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番外編 2

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番外編 
~ エカード 視点 ~


死後、永気に渡る日付の末
″ 大天使 エカード ″として天界で生きて来た
神の言葉を聞き、自分より若く幼い天使達に人間界の事、そして悪魔の事を教えてきた
 
慕われ、心優しき大天使と呼ばれていたが… 
果たして本当にそうなのか考える事は多々あった

「 あのな…クオレ……此処が何処だがご存知か? 」

「 ん…天界だろ?その位知ってるよ 」

真っ白な天界に似合わない、黒き悪魔は何事も無く俺を見かけては、背後から抱き締めていた

神は触れ合ってる事を見てるだろうが、何も言わずに俺の行いを傍観してるような方

此処に、最悪の悪魔と呼ばれる色欲のアスモデウスがいようとも、騒ぐのは他の天使達だけだろう

寧ろ良く、此処まで気付かれず入って来たと思う

「 何故…またも、来たんだ 」

「 会いたかったから 」

「 天使に見つかったら、殺されるかも知れないんだぞ? 」

「 エカードも天使だよね?だから、大丈夫 」

何が大丈夫なんだ…
自信たっぷりな口調のまま、肩口に顔を埋めてサワサワと尻を撫で回す変態に呆れる

俺が死んだ後、天界で天使になった事を知ってから頻繁に来る事があった
愛を囁く事の出来ない関係だが、
俺も…クオレもまだ、気持ちに区切りは付いては無い

「 クオレ……もう、俺は天使であり、大天使と呼ばれる者なんだ。気持ちに答えてやる事は出来ない 」

何十年経過しようとも、火炙りにされた日を鮮明に覚えている
泣いた此奴が、最後に辺りの者を殺していったことで
俺は…魔王としてのきっかけを作ってしまった

天使の素質がありながら、大切な者を堕落に落としたのは
紛れもないなく、この俺だ

立場上の区切りを付けるように振り返り手を取れば、僅かに目線が上がるクオレを見詰めれば
緑色の瞳は、赤く色が変わる
あぁ…不機嫌にさせてしまったと察した

「 元々、神父と悪魔なんだ……。大天使と魔王でも大した違いはないよね? 」

「 ……クオレ、俺達は子供じゃないんだ。もう…交り合う事は出来ないんだ 」

人間の方がよっぽど良かった
天界に住む大天使としての立場と
魔界に住む魔王とでは、天と地の差がある
クオレの気持ち一つで傍に居ることが出来る、人間界の方がよっぽど幸せだった

別れを告げようとする俺に、クオレは子供っぽくふてくし軽く頬を膨らませて視線を外した

「 嫌だ……俺は、エカードが好きだ 」

「 クオレ…… 」

俺はこの手を振り解く程、嫌いになった訳じゃない
本当は愛しているんだ、側にいてやりたい
叶うなら白い羽を持つ天使なんて辞めて悪魔として過ごしてやりたいのに
神は、罪滅ぼしのように俺を黒くは染めてはくれない

頬に触れる少し成長して大きくなった手、輪郭をなぞり顎を持ち上げられ
整った顔は目の前へと迫る
否定しようと胸元を抑えるけれど、強くは出来ず唇は重なった

溺れてしまうのは簡単だった

子を産みたいと望むほど、愛している悪魔なのだから
神が監視する天界だろうとも、彼の触れる感覚が只嬉しかった

敢えて周りから見えないよう、空間を切り取って魔力を使ったクオレは、俺を木に押し当て、太腿を触り身体を開いた

「 はぁっ、ぁ…っ…… 」

「 ンッ…… 」

大天使でありながら、欲に溺れ
悪魔を受け入れるこの身体は、それでも尚、穢れることが無い
純粋に思う心が、穢れを祓うのか
深々と挿入される陰茎が、胎内を擦る度に熱い息を吐き、噛み付くように口付けは重なり、舌を絡ませ合う

卑劣な音が繋ぎ目から聞こえ、飲み切れぬ唾液を垂らしては、クオレの髪を掴み揺すぶられるまま行為を受け入れる

時より見える黒い羽は、俺を包むように広がってる為に全身で抱かれてる気になる程
心地良い

「 はっ……エカード……愛してる…… 」

「 っ…ぁ、くっ…… 」

その言葉に答えてやる資格は、俺には無い

「 クオレ……もう、天界には来るな……。御前が殺されるのを見たくは無い 」

乱れた服を整え告げれば、
魔力を使って疲れているクオレは欠伸をし、聞く耳を持ってないように見えた

「 なら……エカードが、俺を殺して 」

「 何を言って…いるんだ? 」

大きく口を開け犬歯と共に喉奥まで見える程、欠伸をした彼の言葉に唖然となる

俺が…殺せ?

