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~ 神崎 視点 ~


「 神崎さん、此方の書類の確認をお願いします 」

少し前から違和感はあった 
匂いで吐き気がするような感覚を何とか堪えていたのだが、朝ご飯に凝ったものを作ろうとして失敗した
 
匂いで嘔吐付き、そのままキッチンのシンクに嘔吐したの事に青ざめたが 
水を飲んで、匂いから遠ざかってたら落ち着いた
ちょっとした風邪だろうかとマクスを着けているが、これが案外良かったかもしれない

下手に香水の匂いやら、人の匂いが嗅がなくて気分は良かった

昼頃に何か腹に入れようと考えながら、仕事をやっていく

「 よっ、神崎。再婚してから元気そうだな? 」

「 再婚…はっ!? 」

昼の休み時間、自動販売機の前に立っていれば同僚に軽く背を叩かれた後に言われた言葉に驚く

「 隠す必要ねぇって、それ婚約指輪だろ?新しいし…いいもん買ったじゃねぇか 」

「 嗚呼……これは向こうから貰ったんだ 」

「 えっ…女から貰うもんなのか? 」

そうか…此処で、男から貰ったなんて言えば同僚でも、立場的に上司がホモだと知られる事になる
流石に、それだけは避けたい為に考えていれば女性の社員がやって来た

「 代表、お疲れ様です 」

「 嗚呼、お疲れ様 」

「 なぁ、今の時代って…女性から婚約指輪なんて渡すもんか? 」

敢えてそれを聞くのか…
飲み物を選ぼうとしたが、この人数を見て買うのを躊躇っていれば
女性の社員は軽く笑った

「 告白する側が渡す時はありますよー、今は女性も働く時代ですよ? 」

「 そうそう、男より収入が多い女性なんて…… 」

「「 代表より…収入の多い女性……!? 」」

それ有り得るの?みたいな顔で全員に視線を向けられるが、逃れるようにペットボトルの炭酸ジュースを選び、取りながら答えた

「 ある意味、収入というか…貯金は多いんじゃないか( 通帳みたが…俺の何十倍はあったしな… )」

ゼロの桁が、果てしなく多い貯金通帳を見た事あるから考えるのは止めた 
お陰で家は新築のように綺麗に建て替えたばかりだし、それでも余裕あるんだろう

もう少し俺も頑張ろう…と考えていれば、其々に考えてる中で他のやつから呼ばれた

「 あ、代表!いたいた。お客さんですよ 」

「 ん?誰だ? 」

「 神崎クオレ?と名乗るハーフっぽい美形…って、代表!? 」

「「( 歩くの早っ!! )」」

なんで来た、何しに来た
また変な事をするんじゃないかと焦り、早々に居るだろう場所に行けば

半分、走ったような早歩きのまま客室を開く

「 クオレ…何しに…… 」

ガラス張りの客室に入り、中の声は外に聞こえないが
俺は、彼奴が素直に座ってると思うような質ではないと知ってるから気付いた
 
軽く膝を組み、片手を上げたクオレと瓜ふたつの顔をした…ドッペルではない此奴に察する

「 よっ!神父さん…元かな? 」

「 ディアモン……?御前…なんでその格好で…此処に…? 」

クオレが人間になってから、悪魔が見えなくなっていた
だからこそ、彼等が彷徨いてたら分からないんだが…
こうして向こうから姿を見せようとしてくれてる時は、見えるものだ

「 まぁいいから座ってくれ。話す時間はあるか? 」

「 休み時間だからな…多少はあるさ 」

「 覚えてて良かった。それじゃ、話そうぜ 」

クオレの容姿で口調に違和感があるのは気になるが、此奴は俺の代わりに仕事をしてたから休み時間も、客として入る理由も分かるだろうな

少しだけ納得し、テーブルを挟んでソファーに座れば 
ペットボトルの蓋を開け、一口飲みながら話を聞く

「 単刀直入に聞くが……。最近、体調が悪くないか? 」

「 よく分かったな?アイツから聞いたか? 」

「 くぁ…やっぱりか……いや、聞いてはないが…。まぁ…仲いいもんなぁ… 」

「 は? 」

体調が悪い事が、クオレと何が関係してるのか分からない 
彼奴が性病持ちだった、と言われても納得出来るが…それじゃないような雰囲気に首を傾げる

「 クオレは人間だけど…ほんの少しだけ、悪魔の名残があるんだよ 」

「 そうなのか? 」

「 そう……性器具とか…繁殖とかな 」

「 まぁ…サイズは変わってなかったな 」

そんなのを此奴に言う必要が有るのか分からないが、サイズ感が変わってなかったのと
それとどう、意味が有るのか疑問になれば
いい辛そうにしたディアモンは溜息を吐き俺の方、正確には腹の方に指を向けた

「 他の兄弟達と話し合って、そうじゃないかと思っていたが……。もしかしたら、御前…… 」

「 なんだ……? 」

まさか、病気か?
僅かにゴクリと生唾を飲み込めば、ディアモンは告げた

「 彼奴の子を孕んでるかも…知れない 」

「 ………は?……はぁ!? 」

余りの事に一瞬頭が真っ白になるが、もう一度脳裏にその言葉が流れてくればソファーの背凭れに身を下げるほど、オーバーに驚いてしまった
咄嗟に、腹へと触ればディアモンは答える

「 というか…体調悪い時点で確定だろ。どう生まれるかは分からないが…卵じゃねぇとは思う。もう彼奴は人間だし 」

「 いや、待て……子って…悪魔なら分かるが男同士だろ!?それに…そんな 」

「 言ったろ。彼奴は悪魔の部分が残ってる。死ぬ前に大量の精子と生気を奪って死んだんだ。悪魔として死んでも…残るものは残るさ 」

その一つに、繁殖が含まれているのか
もしも、腹の中に彼奴の子がいるのなら…
この体調悪いのは、悪阻になってるということか?

