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しおりを挟む引き籠もりだと言いたければ言えばいい。
私は態々、恐怖心を向けられ悪態を浴びる様な嗜好は無い。
ある程度の買い物は街に馴染みやすい茜やティガーが行うし、成人後直接目にしてない父親が、食糧を何処からともなく送って来るのだから不自由もして無い。
どちらかと言えば、自由であり優雅な暮らしをしてるだろう。
「 おや、ベル。何をしてるの? 」
「 コホッ…コホッ。レイ様、少し埃の匂いがしましたので、掃除をしていました 」
「 それは見たら分かるけど…… 」
奥の間へと進んでいれば、押入に入っていた彼女は軽く咳き込み中から出て来た。
頭上には先の尖った耳を持ち、長く細い尻尾を揺らせば左右の目が火傷で潰れている彼女は、顔を擦り毛繕いする動作をしては腰に巻くエプロンを叩く。
スナネコ科のベルナ。渾名をベル。
華奢で小さく愛らしい淡い琥珀色の髪を持ち、色白の肌をしてるが、その容姿を嫉妬して毛嫌いした元主が顔を焼いてから仕事が見つからず、ここに流れ着いた。
目の見えない彼女にとって、私が黒化個体だろうと関係無いと微笑んで傍に居てくれる一人。
屋敷の掃除を主に行い、触れた場所がザラついてた拭き、先程のように埃の匂いを頼りに突拍子も無く、茜すら手付かずの場所を掃除し始める。
まぁ、綺麗になるからいいのだけど…荷物が多い押入が上手く入れなかったようで、その身体には埃が付いている。
仕方なく片手で肩に触れ叩き落とし、ついでに頭についてる蜘蛛の糸も取れば、耳を揺らした後、ほんのりと頬を染めた。
「 あ、ありがとう…ございます…… 」
「 構わない。あー、私も入ってみてもいい? 」
「 それはレイ様の所有物なので…あ、でも、埃被ってて、汚れてますので! 」
ベルは元々Ωだったのだが、元主の命令で避妊をしている。
その為、発情期にはならないのだが私を前にすると赤く頬を色づかせる為に、直ぐに話を逸らす。
別に、雌からの好意にはなれてるが此処の連中はどうも家族以上の好意を持ち合わせてる為に一線を超えないように気をつけてなくてはならない。
正直…何度、ベルは抱けると思った事か。
其れだけ彼女は少しドジだが、可愛らしい。
「 ひゃっ!?っ~~ 」
「 大丈夫? 」
「 いたた……へい、きで…ございます 」
私の後を追いかける様に入って来たベルは箱に躓き、そのまま盛大に前のめりに倒れていた。
平気そうには見えないけど、彼女が大丈夫と言うならそうなんだろうと思い先に進む。
「 けほっ…本当、埃っぽい。何年開けて無かったけ…… 」
「 私が来る前からの気が致します… 」
「 そうかもな、まぁ…殆どの押入は家の者達がいなくなってからは開けてないけど 」
身の回りの事をする茜だけでは、全ての部屋を掃除し、押入を綺麗にする時間は無い。
今頃、私が断った恋文に御断りの手紙を書いてるだろうし、それが終われば夕食の準備でもするだろう。
ティガーは部屋の掃除に関して期待して無いから論外だとして、ベルはこの通りやる事がゆっくり。
この押入も今日中には終わらないと思っている。
まぁ、押入の掃除なんてやらなくてもいいんだが。
「 …私、此処に来てから不幸な事は何もありません。寧ろいつも…幸せです。目の不自由な私にレイ様も、茜様達も良くしてくれるので…前の主様の方がよっぽど… 」
「 ベルは…。今はここに居るんだろ?なら、昔な事を考える必要はない。其れに今が幸せだと言ってくれるなら、それでいい 」
他の連中も、呪いの様な不幸な事は起こってないと言っているが、それはそう捉えないだけの気はする。
いや、もしかしたら…昔、庭に落ちてきたものを拾っだアレ゙によってその後の呪いが消えたのかもしれないと、思い出しては探り始める。
「 はいっ、私。とても幸せです! 」
「 そうか、良かったな。んーと、確かこの辺りに…… 」
「 何かお探しですか? 」
「 ちょっとな、思い出して 」
親や他の連中に取られないよう、この押入に隠していたはずだと、箱を避けたり、物を跨いでからゴソゴソと探る。
少し離れた場所から心配そうに眺めているベルをよそに探せば、大きな箱の裏にそれを見つけた。
「 大切な品ですか? 」
「 少し……あった、これこれ 」
「 見つかったのですね!それは、一体なんですか? 」
埃を被った手の平サイズの箱を持ち、探って寄せたりした他の箱をそのままにし、ベルの前へと戻る。
箱の表面についた埃を払い落とし、何気無く彼女のエプロンを持ち箱を拭き、埃の無くなった蓋へと触れれば、錠の鍵が付いてる事に気付く。
「 嗚呼…開けたら見せる。鍵が無いと開けれないみたいだ。鍵…どこにやったけ? 」
「 では、タイムカプセルのようなそれを開けれたら見せて下さいね!私はこの押入を片付けますので 」
「 あ、うん。約束する。それじゃここを頼むな 」
「 はい、お任せください! 」
鍵は一緒の場所には保管してはいなかった。
どちらかと言えば自分の部屋とかに置いていた記憶がある為に、ベルに開けたら見せる事を約束して、その場を後にした。
自分の部屋へと戻り、テーブルにそれを置いては戸棚やら、タンスを開けていく。
「 もう、十四年前だからな……。どこに隠したっけ…… 」
これの中身を拾ったのは十四年前
当時十歳の頃だった為に、茜に聞いて
誰にも見せることなく保存したらいいと言われ、鵜呑みにしてから押入の奥深くへと隠していた。
「 あれ、箱は私が隠して…鍵は茜だったような…… 」
ふっと、これがあることを知ってる茜とそう言った約束をした記憶が蘇る。
゙ では、箱はレイ様が。鍵は私が隠しましょう。お互いに隠した場所は内緒ですよ ゙
口元に指を当て、二人で内緒の約束をした事を思い出しては、探っていたタンスの引き出しを閉じ、テーブルに置いた箱を持ち部屋を出る。
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