かったです…… 」 

「 そうだね。ありがとう、蓮 」

平然を保っていたけど、本当は焦って怖かった
死んでしまうかも知れないと思い、無我夢中で助けた後……病室でルイと赤ちゃんが無事なのを見て兄貴より泣いていた

肩を貸してくれるルカさんに泣き付いていれば、彼女は優しく背中に触れる

母親って凄いってことを…
亡き父親にも子供の大切さを知って欲しかったて思うぐらいには感動していた


俺の名を与えた、一蓮は我が子のように可愛くて…ルカにもそれを伝えれば彼女は笑っていた

「 ルイが、二人目を考えたら私も頑張ってもいいよ? 」

「 ……本当、ですか? 」

「 うん。蓮との子供、欲しいからさ 」

「 ありがとう……ルカ 」

兄貴には伝えた、結婚式の日に頑張ってくれと
その代わり俺も頑張るから…なんて言えば
本当に姉妹揃って妊娠をした

そして…彼女は安定期に入った妊娠中に俺と結婚式を挙げる

俺は跡取りじゃ無いために、反対する者は兄貴の時のように居なかった
だからこそ、好きな身内だけで行った小さな結婚式にルイと隆一…それに子供達は参加する

「 ルカ……幸せになろう 」

「 ふふっ、二人よりももっとね 」

恋愛を知らない俺が、初めて好きになった相手は憧れている兄貴の妻だった
そして彼女を諦めた後は、その姉に本当の恋をする

俺達の間に生まれた女の子、姉妹揃って沢山愛情を注いでいた

「 御前って、子供には甘いよな。俺には冷たいのに…… 」 

「 ルカに似て可愛いだけです 」

「 分かる。弟の方がルイにそっくりで可愛くて…… 」

御互いの髪色をした娘と息子、彼等は同じ幼稚園、小学校へと通っていく
仲いいのを見てると従兄弟にした甲斐があると思うほどだ

『 私、三人目頑張るから!ルカちゃんと蓮さんも頑張って!! 』

「 ルイちゃん……私、もう三十五歳過ぎてるんだよ……無理よ 」

「 そうですね。二人で十分ですよ 」

残念そうにするルイに、まだ彼女は若いから次を望めるのだろうが、俺達は二人育てるのが精一杯だった
なんせ、彼等の子供の世話も手伝っていたからだ

十分に子育てをした、なら後はゆっくり生活をしたかった

五十嵐グループから離れた、全く関係ない場所に引っ越して生活をする

兄貴へ会うのは仕事の中か、実家のみ

どちらが幸せな家族なんて、きっと比べられないほどに俺達は幸せに暮らしていた

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