「 もうすぐ…暇を持て余したサタンが戦争を仕掛けに此処に二万体の悪魔を向かわせる。
その中に最高ランクのメンバーは俺を含めてやって来る。その時に…俺を殺してほしい 」

「 御前は……仲間の情報を教える為に無茶な事をしに来たのか?態々…それを言う為だけに…… 」

「 うん、そう……。最後に抱きたかった 」

別れを言おうとしたのは、俺ではなくクオレの方だった事に気付いた 
コイツはヘラヘラ笑って、子供の様にスキンシップが激しい訳じゃない
意味がある事を知っていたのに、心に余裕が無い俺は気づく事が出来なかった

「 エカード……俺は悪魔であり、サタンの息子だ。天使を殺してこいと命令されたら抗う事が出来ない…だから、頼むね 」

「 お、おい…クオレ……!! 」

最後に僅かに笑ってから、クオレは姿を消した 
残った羽根を見下げ、俺は交り合う事が出来ない敵同士だと言う事を実感した

手を伸ばそうとした時には、いつも背を向けて先に進むクオレがいた
共に並んで歩けていたのは、腹に子を宿して命の大切さを教えてる時だけだった

悪魔は愚かで、儚い存在なんだと思う
慈悲を考える天使とは違う程に、
一度惚れた相手には、一途な愛情を向ける

誰にでも平等に愛することの出来る天使とは違うんだ

「 ほう?サタンの奴…暇潰しに我々と戦う気かぁ。良いだろう…不意を付く作戦だろうが…迎え撃ってやろう。戦争の準備をしろ 」

「「 はっ!! 」」

クオレから貰った情報は、嘘を告げる事も出来ず
自分より上の位に位置する大天使へと伝言を伝えれば
天界もまた、戦争の準備をした

其々に与えられた悪魔殺しの剣を腰に差し、天界に来ただけで魔力が減る悪魔にとって、不利な場所での戦いだろうと、この国に魔界に繋がる魔法陣が現れた

「 悪魔を一匹たりとも、宮殿に踏み込ませるな!! 」

「「 はっ!! 」」

「 天使を皆殺しにしろ!! 」

「「 おぉぉお!!! 」」

何年にも及ぶ戦争が幕を開けた

サタンの気紛れで行われる、お互いに死者を出す必要のない争い

だが、天使は領土に踏み入った悪魔を許す事は無い為に普段は剣を振るう事は無いが、この時だけは剣を持つ

そして悪魔には、数人ほど神殺しの剣を持ってる上級悪魔が存在する為に
大天使だろうとも、それに触れれば消えてしまう

「 クソッ…悪魔風情が!! 」

「 天使ちゃんは争いが苦手だから、弱いな!! 」

戦争を経験した事は、天使になってから二度ほど経験してる
天使の時は隠れていたが、階級が上がるにつれて強制参加となった

殺したくは無い悪魔に剣を向け、仲間が殺られるのを見ては助けに入る

「 っ!?大天使か!!? 」

「 エカード様!? 」

「 怪我をしたなら下がっていろ……そろそろ、神殺しの剣を持つ悪魔が参加するだろう……それまで温存しろ 」

「 はい!! 」

「 グアッ!!? 」

魔王クラスであり、神殺しの剣を持ってるなら天使が百人居ようとも足りない程

大天使が剣を交えても、魔王クラスに勝てるかは分からない
日頃から剣を振るい、殺す事に特化した悪魔と…
殺す事に戸惑いを持つ天使では、力の差は歴然だった
それでも尚、天使は悪魔を葬る事を優先する

若い天使を下がらせ、悪魔を倒せば灰となり消えていく悪魔は笑った

「 もう…おせぇよ………魔王様達は……入ってきてる…… 」

「 なっ……!? 」

「 エカード様……宮殿の方が燃えています 」

「 チッ……普段なら遊ぶだろうに!! 」

宮殿には幼い天使が隠れている
数人の大天使が護ってるとは言えど、芽吹くばかりの蕾を切り落としたがる悪魔は狙いを定める事は多かった

普段なら、遊ぶように最初は下級の雑魚ばかりを来させて
天使の体力を地味に削っていくやり方をするのだが、今回は何を思ったのか
中級悪魔が来る頃には、魔王クラスも参加してるなんて……

震え上がる天使に隠れるよう指示をしてから、羽を広げ
火の上がる宮殿の方に向った

「 なっ……!? 」

宮殿には既に倒れている数多くの天使が、赤き血を流し、真っ白な宮殿は血の海へと変わっていた

「 おい、しっかりしろ!! 」

「 ゴホッ…エ、カード…… 」

「 何があったんだ!? 」

傷口を見れば酷く深く刺されたり切られてるが、神殺しの剣で殺られた訳じゃない
治る見込みがある事に、一体誰がやったのかと息のある、大天使を抱いて問えば、彼は血の付いた手を上げ服を掴む

