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番外編

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陽妃と離れた後に起こった事件は俺達の耳にも直ぐに届いた

スクランブル交差点での出来事
けれど今回は俺達の組織が関わってない
個人的な無差別殺人事件だった為に
組織側の人間は追求もしなければ、問題解決の糸口すら放棄した

それは同時に、その場で狙われた陽妃の事には興味ないと言ってるみたいなもので、彼の事情聴取には颯すら出向かなかった

其に腹を立てた俺は組織の会議と共に訪れた颯を掴まえ問い詰めた

「 陽妃が危険な目にあったのに、君は犯人を放置するの!?3人が亡くなって、2人が重症、怪我人も多数いて.... 」

いつも人を殺す側の俺が、今回の事に首を突っ込むなんて馬鹿げた話であり
颯もまた、そう思ったのだろう

俺の言葉を聞くなり鼻で笑った

「 だからなんだ? 」

「 っ....! 」

余りにも正論で揺らぎの無い態度に言葉を失った

そう、だからなんだ、というのが正しい判断なんだ

犯人は警察の目を誤魔化し捕まってないが、それでも警察より先に行動できる組織側の者が関係無いと告げたのなら、これ以上俺達が関わる必要もない

誰が死のうが関係無い、特に組織の者が関わってないのなら其だけで十分

「 そうだけど、今回は陽妃が危なかったのに君はその犯人を放置出来るの? 」

肩辺りの服を掴んでいた手を程き、眉を寄せ問い掛けた俺に彼はそのまま背中にある壁へと凭れ腹辺りで腕を組む

「 随分と陽妃に感傷するじゃないか 」

「 それは....君の息子だからで.... 」

颯は鋭いし観察力に優れている
俺の事なんてお見通しのように琥珀色の瞳をじっと見詰めてきた後に口角を上げ視線を落とす

「 前々まで興味すら無かった御前の言葉とは思えないな。俺の息子だからとは口実だろ 」

長い睫毛を動かし此方へと視線を戻した颯の言葉に胸は高鳴り締め付けられるように傷んだ

気付いているのに放置してるような態度は、まるで俺がどう動くか監視してるようで、それでも敢えて口には出さない

「 颯だって....気になる相手いるじゃん 」

「 は? 」

まるで子供が駄々を捏ねるように、今の俺は情けなくもきっと泣きそうな表情を向けていたと思う

自分と海斗の事を棚に上げて、俺と陽妃の事には監視したりするのならそれは狡いんじゃないか

でも、そんな事を直接言えるわけもなく
彼等の関係はそれこそ俺に関係無く、俺と陽妃の事も颯には関係無い

あぁ....そうなんだ。

颯にとって俺は昔も今も、眼中に無いほど興味がない存在だと思い出す

「 俺は今まで、何を守ろうとしたんだろ.... 」

「 なにいってんだ? 」

颯を守ってきたつもりで、颯の表情をみたくて、どんな御願いも答えてきたのに
颯にとってそれは何の意味もない事なんだ

俺は簡単に交換できる捨て駒と同じなんだね

「 颯は俺が必要ないんだね。颯にとって俺は興味ないんだ.... 」

「 は?今そう言う話をしてないだろ 」

「 俺は君の事が...好きだって言うのに.... 」

颯にとって俺はなんだろうか

颯の大切な陽妃は彼にとってどんな存在なのだろうか
 
死んでもいいのか

殺ろされても気にはしないのだろうか

グルグルと考えは脳に過り、颯の言葉など耳に届いては無かった

「 がっ!!はっ!! 」

「 颯が好きなのに!君は俺に興味ないなんて!! 」

血の気の昇った頭を制御出来るわけもなく、颯の肩を掴み自らの方へと引いていればその腹へと膝で蹴り上げていた

何度も、何度も好きなのに、と声を上げて同時に蹴る俺はどんなに頭が真っ白でもその顔は殴れなかった

「 っ!ぐっ!! 」

「 君が好きなのに、君は他の人を好きになって!!何度俺が殺したか、何度も何度も嫉妬した!! 」

社長として潰してほしい?
立場を零へと戻したい?

そんなの俺がしなくても君は勝手にそうなるよう進んでると思うのに、敢えて俺に依頼するなんて質が悪すぎる

「 !?おい、No.646!!なにやってるんだ!! 」

「 そいつを引き離せ!! 」

「 煩い!俺に触らないで!!颯を俺から取らないで!! 」

「 何いってんだ、こいつ 」

全てが壊れていく音がする

血を吐き、それでも身体を起こそうとする颯に触れる同族すら殴り蹴り飛ばして

俺や颯に触れるその手が気持ち悪いほどに嫌だった

騒ぎを聞き付け数人の者で引き離されると同時に、俺の身体は床へと倒されていた

「 離して.... 」

「 少しは頭を冷やせ、No.646!! 」

「 おい、No.103大丈夫か? 」

「 颯に触らないで!!触らない....で.... 」

俺にとって颯は太陽でありいつも傍にいたい存在だった
なのに彼はいつの間にか俺の傍を離れて、誰かの為に生きている

そんなの、俺の知る颯じゃない....

押さえ付けられるままに支えられて立ち上がった颯は、一度俺を見てから何も言わずその場を離れていく

「 やだ、颯....いかないで、離れないで.... 」

嫉妬、嫉妬、嫉妬、嫉妬....

颯の傍にいて、身体に触れて、命令をするあの人が気に入らない

だから颯は逃げれないんだ....

「 No.646 」

歩いていた颯は脚を止め、

一度だけ俺の方へと顔を向けた

その瞳は、俺を写してはない程に冷めきっていた

「 ....二度目はない。そいつを牢にぶちこんでおけ 」

「「 はい!! 」」

君はいつから俺の上に立つ人になったんだろうか

俺の知らない君は、もう俺を見なくなった....

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