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番外編
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番外編
~ ディアモン 視点 ~
馬鹿な弟が人殺しを始めた、
それは直ぐに魔界に報告は来た
前にも一度、神父が火炙りにされて殺された時に意味も無く辺り一帯に存在してた
人を殺したんだからな
今更、如何でもいいんだが…
「 今回は、あの人間と一緒にいるとかで殺してる…御前等、止めて来い 」
「「 はい( 面倒くせぇぇぇえ…… )」」
サタンに言われたなら仕方無い、人間になっても尚
悪魔としての部分が抜け切れない弟の為に、俺を含めた五人の兄弟と、彼の子供達は止めに向かった
人間界に行き、あの元神父が居た場所のビルは見境無しに殺された人が倒れていた
「 こりゃひでぇわ。魂回収する奴等見てみろよ。座り込んでるぜ? 」
「 肉体は餓鬼とは言えど……死神さん達、お疲れっす 」
「 え、なに…彼奴は俺等の仕事増やしたいの?マジで?ふざけんなよ…… 」
端にはげんなりとして座り込んでる鎌を持った死神さん達は、身体と抜けきれてない魂を切るのが飽きたようで、ブツブツと文句を言っていた
俺の隣に立っていたシヴァはケラケラと笑ってから、告げる
「 ふはっ、俺の弟もやるぜ。なぁ、ディアモン 」
「 そうだな…。上の階を見て来てくれ、俺は翔太の方を確認してくる 」
「 オーケー 」
シヴァは他の兄弟を連れ、上の階に上がれる為に姿を消し
俺もまた翔太のいる方に向かう
この時間なら、下校中だろうかと気配を頼りに姿を見せた
「 翔太、ちょっとややこしいから魔界に来てくれ 」
「 っ!?おと…じゃなくてディアさん! 」
生憎、他の学生は居ないと思ったけど
涙目の翔太を見ると…恐らく学校の数人は殺されたか
「 クオレが学校に来て…… 」
「 嗚呼、何となく分かるから…行くぞ。此処にいたら彼奴が来るだろうからな 」
翔太の手を引き、抱き寄せれば驚く様子を気にもせず魔法陣の中へと入り、魔界へと戻った
初めて見る魔界に戸惑うより、先に安全な場所であるサタンがいる玉座の間に連れて行った
「 サタン、翔太を此処に置いておくが…良いだろ? 」
「 そう…?そいつが翔太が…随分と馬鹿息子の魔力が含まれてるなぁ 」
くつりと笑った羽を生やした獅子に、翔太は少し驚くも流石、高校生になってから落ち着いたのか直ぐに頭を下げた
「 初めまして!神崎翔太です!クオレのお父さん!! 」
流石にサタンも挨拶されるとは思わなかったらしく、目を丸くした後にケラケラと笑った
「 フハッ、そう硬くなるな。あの馬鹿を捕えて説教するまでここに居ると良い 」
「 あ、はい……お世話になります 」
サタンにとってどの位の人が死のうとも、彼の若かれし頃に比べたらたいした人数では無いのだろう
焦ったような他の六人の大罪達の顔色とは違って、気にしては無さそうだった
「 いっ、っ……油断した 」
「 シヴァ!?なんで、戻ってきたんだ!? 」
シヴァ以外にも、続々とこの間に現れた兄弟達は其々に膝を付き
灰となって消えていた部分が元に戻ってから口にする
「 あの馬鹿!姉であるこのワタシに悪魔殺しの剣を使ったのですよ!?人間だからまだしも… 」
「 ゴホッ……天使が使っていれば死んでいた…… 」
悪魔殺しの剣は、天使や神父が使えば存在その者を抹消出来るが
人間、特にクオレのように歪んだ心の持ち主が使うだけじゃ殺傷能力は無い
だが…刃を向けた事は相当彼等の感に触ったようだが…
当のサタンは笑っていた
「 まだ悪魔殺しの剣が合ったとは、ディアモン。持ち帰る数が少ないの? 」
