157 / 193
番外編
24
しおりを挟む陽妃と離れた後に起こった事件は俺達の耳にも直ぐに届いた
スクランブル交差点での出来事
けれど今回は俺達の組織が関わってない
個人的な無差別殺人事件だった為に
組織側の人間は追求もしなければ、問題解決の糸口すら放棄した
それは同時に、その場で狙われた陽妃の事には興味ないと言ってるみたいなもので、彼の事情聴取には颯すら出向かなかった
其に腹を立てた俺は組織の会議と共に訪れた颯を掴まえ問い詰めた
「 陽妃が危険な目にあったのに、君は犯人を放置するの!?3人が亡くなって、2人が重症、怪我人も多数いて.... 」
いつも人を殺す側の俺が、今回の事に首を突っ込むなんて馬鹿げた話であり
颯もまた、そう思ったのだろう
俺の言葉を聞くなり鼻で笑った
「 だからなんだ? 」
「 っ....! 」
余りにも正論で揺らぎの無い態度に言葉を失った
そう、だからなんだ、というのが正しい判断なんだ
犯人は警察の目を誤魔化し捕まってないが、それでも警察より先に行動できる組織側の者が関係無いと告げたのなら、これ以上俺達が関わる必要もない
誰が死のうが関係無い、特に組織の者が関わってないのなら其だけで十分
「 そうだけど、今回は陽妃が危なかったのに君はその犯人を放置出来るの? 」
肩辺りの服を掴んでいた手を程き、眉を寄せ問い掛けた俺に彼はそのまま背中にある壁へと凭れ腹辺りで腕を組む
「 随分と陽妃に感傷するじゃないか 」
「 それは....君の息子だからで.... 」
颯は鋭いし観察力に優れている
俺の事なんてお見通しのように琥珀色の瞳をじっと見詰めてきた後に口角を上げ視線を落とす
「 前々まで興味すら無かった御前の言葉とは思えないな。俺の息子だからとは口実だろ 」
長い睫毛を動かし此方へと視線を戻した颯の言葉に胸は高鳴り締め付けられるように傷んだ
気付いているのに放置してるような態度は、まるで俺がどう動くか監視してるようで、それでも敢えて口には出さない
「 颯だって....気になる相手いるじゃん 」
「 は? 」
まるで子供が駄々を捏ねるように、今の俺は情けなくもきっと泣きそうな表情を向けていたと思う
自分と海斗の事を棚に上げて、俺と陽妃の事には監視したりするのならそれは狡いんじゃないか
でも、そんな事を直接言えるわけもなく
彼等の関係はそれこそ俺に関係無く、俺と陽妃の事も颯には関係無い
あぁ....そうなんだ。
颯にとって俺は昔も今も、眼中に無いほど興味がない存在だと思い出す
「 俺は今まで、何を守ろうとしたんだろ.... 」
「 なにいってんだ? 」
颯を守ってきたつもりで、颯の表情をみたくて、どんな御願いも答えてきたのに
颯にとってそれは何の意味もない事なんだ
俺は簡単に交換できる捨て駒と同じなんだね
「 颯は俺が必要ないんだね。颯にとって俺は興味ないんだ.... 」
「 は?今そう言う話をしてないだろ 」
「 俺は君の事が...好きだって言うのに.... 」
颯にとって俺はなんだろうか
颯の大切な陽妃は彼にとってどんな存在なのだろうか
死んでもいいのか
殺ろされても気にはしないのだろうか
グルグルと考えは脳に過り、颯の言葉など耳に届いては無かった
「 がっ!!はっ!! 」
「 颯が好きなのに!君は俺に興味ないなんて!! 」
血の気の昇った頭を制御出来るわけもなく、颯の肩を掴み自らの方へと引いていればその腹へと膝で蹴り上げていた
何度も、何度も好きなのに、と声を上げて同時に蹴る俺はどんなに頭が真っ白でもその顔は殴れなかった
「 っ!ぐっ!! 」
「 君が好きなのに、君は他の人を好きになって!!何度俺が殺したか、何度も何度も嫉妬した!! 」
社長として潰してほしい?
立場を零へと戻したい?
そんなの俺がしなくても君は勝手にそうなるよう進んでると思うのに、敢えて俺に依頼するなんて質が悪すぎる
「 !?おい、No.646!!なにやってるんだ!! 」
「 そいつを引き離せ!! 」
「 煩い!俺に触らないで!!颯を俺から取らないで!! 」
「 何いってんだ、こいつ 」
全てが壊れていく音がする
血を吐き、それでも身体を起こそうとする颯に触れる同族すら殴り蹴り飛ばして
俺や颯に触れるその手が気持ち悪いほどに嫌だった
騒ぎを聞き付け数人の者で引き離されると同時に、俺の身体は床へと倒されていた
「 離して.... 」
「 少しは頭を冷やせ、No.646!! 」
「 おい、No.103大丈夫か? 」
「 颯に触らないで!!触らない....で.... 」
俺にとって颯は太陽でありいつも傍にいたい存在だった
なのに彼はいつの間にか俺の傍を離れて、誰かの為に生きている
そんなの、俺の知る颯じゃない....
押さえ付けられるままに支えられて立ち上がった颯は、一度俺を見てから何も言わずその場を離れていく
「 やだ、颯....いかないで、離れないで.... 」
嫉妬、嫉妬、嫉妬、嫉妬....
颯の傍にいて、身体に触れて、命令をするあの人が気に入らない
だから颯は逃げれないんだ....
「 No.646 」
歩いていた颯は脚を止め、
一度だけ俺の方へと顔を向けた
その瞳は、俺を写してはない程に冷めきっていた
「 ....二度目はない。そいつを牢にぶちこんでおけ 」
「「 はい!! 」」
君はいつから俺の上に立つ人になったんだろうか
俺の知らない君は、もう俺を見なくなった....
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる