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番外編
22
しおりを挟む元々、表情が分かりやすい奴だと思っていたが此処まで分かるとは思わなかった
「 まるで御前に春が来たみたいだな? 」
「 は?なんでだ? 」
分かりやすくうかれていた海斗に、茶化しをかけるように問い掛けてみた
俺の言葉に疑問を抱いたように緩んでいた口元は消え首を捻る
クエスチョンマークがつくような鈍感な奴だからこそ、颯さんと何があったのか探りをいれる
「 だってさ、此所2、3日気持ち悪いぐらい浮かれてるだろ?何がそんなにいいか、俺にも教えろよな 」
僅かに笑って問い掛けた俺に考え、そして伝えることを選択した海斗は答えてくれる
「 サイトで相談に乗ってくれる優しい人と出逢ったんだよ....その人と食事する約束もしたし 」
「 食事ねぇ。出逢っていいのかよ? 」
「 えっ? 」
逆に駄目なのだろうかとばかりに首を捻ったまま硬直する海斗に俺は拓海さんの表情を思い出す
視界の端にいる陽妃の姿や笑った黒澤さんの顔を思い出し、そして最後に颯さんの悲しむ表情が浮かべば海斗には悪いが
颯さんとの接近を控えて欲しいとも思った
「 相手は明らかに成人だろ?御前は高校生。その立場の差ぐらい考えろよ 」
「 ....そのぐらいは知ってるさ 」
「 いーや、知ってないな 」
「 なんでだよ 」
食い下がらない海斗の頑固さに、普段なら臆病になるのに颯さんの事なら何一つ下がらない様子にグツグツと苛立ちが募る
言ってやりたい、海斗が好きになった相手は手の届かない存在だと
そして好きになれば悲しむ相手だと言うことも....
苛立ちを誤魔化すよう机に頬杖を付き、ふてくしたように告げる俺の言葉は端から聞けば、自分の好きなものを取られそうな子供のよう
いや、実際にはそうか....
海斗が颯さんと仲良くなれば俺は、お兄さんとでも呼ばないといけない
そんなのは御免だ
「 だって、御前....優しくされたら好きになりそうじゃん。相手がどんな奴かは知らねぇけど、高校生が社会人好きになるのは止めとけ。負担するのは向こうだぞ 」
「 なっ、男相手に好きになるかよ!それに俺は気になる女性いるし 」
「 ....どっちでもいいけど。御前って他人には無感情に見えて、好意持った相手には尽くしそうだから心配だわ。遊ばれて捨てられなければいいな 」
不機嫌になる様子は直ぐに分かるけれど、俺もまた引くことは出来なかった
だが、海斗は直ぐに血の気は引きそれでも今メッセージしてる颯さんとの縁を切る気はないよう
誰かの恋愛なんて首を突っ込みたくはないが、颯さんが絡んでるのなら話しは別だ
「( 恋愛一つで人は此処まで変わるんっすね.... )」
試合の時でも然程気持ちの変化は少なく、只プレッシャーに弱いと言う点だけ退ければ物静かで真面目な男なのに、颯さんが絡めば感情的にコロコロと表情を変える
拓海さんもそうだが、俺の知る者達は随分と感情豊かだと思う
組織へと戻り手合わせをする訓練所にて
他の捨て駒と共に手合わせをしていればざわついた周りの事に気付き、入り口へと視線を向けた
「 久々に此処に来た気がする 」
「「 お疲れ様です! 」」
「 ふぁっ!! 」
仕事終わりに時々顔を覗かせる颯さんの姿に、彼等は挨拶をすればそれに答えてから俺へと視線をやった
海斗や拓海さんの事を忘れて、目が合う前に既に駆け寄っていた俺は犬のように尾を振り目の前で立ち止まり腕の服へと掴む
「 颯さん!颯さん! 」
「 分かった、分かった。落ち着け 」
笑って俺の頭を撫でてくる颯さんの手の優しさに心地よく、許可を貰う前にぎゅっと抱き締め、直ぐに離れてから手を離す
「 今日はどうしたんですか? 」
「 御前を探していたんだ。丁度いい、来い 」
「 はい! 」
何かの任務だろうか、それとも訓練だろうか
久々に会えた事に嬉しくなり思考はすっかり颯さんで染まれば彼の後ろを着いていき訓練所を後にした
長い廊下を歩き進め、エレベーターを使いとある階へと行けば余り踏み入らない幹部の使うエリアでありその先にある一つの部屋の前へと来れば、颯さんは指紋認証と眼球を翳し扉を開いた
「 此処に移動してから部屋に来るのは初めてだったな?俺の部屋だ 」
連れてこられたのは、幹部になった颯さんの与えられている部屋だ
いつも俺の部屋の方に遊びに来てくれるから気にしなかったが颯さんもこの建物の中で部屋を持ってる事を初めて知る
新鮮なその部屋へと脚を踏み入れ、後ろで扉が閉まるのを見れば辺りを見渡す
けれど、俺の部屋より殆どなにもなかった
「 シンプルっすね 」
「 そりゃ、此処には余り来ないからな。なぁ、遊馬 」
「 なんっか?っ....?! 」
突然名を呼ばれ、颯さんの傍だから油断して不意にも手首を掴まれた時には引き寄せられシングルサイズのベッドへと押し倒されていた
余りの出来事に頭は真っ白になり、同時に目の前に被さる颯さんの表情に意味もわからず耳は赤くなる
「 俺の御願いを聞いてくれないか? 」
その言葉は、俺の隠していた本能を擽るには十分なほどで
下心を考えた俺の緊張感はピークに達していた
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