「 …俺は悪魔だからな…どうせ、一つ持つだけで精一杯だよ 」
「 持ち帰ったのは俺だけどな!!? 」
教会がある時点で、一本ではないと思っていた
あの時、天使がクオレを殺した時に使った悪魔殺しの剣は彼の持ち物だった
そうなると、教会に残されたのを人間になったクオレが使っても可笑しくは無いんだ
「 剣は良い……。ディアモン…オマエが1番止めていたんだ…連れて帰ってこい 」
「 はい…兄の名誉にかけて。馬鹿な弟を連れて帰ります 」
膝を付き頭を下げてから、翔太を他の連中に任せて人間界へと戻った
既に移動していたクオレに合わせて、あの家へと行き、翔太の部屋に立てば弟はやって来た
「 ねぇ…翔太はどこ? 」
「 俺が魔界に連れて行った 」
「 へぇ……。そっちに行けないのに… 」
あの天使は、恐らく本気で此奴が好きだったのだろう
悪魔殺しの剣で一度殺したのは、悪魔としての魂だが……いや、外見程度
コイツ……どの悪魔が見ようとも″ そのまんま ″じゃねぇか
今頃、あの無駄にフワフワした雰囲気の天使はテペロペロとかしてるに違い無い
「 もう、人間界は止めて。魔界に来い…下級からになっても、御前なら上に昇ることは容易いはずだ 」
つーか、多分…下級悪魔なんてなれねぇぞ
既に人を殺し過ぎたから、そんな生易しい階級じゃないだろう
「 嫌だろうが、あの人間を殺して連れてくれば。あの人間も恐らく魔族になる…そうすれば…って……っ!! 」
「 グダグダ五月蝿いなぁ…? 」
向けられた剣は風を切るように俺の羽を切り落としていた
同時に左腕も切られたことに膝を付き、座り込めば目の端に現れた元神父を見た
俺がどう言わなくても…クオレは人間になる事は叶わなかった
生まれながらに悪魔として生まれ、育てられた此奴には
人間の持つ感情なんて何も無いんだろうな
刺される瞬間、俺は笑ってしまっていた
「 戻ってくるのはえぇよ!! 」
「 あはは…… 」
「 うぅ…パパに切られました…… 」
ジェミニは父親に本気の殺意を向けられた事にショックだったらしくて気落ちしていた
人間が使ってなかったら本当に殺されてたもんな
「 なぁ、サタン…。神々が期待したように…彼奴は人間にはなれない。紛れもないアンタの子だ 」
「 そうそう……。どうせ俺達が生きてた事を知っても嘲笑ってるような奴だ。人間にはなれねぇよ 」
少なからず悪魔は、人間になれる希望を持った
だが、結局…悪魔は悪魔でしかない
カエルの子がオタマジャクシだろうとも、最後は親と同じカエルになるように
彼奴もどんなに脚を切って、身を切っても、サタンと同じ悪魔になるのだろう
「 流石、息子だ。歓迎しよう…新たなサタンの後継者よ 」
「 残念だが…認めざるは得ないか 」
長男のリオンはやっと口を挟んだように、諦めて小さく嗤った
これは言わば、彼奴が人間界で人間らしく生活出来るか
一つの賭けだったのだが、まんまと彼奴はその生活が出来ない事を証明したんだからな
「 ふぇ……ジェミニ生きてるー! 」
「 ジェミナイ!! 」
お互いにもう一度出会えたことに喜ぶ兄妹は抱き合って居れば、翔太は俺に視線を向けた
「 つまり…死んだ人はみんな生きてるってこと? 」
「 残念だが、人間は死に…天国と地獄に分けられるだろうが…。大半の奴は重傷として生き返るだろう 」
「 どういうこと? 」
「 向こうにいた死神さん達が…仕事したくなくて魂切るのをやめて…入れるってこと。そしたら死なないし 」
餓鬼が喰らう前に、死神が餓鬼を追い払って人間の魂を戻していたのを見ていた
一気に死んだら、それでこそ人間界がパニックになるから
重傷で終えるだろうな
納得出来ない様子の翔太が首を傾げていれば、背後に数人の悪魔が膝を付いた
「 サタン様。クオレ殿と…その伴侶が此方にお連れしました 」
「 クオレ殿は牢獄にて…繋いで居りますが…どの様な処分を致しましょうか? 」
「 そうだなぁ…取り敢えず二百年は繋いで禁欲させとこう。少しは頭を冷やすだろう 」
「「 はっ… 」」
それでいいのか?って感じの其々の視線だが
あの悪魔には丁度いいだろう
サタンも二百年間繋ぐってことは、よっぽど奴隷にはしたくないように見える
二百年もありゃ、出た頃には魔王だな…
案外、甘い父親だと思う
「 真琴…。ここの生活には慣れたか? 」
「 死んだ事に実感は無いがな……それに……。俺だけ自由でいいのだろうか 」
真琴は、元々クオレが使っていた辺りを離れる事が出来なかったシュヴァルツと共に暮らしている
二人の兄弟と、翔太も共にいる
そして…彼の腹の中にいた子もこっちに来てる
父親に流産されて恨んでるのだろう、パパの顔なんて見たくない!とプンプン怒ってる可愛いチビを知ってる
魔王城にある、地下の牢獄に翔太はよく脚を向ける
彼の視線の先に居るのは鎖で繋がれて、二百年の間…囚われ続ける牡羊の姿をしたクオレ
此方の声は聞こも、姿を見えてるはずなのに
魔界に戻ってから落ち着いたのか、騒ぐことも無く大人しい
これは出て来た時、騒がしいだろうな……
「 御前は悪魔に染められたが、殺しはして無いだろ?だからさ…其れに悪魔になった時点で相当、罪を背負ってると思うぞ 」
人間の姿を知ってるから似合わないと思う
クオレに似た巻角と、黒い羽
まだ大きくはないがそれでも黒い羽は、悪魔である俺達とよく似ているものだった
青く光る瞳を切なげに向けた真琴は小さく笑ってから、檻へと近付いた
それに合わせるよう、クオレも身体を起き上がらせ近くまで寄る
触れる事の出来ない距離、それでも彼等は愛し合ってるのは変わりないか
「 クオレ……。残り百九十九年と十一月頑張れよ 」
「 グゥ…… 」
獣の声を発したクオレは、余裕とばかりだな
二人を放置して、外へと出る
「「 しょーた!遊ぼう!! 」」
「 にーたんは、ボクとあそぶのです!! 」
「 あ、うんうん……三人とも、遊ぶから引っ張らないで…… 」
翔太には一度に三人の弟や妹が出来れば大変だろうな
いつも引っ張られて遊びに誘われるのを困ってるのを見て笑える
魔界を怖がらず嫌がることも無く、三人を受け入れた翔太は、彼等にモテモテだな
赤き月を見上げて居れば、岩場に舞い降りて座った男は彼等を見て微笑んだ
「 矢張り、子は可愛いの… 」
「 天使が此処に…なんて、言えないな。堕天使……クオレの子だから可愛く思えるんじゃないか? 」
「 ふっ……そうな。あの者の子は特別愛おしい… 」
白い羽と似合わない黒い羽を持つ堕天使は、神々に怒られたからな
悪魔を殺し損ねた事と、結局その悪魔が人間を殺した事で此奴に天罰が食らって
天界には行けなくなった
けれど、此奴はそれが良かったように笑っている
「 なぁ、堕天使……。俺達も子を作らないか? 」
「 ふっ……考えていますよ。なんせ…あの子達からも求婚されてますからね 」
「 流石…クオレの子供達…気が早い 」
翔太も求婚されて困ってるらしいが、其々に新しい道を歩いていて俺は良かったよ
ふっと笑って落ち着いていれば、城から聞こえた破壊音に全員が振り返った
「 グァァァア!!!( じっと出来るわけ無い!!! )」
「 あらら、この世界は騒がしいですね 」
「 いや…彼奴限定だ……。おい、餓鬼共!!取り押さえに行くぞ!! 」
「「 はい!! 」」
彼奴はきっと、この世界の方が合っている
物を壊そうと暴れようとも、誰も怒りはしないんだからな
「 クオレ!!ちゃんと反省しろ!!! 」
「 クァッ!?( えぇぇぇ…… )」
「( ふっ……一人を除いてか )」
~ 番外編 終わり ~
~ ディアモン 視点 ~
馬鹿な弟が人殺しを始めた、
それは直ぐに魔界に報告は来た
前にも一度、神父が火炙りにされて殺された時に意味も無く辺り一帯に存在してた
人を殺したんだからな
今更、如何でもいいんだが…
「 今回は、あの人間と一緒にいるとかで殺してる…御前等、止めて来い 」
「「 はい( 面倒くせぇぇぇえ…… )」」
サタンに言われたなら仕方無い、人間になっても尚
悪魔としての部分が抜け切れない弟の為に、俺を含めた五人の兄弟と、彼の子供達は止めに向かった
人間界に行き、あの元神父が居た場所のビルは見境無しに殺された人が倒れていた
「 こりゃひでぇわ。魂回収する奴等見てみろよ。座り込んでるぜ? 」
「 肉体は餓鬼とは言えど……死神さん達、お疲れっす 」
「 え、なに…彼奴は俺等の仕事増やしたいの?マジで?ふざけんなよ…… 」
端にはげんなりとして座り込んでる鎌を持った死神さん達は、身体と抜けきれてない魂を切るのが飽きたようで、ブツブツと文句を言っていた
俺の隣に立っていたシヴァはケラケラと笑ってから、告げる
「 ふはっ、俺の弟もやるぜ。なぁ、ディアモン 」
「 そうだな…。上の階を見て来てくれ、俺は翔太の方を確認してくる 」
「 オーケー 」
シヴァは他の兄弟を連れ、上の階に上がれる為に姿を消し
俺もまた翔太のいる方に向かう
この時間なら、下校中だろうかと気配を頼りに姿を見せた
「 翔太、ちょっとややこしいから魔界に来てくれ 」
「 っ!?おと…じゃなくてディアさん! 」
生憎、他の学生は居ないと思ったけど
涙目の翔太を見ると…恐らく学校の数人は殺されたか
「 クオレが学校に来て…… 」
「 嗚呼、何となく分かるから…行くぞ。此処にいたら彼奴が来るだろうからな 」
翔太の手を引き、抱き寄せれば驚く様子を気にもせず魔法陣の中へと入り、魔界へと戻った
初めて見る魔界に戸惑うより、先に安全な場所であるサタンがいる玉座の間に連れて行った
「 サタン、翔太を此処に置いておくが…良いだろ? 」
「 そう…?そいつが翔太が…随分と馬鹿息子の魔力が含まれてるなぁ 」
くつりと笑った羽を生やした獅子に、翔太は少し驚くも流石、高校生になってから落ち着いたのか直ぐに頭を下げた
「 初めまして!神崎翔太です!クオレのお父さん!! 」
流石にサタンも挨拶されるとは思わなかったらしく、目を丸くした後にケラケラと笑った
「 フハッ、そう硬くなるな。あの馬鹿を捕えて説教するまでここに居ると良い 」
「 あ、はい……お世話になります 」
サタンにとってどの位の人が死のうとも、彼の若かれし頃に比べたらたいした人数では無いのだろう
焦ったような他の六人の大罪達の顔色とは違って、気にしては無さそうだった
「 いっ、っ……油断した 」
「 シヴァ!?なんで、戻ってきたんだ!? 」
シヴァ以外にも、続々とこの間に現れた兄弟達は其々に膝を付き
灰となって消えていた部分が元に戻ってから口にする
「 あの馬鹿!姉であるこのワタシに悪魔殺しの剣を使ったのですよ!?人間だからまだしも… 」
「 ゴホッ……天使が使っていれば死んでいた…… 」
悪魔殺しの剣は、天使や神父が使えば存在その者を抹消出来るが
人間、特にクオレのように歪んだ心の持ち主が使うだけじゃ殺傷能力は無い
だが…刃を向けた事は相当彼等の感に触ったようだが…
当のサタンは笑っていた
「 まだ悪魔殺しの剣が合ったとは、ディアモン。持ち帰る数が少ないの? 」
「 …俺は悪魔だからな…どうせ、一つ持つだけで精一杯だよ 」
「 持ち帰ったのは俺だけどな!!? 」
教会がある時点で、一本ではないと思っていた
