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番外編

08

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案外、寂しがり屋の颯の為に情報と外の事を伝える為に警察官として来ることはある

颯の暇でも潰せたら其れでいいのだが、そう簡単には行かない

「 交代の時間だ。休憩をどうぞ 」

「 あっ、はい、助かります 」

深く帽子を被り、颯の牢屋の前で見張っていた警察官と交代をすれば俺は彼と同じ場所に立つ

一部屋だけ隔離された牢屋 
隠しカメラの数は、颯の部屋に2つ
この通路に2つ、そして廊下には外に出るまで点々とある
部屋の外にも有るほどに颯の有罪が決まってもないこの現状でこれはかなりの監視の数だと思う

まるで連続殺人鬼でも捕まえたような監視の量に逆に笑える

「( 声は聞こえない、古いタイプのカメラか....モノクロ映像ってところかな )」

颯がこの部屋に移動したのは自分の話をまともに警察に話してから
それは同時に此処に身を潜め紛れている同族にとっては裏切りとしての行為として見なされたのだろ

今の彼は、余りにも滑稽な姿をしている

「 ねぇ、颯。遊馬が海斗に君の息子だと言ったみたい。あの子、口が軽いね。それとも"君"を見て負けたのかな 」

ピクリと僅かに肩を揺らし反応をした颯はそのまま言葉を聞いていた
遊馬がクラスの中で脅しににた言葉を発言したことや、それを同族であり教師をしてる彼奴が相当キレたいたこと
そして海斗に俺が両親を殺したことを伝えた事すら、報告すれば颯の口元は密かに上がっている

まるでそうなる事を分かっていたように彼の表情は、何かを待ってるように楽しそうだった

「 颯、俺は新しい任務を指示されたからそっちに行くことになる....だからさ、直ぐに帰ってこれそうにないから、一つ聞いてもいいかな? 」

「 ....なんだ。今日はよく喋るじゃないか 」

カメラが有るためにどちらも動くこと無く言葉を交わす
耳だけ此方に向いてる颯へと俺は重なる二人の姿を思い浮かべ、彼等について聞いた 

「 海斗をどうするの?陽妃ちゃんは? 」

海斗は颯に本気で好意を向けている
それは前に話した時に察しれたし 
彼はきっと颯がどんなことをしていても見なかったフリをするぐらい信じるだろ
それはまた、陽妃も同じだからこそ
颯が何をしたいのか気になった

「 彼奴は強い。なんとかするだろ。陽妃にはボスがついてる 」

「 海斗を悲しませたら許さないから。それにボスは君が逃げれないと知って陽妃ちゃんを傍に置いとくんだよ 」

「 なら、御前の家でも置いとけばいいだろ 」

「  颯.... 」

彼は考えるのを止めていたと分かる
全てを投げ出すように今は自分がこれまで行った事を振り返るように考えては一人、心を痛めてるのだろ
だから今は、生きてる者への思考が間に合わないんだ

「 なぁ、海斗。俺は何故....生まれたんだ 」

「 それは俺達が試験管ベイビーである以上。答えは幹部の者しか知らないよ 」

「 ....そうか 」

何故俺達は、好きでもなく人の命を奪ってまで女王に餌を届けなければいけないのだろう
大切な者が地上にいるのに、自分達の暮らしてる場所は日に当たらない影ばかり

自由を望んで一匹、好きに動いたアリは今は自分の役目すら忘れている

颯と話を終え、トイレを終えた程度の警察官が戻ってくれば俺の一時的な交代を終えて外へと出る

今の颯は彼等には見せれないな 

「 はぁ.... 」

『 っ!? 』

「 おっと!! 」

下を向いて考え事していたせいで、隣から歩いてきた者とぶつかったらしくドンッと身体の振動が伝わると同時に、咄嗟に手を伸ばし支えていた

『 えっ? 』

「 ....!! 」

今、まさに一番会ってはならない子が其処に居たことに俺は直ぐに手を離し帽子の鍔に触れながら告げる

「 前を見ていなくてスミマセンでした。用事があるので失礼します 」

『 っ....あの! 』

さっさと立ち去ろうとすれば止められた事に脚は止まり、背を向けたまま彼女の言葉を待った

『 颯は....私のお兄ちゃんは大丈夫ですか?面会を拒否されて.... 』

大丈夫?それはどの意味を含めていってるのだろうか
命の無事を確認するものなら大丈夫、と言えるけれど精神面等を含めるとその答えは出ない

まぁ、でも....今の彼女に必要なのは安心感だろうと思い警察を気取って嘘を吐いた

「 大丈夫ですよ。もうすぐで判決も出ますから御待ち下さい。それでは.... 」

『 嘘、つくの....下手ですね 』

簡単に見抜かれた嘘、君はいつから俺の嘘を見抜くのが上手くなったのだろうか
それとも、俺が嘘をつくのが下手になったのか....それはきっとどちらもなのだろうね

目線を背後とへと戻せば陽妃は両手を顔に当て泣いていた

ぶつかった時には気付かなかったけど、その姿は普段の偽った女装ではなく

颯ほどの髪の長さにパーカーを着て、七分丈のズボンを吐いた少年の姿だった

『 お兄ちゃんが、何を隠してるのかもう、分かりません。でも、貴方が私を....ボクを避ける理由は分かります。お兄ちゃんが、大切だから.... 』

綺麗な容姿に似合った、上品なメイクも
愛らしいリップも今はつけてはいなかった

君は、颯の為に此処に来るときだけ

偽るのを止めたんだね....

『 お兄ちゃんが、大好きだからボクに見せて傷付くと知ってるんですよね!!? 』

俺はきっと君には勝てないと思う

『 !! 』

気付いた時にはその知りたがり屋の唇を奪っていた

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