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番外編
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しおりを挟む血だらけの二人が帰って来て、私と海斗に二人は今までの事を鮮明に話してくれた
そして、此れからどうしたいか、と言う話に海斗の言葉は" 颯さんと一緒にいたい "と揺るがない気持ちを伝えた
でも、私は直ぐに答えを言えなかった
拓海さんがいない間、ずっと考えていたのにこの人にはお兄ちゃんしか見えない事実にやっぱりか、と言う分かりきった答えに落ち込んでる気持ちも無かったんだ
それでも、自分に嘘をついて固めてきた拓海さんの素直な気持ちと言葉には心は打たれた
『 私は拓海さんが好きだよ。寧ろ、お兄ちゃんが好きな拓海さんは拓海さんじゃないと思うから、それを引っ括めて好きだよ 』
「 陽妃ちゃん.... 」
6年間、会えなかった
それでも気持ちは変わらないし変えるつもりもない
帰って来て何を話すか、それすら受け入れる気持ちがあったから今は心がすっと軽くなっていた
「 ....俺でいいんだね? 」
『 うん、拓海さんがいい 』
「 ....君の一途さには負けたよ 」
そういって私へと手を伸ばしてきた拓海さんに、私は素直に撫でられる前にその身体へとそっと抱き着いていた
『 お帰りなさい.... 』
「 ただいま 」
貴方がお兄ちゃんを思って辛かった日々、此れから私がそれを埋めることは出来ないけど、いつか心の傷が癒えるまで私が今度は一途に思い続けよう
そっと抱き締める私に拓海さんは髪へと鼻先を当て小さく告げた
「 ....はぁ....颯。今頃、海斗とイチャラブしてるんだろうね 」
『 ....ボク達もしませんか? 』
どれだけお兄ちゃんが好きでも構わない
それが拓海さんだから、その代わり私に独占されてもお兄ちゃんが嫉妬することは許さないよ
だってお兄ちゃんは海斗くんを選んだんだからね
「 えっ....流石に、心の整理が欲しいよ 」
『 拓海さんならそう言うと思った 』
「 ごめんね、今はこれだけで我慢して 」
困ったように微笑んで、私の頬に触れ額へと口付けを落としてきた
片手でウィッグの中央を掴み下げるように外した彼は、それを見てから床へと落とし、もう一度抱き締めてくる
「 女装なんて止めたらいいのに....そのままで十分可愛いよ 」
『 っ....気が向いたらそうします 』
心が変わるように、時間をかけて黒澤さんもまたお兄ちゃんや拓海さん達から手を離すように興味を失った
そして組織は今尚、続いてるけど前よりは人を殺すことが減ったとお兄ちゃんは言っていた
その代わりに地下に残ったアランと言う彼等が残した言葉通りに、お兄ちゃんと私は男性としての身体でありながら妊娠を経験する実験へと協力した
単純に、拓海さんが子供が欲しいとぼやいてたからお兄ちゃんに似てる私が産めば喜んでくれると言う感覚だったからこそ女の人の大変さを実感したのは此よりもう少し先の話し
「 拓海....痛み止めくれ 」
「 変に銃弾を抉るからだよ。あ!そうそう、颯....御願い聞いてよ 」
「 いや、こんな傷でセックス迫ってきた海斗が悪い....で、なんだ? 」
「 わわっ、颯さん、言わないでくださいよ! 」
楽しそうな彼等に、私は微笑みながらその光景を見ていた
痛み止めを差し出した拓海さんはごく普通に答えた
「 颯、俺と暮らして欲しい。いや、俺達と、かな?皆で暮らしたらきっと楽しいよ 」
「 お願いってそんな事か?俺は構わんぞ、御前等は? 」
「 颯さんと暮らせるなら問題ないです 」
『 私も全然いいよー、楽しそうだし 』
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