「 魔王…クラスが、二体……一体は、剣を持っていますが…ゴホッ、ゴホッ……その者は…止めを刺すだけ……もう一体…が…… 」

「 もう一体がやったんだな。分かった…休んでいてくれ 」

二人で行動してるのだと分かれば、気をつけるべきは剣を持ってる方か
普通の剣で、此処まで大天使に深手を負わせた方も気になるがな…

まさかな……

嫌な予感に大天使を寝かせて立てば、怪我を負った三体の大天使はやって来た

「 エカード!宮殿の中に魔王クラスが居るらしい!! 」

「 嗚呼…。二体程…片方は剣を持ってるから気をつけてくれ 」

「 剣持ちか……厄介だな。俺達で行けるか? 」

「 行かなきゃならない……。幼き天使の為に 」

四人で二人を相手にする、人数からして不利ではないが…と思うが相手次第だろう
其々に飛び、宮殿の中へと入っていく
 
剣で殺られた者は羽根が固まったように残り、そして通常の剣で殺られた者は気を失ったり悶ていた

守りの者すら倒れていく中で、奥の間へと行った時には
俺も、彼等も息を詰めた

「 この天使で最後か?随分と呆気ねぇな 」

「 そうだね 」

「「 貴様等ぁぁあ!!! 」」

目の前で首を刎ねられた天使は、片方の銀髪の悪魔によって血に染まる羽根へと変わり消えていく

流れ込む風と共に、白い羽根が舞い
大天使達は、我が子のように育てていた天使が全て殺された事に頭に血の気が昇り向かって行った

俺は……なんて事をしたんだ

下を向いていた巻角を生やした悪魔は、無駄の無い動きで剣を振るうった

「 っ!!? 」

「 うっ、ぐっ……!! 」

一瞬で羽根と腕を切り落とされた天使は大理石の上を滑るように倒れ、銀髪の剣を持つ悪魔は楽しげに首を落とす

僅か数秒の間に、二人の力のあった大天使は消えた事よりも
その場にいる悪魔に…
嫌な予感が的中した事に身は震える

「 エカード!!なにボサッと立っているんですか!? 」

「 あの神殺しの剣を持つ方は…魔王じゃない……… 」

「 えっ!? 」

片方もまた、魔王になったばかりだが
神殺しの剣を持つ方は、クオレが言っていた七人の魔王達の容姿とは違っていた

「 せーかい、俺は上級悪魔のシヴァ。此奴の助っ人さ 」

たかが剣で、大天使を怪我を負わせることの出来る方が紛れも無い魔王だ
上級悪魔と名乗った銀髪の悪魔は、横にいる魔王と何処か雰囲気が似ていた

「 なら…魔王一体に百体以上の天使が殺されたという事ですか!? 」

「 そう言う事になるだろう…… 」

「 そんな…馬鹿な 」

嗚呼、俺も馬鹿だと思うが…
其れよりも、天使を殺したのは御前で無ければ良かったとどれだけ思ったか

「 クオレ……。何故、御前なんだ!!?何故…御前が天使を殺したんだ!! 」

声を上げて問い掛けた言葉に、剣に付いた血を振り払ったクオレの瞳には光が無かった

「 二人だけの世界に、他の者は必要ないでしょ? 」

「 っ……!! 」

「 それに…エカード言ったじゃん。戦争中は幼い天使は隠れてるってごめんね……。本当は二万の兵じゃ無いんだ…俺と、上級悪魔が五人。それと千体の悪魔で来てた 」

天使は嘘を付かない……
けれど、悪魔は時に嘘を告げる

俺以外の者を殺す為、直ぐに宮殿の方を攻めるために
あの大袈裟とばかりにデカい魔法陣が現れた時に囮だと気付けば良かった

「 エカード…どういう事ですか……。なら、私達は…たかが一体の魔王と、数人の上級悪魔で…此処まで倒されたのですか? 」

不意をついたのはどちらか…
それはもう、言わなくても分かる

俺が大切にしてた天使を殺した事で、
クオレは一緒に居やれると思ったのだろう

その逆だ……もう、一緒に要られることは出来無くなくなった

「 残念だ、クオレ……。俺は御前を殺す明確な理由が出来てしまった。仲間を殺されて黙ってはいられない 」

「 いいよ……。兄貴…片方の天使を頼むね。俺はこっちの大天使を殺るから 」

「 はいよ、楽しめる相手ならいいな…よっし、女っぽい大天使さんよ…俺と遊ぼうぜ! 」

「 巫山戯るな!!悪魔が!! 」

向けたくも無い剣を、仲間の為に向け無ければならなくなった

そして、天使を殺せ…と命令されているクオレは引く事が出来無のだと剣を交えて分かった

本当は、お互いに殺し合いたくは無かったのに
クオレはサタンの息子であり、時期サタンになれるとされていたからこそ

邪魔な、天使を殺す事を告げられたのだろう

天界に来てることを、あのサタンが知らないはずがない

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