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番外編
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しおりを挟む組織中でも、特に感情豊かで人への恐怖心があり同時に興味本位を持っていた颯は、高校卒業してから何度か恋人と言う存在が出来ていたことを知っている
隠すのが下手だからこそ、恋人が出来た時には嬉しそうに、そしていつもより明るい雰囲気を纏い俺の前に現れる
「 颯、楽しそうだね。なにかあった? 」
射的を撃ちながら笑みを浮かべてる颯の横に立ち、手元にある拳銃を弄りながら問えば彼は俺を見た後にほんのり頬を染めて答える
言わなくても分かるけど、敢えて聞くのは一つのコミュニケーションでもあり
任務以外で話が出来るタイミングでもあった
「 内緒な? 」
「 うん、なになに? 」
「 あんな、彼女が出来たんだ。一つ年下の一般人だけど、優しくて可愛くてさ 」
俺が颯を好きでも、それは言えるわけもなく
颯は他の誰かを好きになり、その好きな人について楽しそうに教えてくれる
言われているのは俺ではないのに、俺を自慢されてるような気がして、颯が幸せだと感じてる時の思いが俺の幸せだと思うのも早かった
俺にとって颯は照らす太陽だからこそ、彼の笑みが心の支えでもある
「 へぇ、でもさ。前にも恋人いなかったけ?ほんの2ヶ月前 」
「 あぁ....いたな.... 」
何度か恋人がいたことを知っている
ストーカーにはなりたくないから、顔までは知らないしそこまで興味はなくなっていた
だからこそ今回、何となく前の恋人について聞けばそれまで楽しそうに語っていた颯の瞳から光は消え、自棄に耳に残る拳銃の安全装置が外れる音と的へと向け放つ銃声が心に響く
「 別れた.... 」
「 えっ、颯を振る人なんているの? 」
「 ....振るのは俺の方だがな 」
「 どういうこと? 」
暗殺以外なら冷血な部分はなく、欠点と言えば暴食の部分だけな気がする颯を振る人なんていることに烏滸がましくて、俺なら絶対に振らないと思っていた
尚更、無神経に踏み込む俺に颯は気にしたのか此方を睨み告げる
「 別れた奴のことなんていいだろ。俺は今の恋人を大切にしてるんだ 」
使っていた銃をその場に置き、俺の横を素通りして立ち去る颯の言葉はまるで何かから守ろうと必死な子供のようで
その時の俺には直ぐに理解出来なかった
別れたのは、言葉ではなく
生きてるものと死んだものに" 分かれた "という意味を知るのはこの日からほんの直ぐの事だった
「 No.103に彼女出来たって、見たか?すげー可愛かった! 」
「 見た見た、街でデートっぽくしてるの 」
颯は一目が多いところに敢えて行くのは、きっとその方が狙われる率が低いことを知っている
大勢の前で殺すには目立つからこそ、颯は彼女が夜に出掛けることを嫌い、何かあれば迎えにいくということもしていたらしい
それは逆に俺達の目につくほどに過保護だからこそ、楽しそうにあの人は話の中へとやって来ていた
「 マネージャーの私に内緒で付き合ってる子がいるんですね 」
「 あっ、ボス。おはようございます! 」
「「 おはようございます 」」
「 おはよう、その話。詳しく聞かせてくれるかい? 」
「( 聞かなくても知ってるくせに。態とらしい )」
飲んでいた紙パックをゴミ箱に捨て、彼等は気にもせずペラペラと颯と彼女の話をするのだろう
そんな話なんて聞きたくなくて、その場から離れて通路を歩いていれば見掛けた颯へと片手を振り近付こうとすれば、彼の方が先に俺を見て歩く速度を上げ近づいてきた
「 えっ?颯?? 」
「 ちょっと来い 」
「 ふぇ、襲うの?やった 」
「 ちげぇよ! 」
馬鹿言えと、言われることに嬉しくて軽く笑って片手を掴まれ引かれるままに颯の部屋へと押し込まれ、彼は通路を確認し
扉を閉めてから俺の前へと来た
シンプルで、最初に与えられた物以外無いような颯の部屋に久々に来たと思いながら彼へと向けば、颯は俺の両肩を掴み真剣に見詰めてきた
「 あ、やっぱりチューするの? 」
「 ちげぇよ、真剣に言うから聞いてくれ 」
「 ん?なに?エッチする? 」
「 ったく、あんな.... 」
俺はきっとその真剣に告げられる言葉を聞きたく無かったんだと思う
だから分かっていても誤魔化そうとしていたのに、颯の泣きそうな表情に言葉は詰まった
狡いと思う....俺が君を好きだと知ってるのに御願いをするんだ
「 ....ある人の暗殺依頼が来た。俺はその依頼をしたくねぇが、しなきゃいけない.... 」
「 うん、それで? 」
「 ....その日、御前も来てくれないか? 」
「 ...なんで俺も暗殺現場に居なきゃいけないの 」
颯が誰かを殺す時に、俺は何度も立ち会った
けれど今回は何故か、共にいたくないと本能が言ってたのだけど颯の御願いは断れないのが惚れた弱味だ
「 俺はきっと、失敗する。だから、俺がへました時は御前が殺してくれ 」
「 ....君の尻を拭けって?いいけど、出来る限り手は出さないからね 」
「 あぁ、それでいい.... 」
颯は殺しを失敗する訳がない
けれど、相手を殺すのではなく
この時の颯は違う事をしてしまいそうな事を止めて欲しい人が必要だったのだと、その日に知った
彼は、自らの命を絶ちたかったんだ
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