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別ルート

十四話 お気に入りとはなに

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「 まぁ、嘘だな 」

『 ……は? 』

「 というか。正式なやり方を知らない 」

何、やり方を知らないで本来の姿で求めて欲しいなんて言ったのか? 

どれだけ、行為が好きなんだ……

只の変態じゃねぇか、とツッコミを心の中で入れれば、彼は一つ息を吐き姿を人へと変えた

改めて見る変化の仕方は、息を飲む暇もなく早く 
身体に黒い煙のような物を帯びてから、徐々に変わること無く一瞬と言う言葉が合うほど、瞬きも出来なかった

やっぱり人の姿の方が見慣れてるが、外見は猫のような要素は無いんだよな……
いや、猫は気紛れだと言うからコイツが構ってくるのもきっと気紛れだろ

面白い玩具を見つけたような、猫みたいだと思う

「 お気に入りは、女王蜂が言えばそれでいいと思っていたが、サタン様にでも聞いてみるか 」

『 えっ、やだよ……サタンに御気に入りにする方法を聞くなんて 』

「 何故だ?手っ取り早いだろ 」

もう一度言うが、やだよ……
だって、サタンとは言えど認めたくはないが、元は人間界の父親であって、そんな相手に雄を紹介して『 御気に入りにしたい 』とか聞いてみたらニヤニヤと笑われるに違いない
あの人が、一番最初にネイビーとヤれなんて言ってた張本人だ

そんな、手の上で転がされてる感じになるのだけは避けたい

『 だって……相手は俺の父親だし 』

「 俺の父親でもある 」 

『 止めよう……禁断のなんちゃらに思えて仕方無い 』

年齢はともあれ、俺の方がサタンの初の子供だしお姉ちゃん?お兄ちゃんだと思うんだが、そんなのはどうでもいい

サタンが父親ってことをいい合うと、禁断の兄弟愛みたいな雰囲気になるから、俺は嫌だ
禁断なんていい始めたら、ハクもブラオンもサタンの子供なんだからそうだけど!

やっぱりなんか、元人間だった頃の知識が邪魔をして首を振ってしまう
ネイビーは気にならないと言うか、禁断のなんちゃら、の意味が理解出来てないらしく頭に疑問符を浮かべてる雰囲気がある

「 ならハクに聞くか?彼奴ならよく知ってるだろ 」

『 もっと嫌だわ!ハクにも子がいるし…… 』
 
「 それがどうした。雄なのだから子は孕むだろ 」

『 あ……そっか……いや…… 』

俺は少し考えを間違っていたかも知れない
御気に入りだからと“恋人“って言う意味じゃないんだ
あくまでも、御気に入りの“雄“ってだけの認識であり彼等には何人居ようが、孕んでいても気にはならないのか

分かってたけど、やっぱり魔物って寂しいほどに薄情だな

『 止めよう……俺は御気に入りをつくらない。固定は無くていいよ 』

「 それは他の雄にも孕ませるって事か? 」

『 違う。いや……御気に入りをつくらないとそう言うことなのか…… 』

ハクが言っていた
御気に入りが五人いれば、其々だけにローテーションに産ませる事が出来る 
だが、その分…雄の負担が大きく短命になりやすいと、
産むほどに命を削る雄に、固定が出来れば『繁殖の為に死ね』って言ってるようなもの
 
彼等にとって使命だからそれでも良いのだろうが、女王蜂は長生きをすると聞いた 
……少しでも知り合った者達と共に居たいと思う俺は短命にさせる勇気など無い

だが、逆に固定の御気に入りをつくらないって事は他の雄達と行為をする事になる
産ませることが女王蜂の使命……それを破棄する事は彼等から反感を買い、殺されはのは想像つく

それでもいいんじゃないか?
こんな理不尽な世界で生きて行くより死ねるなら……

やばいな、病んでるから消えることしか
考えられないと…軽く笑っては視線を戻す

『 ネイビーが最初に言ってただろ、行為を気に入れば繁殖回数が増えるって。そうなるまで色々手を出してみるから、考える時間をくれ 』
 
「 ……言ったが、気に入らない 」

『 なんでだよ、そう求めていたんだろ? 』

ヤりまくって、孕ませて、子が増えれば開き直れるかも知れない
そう思ったのに、最初に告げた本人が気に入らないの一言で拒否するなんて矛盾してるだろ

「 求めていたが、今は違う。他の奴に産ませるぐらいなら、俺に産ませろ 」
 
『 今、妊娠中だろ 』

「 コイツが終わったら直ぐに次のを誘う 」

『 子供には興味なかったんじゃ無いのかよ 』

本当、矛盾してるし……何を言いたいのか分からない
子供には興味ないと言ったのに、他に産ませるのも嫌がって、自分が産むと言って

そして、また振り出しに戻る言葉を告げる

「 子には興味ないが、御前が他の奴を交尾に誘うのも気に入らない 」

『 増やせと言うわりには、誰ともヤるな。意味分からないんだが 』

「 俺にも分からない 」

『 は? 』

自分って言ってて理解してないのか?
そんなの、俺が分かるかも無いだろ……

何いってんだ、コイツは……

余りにも素直に分からないと言った言葉に呆れと驚きが重なる声を漏らせば、ネイビーは俺を見た後に目線を反らし片手で腹下へと触れた
其処には子がいることが分かるのだろ、軽く撫でながら彼は言葉を繋げる

