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番外編
03
しおりを挟む~ 颯 視点 ~
何も見えなくて、何も聞こえない
痛みさえ感覚が麻痺したように
俺の身体は精神ともにボロボロになっていた
あれから何日経過したか、それすら分からないままに毎日繰り返される拷問と言う名の八つ当たりに疲れていたときにこの人は現れた
「 久々だね、No.103。んん、颯 」
彼奴と同じ声に、久々に話し相手に来たのかと思ったがそんな事は無かった
こいつは拓海じゃない、そう理解する方は早いが口にある声を塞ぐ道具によって言葉は発することは出来ない
なんの用事だと、被せられた袋の中で視線だけを向ければ男は答えた
「 拓海が相当、俺の恋人気にかけててね。迷惑なの....だからさ、彼が" 死ぬまで "の相手になってよ。条件は、彼の子守りでいいや 」
どんな風の吹き回しだ、どんな理由で拓海の子守りをするのか分からないし教えてくれる様子はない
只分かるのは、案外精神が弱い拓海の事だから俺と似てる奴を見付けては心の拠り所にしてるのだろ
それは確かに、そいつの事が好きな恋人からしたら傍迷惑な話だ
俺には海斗がいるのだが....
そんな私情は今は関係無いとばかりに
男は続けた
「 此処から出たいでしょ?だからさ、ちょっとした実験に付き合ってくれるなら出して上げる。君の懲役が終わるまで地上には出れないけど悪くない条件でしょ? 」
罪を背負うために此処に入っている
それなのに出ては実験に付き合えと言う
それもまた悪くないと思う
陽妃にはどんな理由だろうと黒澤がいる
それに海斗はしっかりものだから大丈夫だろ
遊馬に至っては元々自立してるから平気だと確信がある
会えないのは致し方ないが、それでも....
誰かの役に立つ実験なのなら俺はこの条件を呑んだ
頷いたことで、この交渉は設立し俺とそっくりなアンドロイドは傷をつけられた状態で俺の身代わりとして牢へと入った
アランは告げた" 彼に感情はない人形だから大丈夫 "だと
拷問してる奴等がアンドロイドだと気付かない限り平気だと
自分とそっくりなアンドロイドが身代わりになるのは少し心が痛いが、すまないと思ってからアランに連れられ地下のビルへとやって来た
其処で俺は傷が完治するまで" 22号 "として手首にマジックペンで数字を書かれ、見える傷にはメイクをし自由が許された
「( 案外、なにもしないのか )」
実験すると言っていたから何かすると思ったのだが、見るからに俺にはなにもしない
それよりか、部屋は与えられ食事すら部屋に届いてくれる
一つ驚いたのが似た顔が多いことだが、恐らく拓海と同じ説明を受けた俺はそれに納得していた
拓海が見たこと、聞いたこと、全て俺にも教えてくれた
色々文句を言う立場ではない俺は、助けられたことに感謝して傷の治癒を優先した
それは同時にアランにとって、人造人間の俺の回復力を見たかった為に連れてこられたのも分かる
「 凄いね、肋骨に6本はボロボロだったのに一ヶ月で完治したね。痛む? 」
「 其処までじゃない 」
「 流石、人間の細胞より遥かに活性化してるだけある 」
カルテを持ちデータを記入すればカラーファイルにいれ楽しそうにする
俺の回復力や細胞は特殊らしくそれを研究して、アランは見た目より劣る恋人へと使いたかったらしい
「 颯の組織から取り出した細胞を培養して、ルイスの身体に入れたら肌艶もよくなったし、良さそう!流石、遺伝子は同じだけあるね。馴染みが早いし拒絶反応が出ない 」
この人の頭の中には、ルイスの事しかない 其所に俺達が生きていようが死んでても気にはならないんだ
只、俺達を生かしてそのデータを元にルイスが健康で少しでも長生きできるように工夫が出来ればそれでいい
都合のいいことを拓海に言って信じさせているが、結局はこの人の研究は此れから先の未来ではなく目の前にいる恋人の為に使われている
「( そんな事だとは思っていたさ.... )」
言われていた仕事を終えて、楽しげにルイスの身体を見るこの人から離れてモニタールームを出ていれば背後に聞こえた足音と共に、それが掴まれれば内心驚いたが顔には出ないのはよかった
「 ん? 」
「 22号....ってことは、違うか 」
拓海、直ぐに俺が分からないぐらいには似た顔に翻弄されてるの
御前らしいと手を離された後に笑っていた
「( いつ気付くか見物だ )」
案の定、こっちが教えるまで気付かなかったがそれまた面白い
今は只、研究熱心な馬鹿と
俺の事が一途に好きすぎて陽妃を後付けしてるこいつの傍で時が過ぎるのを待つことにした
それも、全ては海斗と過ごすために
アランが提示した条件を飲むために....
" 黒澤くんが落ち着いたらきっと君達に興味はなくなるよ。其まで身を潜める事だね。匿って上げる変わりに実験に協力してね "
怪我が治ってから告げられた
なら、地上に出たときに俺はあの人を殺そうと決めた
その為に今は、我慢してやる
「 はっ、颯っ.... 」
「( やっぱり俺の方が攻めがよくないか?だが、陽妃が攻めになれるとは思えないし、こいつを攻めとして育てるのも俺の"子守り"の役割か.... )」
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