18 / 20
04
しおりを挟む
~ 竜久 視点 ~
永く失っていた宝玉を手にする事ばかりを考え、気付けば彼女は俺の咥内で血に染まっていた。
それでも声を掛けて口に触れる小さな手に、こんなに小さな獣人だったかと改めて思う。
「 俺は…。御前の毛皮は…美しいと、一目見た時から思った 」
あの夜、こんなにも美しい黒豹がこの世にいるんだと言う事を知る日でもあった。
俺を抱く、本能と欲を只ぶつけて来るのも嬉しかったんだ。
だが、帰らなくてはならない…何故、面倒な長になる為に帰る必要が有るのか分からないが、それでもいつの間にか帰らなくてはならないと言うのが呪いのように、義務の様に頭に染み付いていた。
「 黒変固体種が、呪い…?笑わせるな。竜族は、黒化した奴程…力があると言われている。俺も…御前達で言う黒化じゃないか…。そんなの、クソどうでもいい 」
呪いと騒がれた後、古い本を読んでそう呼ばれる理由を知った。
全て自然災害や他の野生の獣からによる感性病とか、理由を探せばいくらでも有るようなものだった。
それを全て、呪いとくくりつけていた本が馬鹿らしく思えた。
「 御前に…名前を教えたのは、名字は赤の他人の老人夫婦のだからだ。だから、俺が…この地で決めた名を教えた…そうだな、少なからず、呼ばれたいと思ったのだろう…… 」
咬んでいた口から離し、掌へと落とせば身を倒した彼女をそっと支え、顔を寄せる。
「 俺は…ファルク…。竜族の、ファルクだ…。レイバン 」
「 ファルク…良い名前だ 」
「 そうか、ありがとうな… 」
そっと手を伸ばす彼女に、口先をそっと向け押し当てれば触れる手の温もりに胸元は痛みを帯びる。
「 俺も…あの日から…、御前のことを考えていた…。お高く気取ったαは嫌いだが…御前は嫌いじゃない… 」
「 それって…どういうことだ? 」
「 婚約…受け入れてやるよ 」
「 へ……? 」
そんなに驚かなくていいだろ、と思いそっと顔を空へと向けた後に溜め息を漏らす。
「 竜ってバレないままってのも、掟だったからな…バレたから帰れない。だから、俺は地上に留まるしか無い。実家に帰りたくても、帰れない理由が出来た 」
「 本当のいいのか……? 」
「 嗚呼……。竜の掟は厳しいんだ 」
宝玉を落とされた時点で、上手く持ち帰れるわけがない。
もし持ち帰ったところで、俺を毛嫌いする連中からイジメに合うだけだろ。
そんなの、平和な地上より面倒くさい。
何故…そんな場所に戻ろうとしたのか不思議だと思う。
「 じゃ…私の…番に、なってくれるのか? 」
「 嗚呼…御前の、番になろう 」
顔を寄せれば彼女は嬉しそうに俺の口先へと口付けを落とした、片手を動かしゆっくりと首後ろへと向け乗せれば、そっと鬣を掴んだ彼女は笑みを浮かべる。
「 宜しくな、ファルク! 」
「 竜久でいい。地上の名で俺は生きる 」
「 竜久! 」
身体を揺らし、地上に戻るべく進み始める。
「 嗚呼…レイ。咬んで悪かった?痛かったろ? 」
「 ……うん、でも、平気 」
「 …看病と、部屋を片付けるのは手伝うから許してくれ 」
「 分かった、それで手を打とう 」
背中で笑ってる彼女にそこまで傷について気にしてる様子はなくて良かったと安堵していれば、空から聞こえてきた声に止まる。
゙ ファルク、御前は地を選ぶのだな ゙
「 父上…いや、長と言うべきか。嗚呼、俺は地上を選ぶ。彼女と生きることを選ぶ。だから、長の件は他の兄貴達にやってくれ 」
゙ 残念だ…御前には期待していたから残念だ。だが…… ゙
「 なんだ…? 」
面倒な長なんてしなくていいじゃないか
もう、十年もこの地上に馴染んできたのなら其れでいいと思えば、長の声は気持ち悪い程に少しだけ高くなった。