「 ……クロエとサタンのように、“御前と俺の子“が巣に増えればいいと思うんだ。サタンが産んだ五十人程は産めないと思うが……それでも、出来るだけ産める努力をするから……他の奴と交尾をして欲しくはない…… 」

『 っ…… 』

この人は、不器用で口下手でストレートに言ってるわりには、理解が難しいような遠回しな事を言う

けれど、やっと何を言いたいのか分かった瞬間、
腹の底がきゅっと締め付けられるような感覚に息は詰まる
 
他の奴との子が巣に増えることを嫌がり、自分だけの子を増やしたいと願う奴が目の前にいて、否定できる訳がない

けれど、自覚してるぐらい性格の悪い俺は敢えて試すような言葉を言う

『 もし、俺が欲求不満で他の奴を誘ったらどうする? 』

「 妊娠してる時は仕方無いが、そいつとは貯精嚢にいれるかして……一度で終えてくれ 」

浮気をすることを前提に、彼は仕方無いの一言で許可をしてから俺へと視線を向ける
真っ直ぐな紺色の瞳は、初めて見た時の表情より柔らかく思える

「 俺とは一匹、一匹…孕ませて欲しい 」 

貯精嚢を使いたくないと言う意味は理解できた

『 ……どんな、告白なんだ。そんな告白、聞いたことがない 』

人間界で孕ませてほしい、なんて告白をする奴は女でも滅多にいないだろ
結婚してる夫婦が夜の営みの時に言うなら分かるが、この場合は色々と可笑しな点がある

どんな反応をして、言葉を向ければいいか分からずに顔を片手で隠し笑おうと不器用に口角を上げれば、ネイビーはそっと近付きその両手を広げた

『 !! 』
 
抱き締められたと気付いたときには、彼の顔は髪に触れ、角へと口付けを落とす

「 ……“恋愛“とは、俺には分からない。だが、御前に向ける好意は誰よりも強い自信がある。教えてくれ“恋愛“を…… 」

恋愛とは……そう聞かれても分からない
嫉妬して、一方的にフッて死んで
愛や、好意など語る資格もないのに、
教えてくれと言うのか……

『 俺は…… 』

そんな優しい言葉に身を委ねても良いのだろうか
アランの事が気にかかるのに、恋愛をもう一度経験しても……
 
「 ルイ、御前と俺の子を増やそう…… 」

甘い蜜に誘われるように、目線が重なればそのととのった頬に触れ顔を近付けていた
鼻先が掠り、瞼はうっすらと閉じていけば彼は密かに口角を上げた

「 そりゃ、御気に入りになれば一番最初に喰えるらしいから、必死だよねぇ~ 」

『 !! 』 

「 チッ……誰だ! 」 

聞き覚えの有ることに、目を見開き無意識に身体を離して、声のする方に視線を向ければ
不機嫌そうにネイビーの舌打ちと共に、剣の動く金属音と共に酷い血の匂いに驚く

「 っ……おにげ、ください…… 」 

月光の光で影になり男の姿は見えないが、羽を切られた衛兵は掴まれていた手を男が離した瞬間、ずるっと身体は滑り屋根に血を残し、地面へと落下し骨の砕ける音が響く

血生臭い光景に吐き気と共に鳥肌が立つ

「 やぁ、女王蜂の“血肉“しか興味のない雄……俺に女王蜂をちょうだいよ 」

「 ……他国の雄か。ルイ、逃げ……ルイ? 」

嘘だろ……なんで……

口調も、声も、聞き覚えがあった……

忘れるはずもない声のトーンと共に月明かりによって見えた金色の髪は風と共に僅かに揺れ、その大きな黒い鷲のような羽を広げ男は立ち上がり、血の付いた剣を振り鞘へと戻す

馬のような長い尻尾は靡き、軍人のような服装に身を包む

此方を振り返るネイビーの声など聞く耳も持てなかった

「 やっぱり、覚えててくれた?最愛のダーリンだもんね 」

『 ……なんで、此所に……? 』

「 うーん、それの話は後でいい?まずは、その雄を殺してから君を奪うからちょっと待っててね 」

「 何の話だ!この女王蜂(レーヌアベイユ)は我がサタン城の雌だ。渡すわけないだろ、衛兵!! 」

ネイビーが衛兵と声を張った瞬間に、羽を持つ衛兵達が飛んでくるのが分かる

これが軍事責任者であり、彼等を束ねる働き蜂が敵を見付けた時に放つ戦闘開始の声

まるでサイレンのように頭に響くような声は、人の声には聞こえないほど高いモスキート音のよう

けれど、目の前の男は気にもせずにその口角を上げた

「 女王蜂には興味ないよ、俺があるのは“瑠依“だけ 」 

もし神様の悪戯なら、これはどういう事なんだ

だって、俺は死んだはずでもう二度と会えないと思ってたのに……

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