あの時、天使がクオレを殺した時に使った悪魔殺しの剣は彼の持ち物だった
そうなると、教会に残されたのを人間になったクオレが使っても可笑しくは無いんだ
「 剣は良い……。ディアモン…オマエが1番止めていたんだ…連れて帰ってこい 」
「 はい…兄の名誉にかけて。馬鹿な弟を連れて帰ります 」
膝を付き頭を下げてから、翔太を他の連中に任せて人間界へと戻った
既に移動していたクオレに合わせて、あの家へと行き、翔太の部屋に立てば弟はやって来た
「 ねぇ…翔太はどこ? 」
「 俺が魔界に連れて行った 」
「 へぇ……。そっちに行けないのに… 」
あの天使は、恐らく本気で此奴が好きだったのだろう
悪魔殺しの剣で一度殺したのは、悪魔としての魂だが……いや、外見程度
コイツ……どの悪魔が見ようとも″ そのまんま ″じゃねぇか
今頃、あの無駄にフワフワした雰囲気の天使はテペロペロとかしてるに違い無い
「 もう、人間界は止めて。魔界に来い…下級からになっても、御前なら上に昇ることは容易いはずだ 」
つーか、多分…下級悪魔なんてなれねぇぞ
既に人を殺し過ぎたから、そんな生易しい階級じゃないだろう
「 嫌だろうが、あの人間を殺して連れてくれば。あの人間も恐らく魔族になる…そうすれば…って……っ!! 」
「 グダグダ五月蝿いなぁ…? 」
向けられた剣は風を切るように俺の羽を切り落としていた
同時に左腕も切られたことに膝を付き、座り込めば目の端に現れた元神父を見た
俺がどう言わなくても…クオレは人間になる事は叶わなかった
生まれながらに悪魔として生まれ、育てられた此奴には
人間の持つ感情なんて何も無いんだろうな
刺される瞬間、俺は笑ってしまっていた
「 戻ってくるのはえぇよ!! 」
「 あはは…… 」
「 うぅ…パパに切られました…… 」
ジェミニは父親に本気の殺意を向けられた事にショックだったらしくて気落ちしていた
人間が使ってなかったら本当に殺されてたもんな
「 なぁ、サタン…。神々が期待したように…彼奴は人間にはなれない。紛れもないアンタの子だ 」
「 そうそう……。どうせ俺達が生きてた事を知っても嘲笑ってるような奴だ。人間にはなれねぇよ 」
少なからず悪魔は、人間になれる希望を持った
だが、結局…悪魔は悪魔でしかない
カエルの子がオタマジャクシだろうとも、最後は親と同じカエルになるように
彼奴もどんなに脚を切って、身を切っても、サタンと同じ悪魔になるのだろう
「 流石、息子だ。歓迎しよう…新たなサタンの後継者よ 」
「 残念だが…認めざるは得ないか 」
長男のリオンはやっと口を挟んだように、諦めて小さく嗤った
これは言わば、彼奴が人間界で人間らしく生活出来るか
一つの賭けだったのだが、まんまと彼奴はその生活が出来ない事を証明したんだからな
「 ふぇ……ジェミニ生きてるー! 」
「 ジェミナイ!! 」
お互いにもう一度出会えたことに喜ぶ兄妹は抱き合って居れば、翔太は俺に視線を向けた
「 つまり…死んだ人はみんな生きてるってこと? 」
「 残念だが、人間は死に…天国と地獄に分けられるだろうが…。大半の奴は重傷として生き返るだろう 」
「 どういうこと? 」
「 向こうにいた死神さん達が…仕事したくなくて魂切るのをやめて…入れるってこと。そしたら死なないし 」
餓鬼が喰らう前に、死神が餓鬼を追い払って人間の魂を戻していたのを見ていた
一気に死んだら、それでこそ人間界がパニックになるから
重傷で終えるだろうな
納得出来ない様子の翔太が首を傾げていれば、背後に数人の悪魔が膝を付いた
「 サタン様。クオレ殿と…その伴侶が此方にお連れしました 」
「 クオレ殿は牢獄にて…繋いで居りますが…どの様な処分を致しましょうか? 」
「 そうだなぁ…取り敢えず二百年は繋いで禁欲させとこう。少しは頭を冷やすだろう 」
「「 はっ… 」」
それでいいのか?って感じの其々の視線だが
あの悪魔には丁度いいだろう
サタンも二百年間繋ぐってことは、よっぽど奴隷にはしたくないように見える
二百年もありゃ、出た頃には魔王だな…
案外、甘い父親だと思う
「 真琴…。ここの生活には慣れたか? 」
「 死んだ事に実感は無いがな……それに……。俺だけ自由でいいのだろうか 」
真琴は、元々クオレが使っていた辺りを離れる事が出来なかったシュヴァルツと共に暮らしている
二人の兄弟と、翔太も共にいる
そして…彼の腹の中にいた子もこっちに来てる
父親に流産されて恨んでるのだろう、パパの顔なんて見たくない!とプンプン怒ってる可愛いチビを知ってる
魔王城にある、地下の牢獄に翔太はよく脚を向ける
彼の視線の先に居るのは鎖で繋がれて、二百年の間…囚われ続ける牡羊の姿をしたクオレ
此方の声は聞こも、姿を見えてるはずなのに
魔界に戻ってから落ち着いたのか、騒ぐことも無く大人しい
これは出て来た時、騒がしいだろうな……
「 御前は悪魔に染められたが、殺しはして無いだろ?だからさ…其れに悪魔になった時点で相当、罪を背負ってると思うぞ 」
人間の姿を知ってるから似合わないと思う
クオレに似た巻角と、黒い羽
まだ大きくはないがそれでも黒い羽は、悪魔である俺達とよく似ているものだった
青く光る瞳を切なげに向けた真琴は小さく笑ってから、檻へと近付いた
それに合わせるよう、クオレも身体を起き上がらせ近くまで寄る
触れる事の出来ない距離、それでも彼等は愛し合ってるのは変わりないか
「 クオレ……。残り百九十九年と十一月頑張れよ 」
「 グゥ…… 」
獣の声を発したクオレは、余裕とばかりだな
二人を放置して、外へと出る
「「 しょーた!遊ぼう!! 」」
「 にーたんは、ボクとあそぶのです!! 」
「 あ、うんうん……三人とも、遊ぶから引っ張らないで…… 」
翔太には一度に三人の弟や妹が出来れば大変だろうな
いつも引っ張られて遊びに誘われるのを困ってるのを見て笑える
魔界を怖がらず嫌がることも無く、三人を受け入れた翔太は、彼等にモテモテだな
赤き月を見上げて居れば、岩場に舞い降りて座った男は彼等を見て微笑んだ
「 矢張り、子は可愛いの… 」
「 天使が此処に…なんて、言えないな。堕天使……クオレの子だから可愛く思えるんじゃないか? 」
「 ふっ……そうな。あの者の子は特別愛おしい… 」
白い羽と似合わない黒い羽を持つ堕天使は、神々に怒られたからな
悪魔を殺し損ねた事と、結局その悪魔が人間を殺した事で此奴に天罰が食らって
天界には行けなくなった
けれど、此奴はそれが良かったように笑っている
「 なぁ、堕天使……。俺達も子を作らないか? 」
「 ふっ……考えていますよ。なんせ…あの子達からも求婚されてますからね 」
「 流石…クオレの子供達…気が早い 」
翔太も求婚されて困ってるらしいが、其々に新しい道を歩いていて俺は良かったよ
ふっと笑って落ち着いていれば、城から聞こえた破壊音に全員が振り返った
「 グァァァア!!!( じっと出来るわけ無い!!! )」
「 あらら、この世界は騒がしいですね 」
「 いや…彼奴限定だ……。おい、餓鬼共!!取り押さえに行くぞ!! 」
「「 はい!! 」」
彼奴はきっと、この世界の方が合っている
物を壊そうと暴れようとも、誰も怒りはしないんだからな
「 クオレ!!ちゃんと反省しろ!!! 」
「 クァッ!?( えぇぇぇ…… )」
「( ふっ……一人を除いてか )」
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