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番外編

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「 御前は、拓海が好きか? 」

黒澤さんの言葉通りに、面会は行われた
私が何かを問う前に先に告げたのはお兄ちゃんの方

面会と言うには余りにもそうは見えなくて、与えられた部屋の対面式ガラスの向こうに写る兄は頭に紙袋のようなものを被せられ、両手を背中で拘束されていた

有罪が決まると聞いても、それに此処までするのか疑問で、何かされてるんじゃないかという不安が過っても

今は動揺せず、冷静に答えようと頷いた

『 好きだよ....拓海さんが好き 』

「 ....そうか 」

何を言われるか分からないが、それでも、伝えればお兄ちゃんはゆっくりと動き体勢を僅かに前へと倒し告げた

「 俺と拓海は政府の組織に造り出された、人を殺す為の試験ベイビーだ 」 

『 えっ? 』

言葉を発した瞬間に見張りの警察官は動いたが、其を止めたのは他でもない黒澤さんの片手だった
何故、彼が警察官を止めれるかは分からないけどお兄ちゃんが告げた言葉にも
思考の整理はついていかない

「 俺はそのNo.10110103という番号を持ち、拓海はNo.10499646と言う数字が
生まれたときに与えられた識別番号の本名だ。そして、陽妃....御前は俺の精子から生まれた人工受精の子供だ。俺の....子供なんだ 」

『 お兄ちゃんの....子供....? 』

「 あぁ、そのネックレスは俺が我が子に与える、GPSの埋め込まれた、俺の子供だと分かるためのも.... 」

年齢が兄弟にして離れてることは疑問はあった、それでもお兄ちゃんが時より見せる表情や優しさは、見たことない父親の愛情なら、と考えたことはある

「 御前はずっと、俺のいる組織で監視されていた。御前と海斗は....運動能力に優れていれば同じ道を歩んでいた。だが、御前達は賢いから....別の道を進んだ 」

『 待って、お兄ちゃん....遊馬くんが、お兄ちゃんの息子って.... 』

「 知ってたのか。あぁ、彼奴も我が子だ。だが....訓練を受けた組織に雇われている暗殺者でもある。御前を守るためにずっと傍に居させていた 」

目立たない遊馬の存在
けれど時より助けてくれたのは覚えている
それはちょっとした正義感だと思っていたのだけど、お兄ちゃんの言葉に違和感があった部分は納得していく

体育をしてるときに、遊馬君もまた私と同じネックレスを持っていた事を見たことはあった
それは何度も大切そうに....

「 俺は人殺しだ。沢山殺してきた、夫婦も幼い子供も。それはまた拓海も同じだ....人殺しの奴でも、御前は拓海が好きと言うなら其でもいいが、悲しむぞ。所詮は組織に雇われてる者だ、簡単に死ぬ 」

頭の整理は追い付かないけど、お兄ちゃんが酷い内容をいっても、遠回しに好きなら思い続けろと言ってるように聞こえて、どんな人でも許せてしまう

お兄ちゃんが持っていた拳銃の意味も
仕事から帰ってくれば何かを洗い流すようにずっと御風呂に入ってることも
隠してることが多かったのも、言える立場じゃなかったから....

『 其でもいいよ。拓海さんは拓海さんだし。お兄ちゃんは、お兄ちゃんだから。今更、お父さんだったて言われても、育ててくれたのはお兄ちゃんなんだから、お父さんみたいなものでしょ? 』

「 陽妃.... 」

『 守ってくれてありがとうね。此処から出たら、また一緒に暮らそ? 』

動揺することなんて何もなかった
それは人殺しだとしても優しい彼等を知ってるから嫌々してた事ぐらい、推測は出来る

お兄ちゃんでもお父さんでも、拓海さんがまた同じ存在でも私は良かった
好きにで大切な人なんだから

「 御前は本当に優しいな....拓海はいい奴だ。心が不安定になりやすいが、一途で真面目だ。あの馬鹿にそっくりなぐらいな.... 」 

『 海斗くんだね? 』

「 ふっ、あぁ....よく似てる。だから、俺は彼奴等が好きだ。御前が拓海を好きでも応援している....辛いとは思うが待ってやってくれ、けじめをつければ会うだろ.... 」

それはきっとお兄ちゃんが海斗くんに会うときに思う気持ちだともハッキリと伝わってきた
お兄ちゃん、やっぱり皆が大好きなんだと知れば椅子から立ってはガラスに触れていた

『 お兄ちゃん、大好きだよ.... 』

「 俺も大好きだよ、陽妃。愛してる 」

被った物の中から落ちた滴は彼の太股のズボンを濡らし始めた

お兄ちゃんがどんな表情をしてるのか、分からないけどきっと....今の私と同じ顔をしてると思う

「 面会時間は終了だ。No.103、戻れ 」

引き裂かれるようにお兄ちゃんは乱暴に連れていかれた、扉の向こうに行く彼とは一時会えないと思うより、愛されていたことを実感して涙は止まらなかった

『 お兄ちゃん.... 』

お兄ちゃんの前では落ち着いていようと思ったのに、途中から泣きながら話していた
震えることを懸命に抑えて....

「 陽妃さん、帰りますよ 」

『 はい....黒澤さん。帰ったら、お兄ちゃんのこと....もう少し教えてくれませんか.... 』

「 私の口から御伝えできる範囲でしたら、幾らでも 」

この人は、やっぱりお兄ちゃんと同じ仕事をしてる人だと気付いた
それもこの状況ならお兄ちゃんより立場はきっと上だということ....

家に帰ってゆっくりと聞かされた事は、二人の育ちやら私が生まれた時の話だった

小さい頃の過去の話、それは知らないお兄ちゃんと拓海さんを知れて嬉しかった

そして、彼等に会うことは数年後まで無かった....

その空白の時間になにをしていたのか聞いたのは

あの日....お兄ちゃんと拓海さんが大怪我をした夜の事だった

それを聞いて、とても驚いた事だけどお兄ちゃん達らしいと笑ってしまったんだよね

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