゙ 孫は見せに来ることを許そう。じぃじは楽しみにしてるぞ ゙
「 気が早い…… 」
レイすら呆気に取られてる内容だが、孫に弱いのはどの種族も変わらないんだと分かれば、空から何かが降ってきた。
「 なにこれ? 」
゙ 仙桃だ。傷によく効く…食べるといい。息子の伴侶よ ゙
「 ありがとう!頂きます、お義父さん! 」
゙ …悪くない響だ ゙
そう言った長の声や気配は消えた為に俺達もゆっくり屋敷へと戻った。
「 背中で食うなよ!ベタベタするだろ! 」
「 んん、おいしー 」
案の定、風呂に入りたいぐらい背中が気持ち悪いが彼女の傷が治ったなら如何でもよく思えた。
「 宝玉は返す… 」
「 なら、片付けは簡単だな 」
三毛猫や虎達には多少睨まれたが、宝玉を受け取った俺はそれを持ち能力を使った。
僅かに時間を戻し壊れる前に屋敷に戻せば、彼等の機嫌もそこそこ良くはなる。
「 今回の件は、レイ様が後無事なので許しますが…次に暴れたら三枚下ろしにしますから 」
「 分かってるさ。気を付ける 」
「 竜久~!祝言はウェディング、ドレス着たい!白、装束ってのも…! 」
「 白無垢な。何方も俺が決めてやるさ 」
「 やった!! 」
「( やれやれ…これなら子供も早いですかね… )」
ウェディングドレスは俺が自信を持って見立てた。
白無垢は余り代わり映えがしないから、衣装替えの方を何個か決めた。
呼ぶ者達は俺の会社の者たちから始め、何故か竜族の身内が人型の姿をして何食わぬ顔で参加していた。
そして、彼女のアスワド家の者達も最初の結婚式だけ現れた。
俺を見に来たのだろうと察したが、俺達は余り気にしなかった。
三毛猫の茜は今更とばかりに不機嫌だったが、彼女が気にしないのなら何も言うこともなく、楽しい結婚式はティガーがウェディングケーキをぶっ壊すという派手に終わった。
永く失っていた宝玉を手にする事ばかりを考え、気付けば彼女は俺の咥内で血に染まっていた。
それでも声を掛けて口に触れる小さな手に、こんなに小さな獣人だったかと改めて思う。
「 俺は…。御前の毛皮は…美しいと、一目見た時から思った 」
あの夜、こんなにも美しい黒豹がこの世にいるんだと言う事を知る日でもあった。
俺を抱く、本能と欲を只ぶつけて来るのも嬉しかったんだ。
だが、帰らなくてはならない…何故、面倒な長になる為に帰る必要が有るのか分からないが、それでもいつの間にか帰らなくてはならないと言うのが呪いのように、義務の様に頭に染み付いていた。
「 黒変固体種が、呪い…?笑わせるな。竜族は、黒化した奴程…力があると言われている。俺も…御前達で言う黒化じゃないか…。そんなの、クソどうでもいい 」
呪いと騒がれた後、古い本を読んでそう呼ばれる理由を知った。
全て自然災害や他の野生の獣からによる感性病とか、理由を探せばいくらでも有るようなものだった。
それを全て、呪いとくくりつけていた本が馬鹿らしく思えた。
「 御前に…名前を教えたのは、名字は赤の他人の老人夫婦のだからだ。だから、俺が…この地で決めた名を教えた…そうだな、少なからず、呼ばれたいと思ったのだろう…… 」
咬んでいた口から離し、掌へと落とせば身を倒した彼女をそっと支え、顔を寄せる。
「 俺は…ファルク…。竜族の、ファルクだ…。レイバン 」
「 ファルク…良い名前だ 」
「 そうか、ありがとうな… 」
そっと手を伸ばす彼女に、口先をそっと向け押し当てれば触れる手の温もりに胸元は痛みを帯びる。
「 俺も…あの日から…、御前のことを考えていた…。お高く気取ったαは嫌いだが…御前は嫌いじゃない… 」
「 それって…どういうことだ? 」
「 婚約…受け入れてやるよ 」
「 へ……? 」
そんなに驚かなくていいだろ、と思いそっと顔を空へと向けた後に溜め息を漏らす。