「 俺は…産めるのか? 」

「 事例が無いから分からねぇが。本気で産みたいならサポートはしてやる 」

「 何故…そこまでするんだ? 」

「 俺の、弟だからだ。そしてお前は伴侶だろ? 」

顔は若く見えるのに、年齢はずっと俺より年上だとだからこそハッキリと言えるのか

いや、少なからず弟の伴侶なら…
彼はお義兄さんと言う立場になる

「 …彼奴は愛されてるな。人間になっても尚…支えてくれる奴等がいる 」

「 当たり前だ。最後まで人間になるのを止めたんだ。今だに認めてねぇがな…だが、子は別だ……。此処に悪魔だが、人間のように生活してる医者がいる。気になったら行くといい 」

名刺をテーブルに置かれ、ディアモンは立ち上がった
もう話を終えるのか、もう少し聞きたいとは思うが…
全ては本当に子供がいるのか確認しなければ、話は進みそうには無いということか…

「 分かった……帰りにでも寄ってみる。この事は…彼奴には黙っててくれ。もし居るなら…落ち着いてから話す 」

「 分かった……。女の母体より落ちやすい。気をつけろよ 」

子宮のような場所が男には備わって無いからか
走るのも下手に動き回るのも控えようと思った
名刺を胸元のポケットに入れれば、ディアモンは客室を出て行った
残された俺は、軽く腹を撫でてから深く息を吐く

「 男以前に…40歳になった俺が…産めるのか? 」

高齢出産と呼ばれる歳だろう
本当に可能か分からないが、産みたいと思ってしまうぐらい
彼奴との子を望んでいたのは確かだ

卵ではないなら…

「 勿論、帝王切開だわ 」

「 ですよね…… 」

言い訳を付けて少し早く仕事を切り終えて、病院へと来た

指定された病院は、悪魔がやってるとは思えないほどの大きな病院であり
そこにある消化器外科で、診察出来るらしく…診察した

レントゲンなんてしなくとも悪魔には分かるらしく、女性は白いモニターに自ら見えた物を映し出した

そこには最先端の3Dよりハッキリと映し出されている、まだ形すらよく分からないようなモノが映っていた

「 それも、…相当ハードよ 」

「 男が産む時点で…覚悟してますよ 」

「 そう、いい心がけね。成長の速度は人間と同じでしょう。10ヶ月間お腹に入れて…隠し通せるかしら? 」

「 中年太りという事にします…。後は出産前後は溜めている有給を一気に使えば3週間ぐらいは大丈夫かと… 」

きっと感のいい奴にはバレるかも知れないが、それでも産むと決めてるんだから後で何と言われようが如何でもいい

クオレが死を持って俺に許されたいと願ったのなら、
俺は男が孕んだことがバレて会社がクビになろうが構わない

「 その辺りは任せるけど……。問題は、貴方…筋肉有るのにどうお腹が膨らむかなと…。小さく産むことはよく有るけど… 」

「 少し太れば問題ないですか? 」

「 そうね…。余りに筋肉質だと伸びた時に酷く線が残るでしょうし…子の成長の妨げにもなるわ 」

それでも構わないと頷けば、彼女は笑みを向けてきた

「 なら…ちゃんとクオレに言う事ね。私達…悪魔はよくあの元魔王を知ってるから分かるけど…きっと喜ぶわ 」

「 魔王…と言うけど…クオレはどんな立場だったんですか? 」

「 あら、知らないの?サタンの下に属する…7人の魔王…色欲の悪魔…アスモデウスよ? 」

「 ……そんな気はしていた 」

「 アスモデウスは昔、天使との争いに破れて消えてるなら…7人の渾名を其々決めてるだけね。本人ではないわ 」

サタンが本で見てるようなサタンでは無いように、有名な魔王達もまた何度か死んでるが…
その渾名を受け継いでいるのか…

例えそうだとしても、アスモデウスの名を受け取る程に美貌と色欲があったって事だろう
納得したし、兄弟達が止める理由も分かる

「 確かに…そんな魔王が人になると言うなら…止めますね… 」

「 次のサタンに近いとされていたからね…。でも…羨ましいわ 」

「 何故……? 」

「 相思相愛じゃないの。それだけで悪魔にとって希望なの…人に恋してもいいんだって 」

微笑んだ彼女には、恐らく好きな人がこの病院内にでもいるのだろう
それも人間が相手なんだとは察する事は出来た

だからこそ、クオレが後に下僕になろうとも今…手を貸すのは
俺と彼奴に…無いとされた例外が、今ここに有るから希望を持ってるのだろう

俺だけが子を欲しいわけじゃない
俺が産んだことで、悪魔だろうとも希望があるなら…
それは誰かの為になると思って、必ず元気な子を産んで見せたいと思う

「 …なら証明してみせます。元淫魔の子を産めることを… 」

「 えぇ、その為に…サポートするわ 」

俺は、本気で子を産むことを決めた

まずは…クオレに報告する必要が有るけどな

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