「 竜ってバレないままってのも、掟だったからな…バレたから帰れない。だから、俺は地上に留まるしか無い。実家に帰りたくても、帰れない理由が出来た 」
「 本当のいいのか……? 」
「 嗚呼……。竜の掟は厳しいんだ 」
宝玉を落とされた時点で、上手く持ち帰れるわけがない。
もし持ち帰ったところで、俺を毛嫌いする連中からイジメに合うだけだろ。
そんなの、平和な地上より面倒くさい。
何故…そんな場所に戻ろうとしたのか不思議だと思う。
「 じゃ…私の…番に、なってくれるのか? 」
「 嗚呼…御前の、番になろう 」
顔を寄せれば彼女は嬉しそうに俺の口先へと口付けを落とした、片手を動かしゆっくりと首後ろへと向け乗せれば、そっと鬣を掴んだ彼女は笑みを浮かべる。
「 宜しくな、ファルク! 」
「 竜久でいい。地上の名で俺は生きる 」
「 竜久! 」
身体を揺らし、地上に戻るべく進み始める。
「 嗚呼…レイ。咬んで悪かった?痛かったろ? 」
「 ……うん、でも、平気 」
「 …看病と、部屋を片付けるのは手伝うから許してくれ 」
「 分かった、それで手を打とう 」
背中で笑ってる彼女にそこまで傷について気にしてる様子はなくて良かったと安堵していれば、空から聞こえてきた声に止まる。
゙ ファルク、御前は地を選ぶのだな ゙
「 父上…いや、長と言うべきか。嗚呼、俺は地上を選ぶ。彼女と生きることを選ぶ。だから、長の件は他の兄貴達にやってくれ 」
゙ 残念だ…御前には期待していたから残念だ。だが…… ゙
「 なんだ…? 」
面倒な長なんてしなくていいじゃないか
もう、十年もこの地上に馴染んできたのなら其れでいいと思えば、長の声は気持ち悪い程に少しだけ高くなった。
゙ 孫は見せに来ることを許そう。じぃじは楽しみにしてるぞ ゙
「 気が早い…… 」
レイすら呆気に取られてる内容だが、孫に弱いのはどの種族も変わらないんだと分かれば、空から何かが降ってきた。
「 なにこれ? 」
゙ 仙桃だ。傷によく効く…食べるといい。息子の伴侶よ ゙
「 ありがとう!頂きます、お義父さん! 」
゙ …悪くない響だ ゙
そう言った長の声や気配は消えた為に俺達もゆっくり屋敷へと戻った。
「 背中で食うなよ!ベタベタするだろ! 」
「 んん、おいしー 」
案の定、風呂に入りたいぐらい背中が気持ち悪いが彼女の傷が治ったなら如何でもよく思えた。
「 宝玉は返す… 」
「 なら、片付けは簡単だな 」
三毛猫や虎達には多少睨まれたが、宝玉を受け取った俺はそれを持ち能力を使った。
僅かに時間を戻し壊れる前に屋敷に戻せば、彼等の機嫌もそこそこ良くはなる。
「 今回の件は、レイ様が後無事なので許しますが…次に暴れたら三枚下ろしにしますから 」
「 分かってるさ。気を付ける 」
「 竜久~!祝言はウェディング、ドレス着たい!白、装束ってのも…! 」
「 白無垢な。何方も俺が決めてやるさ 」
「 やった!! 」
「( やれやれ…これなら子供も早いですかね… )」
ウェディングドレスは俺が自信を持って見立てた。
白無垢は余り代わり映えがしないから、衣装替えの方を何個か決めた。
呼ぶ者達は俺の会社の者たちから始め、何故か竜族の身内が人型の姿をして何食わぬ顔で参加していた。
そして、彼女のアスワド家の者達も最初の結婚式だけ現れた。
俺を見に来たのだろうと察したが、俺達は余り気にしなかった。
三毛猫の茜は今更とばかりに不機嫌だったが、彼女が気にしないのなら何も言うこともなく、楽しい結婚式はティガーがウェディングケーキをぶっ壊すという派手に終わった。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる