すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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番外編

05

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映画の内容は
2150年を舞台にしている
今の御時世から約130年後
人工が減り軍人すら他国より劣っていると判断したドイツ政府は国家機密として軍人の変わりとなる生物兵器を造り出した

それは私情を挟む人よりも忠実であり感情はなく、任務以外の優先順位のない

軍犬ぐんけん "を造り出した

元々軍用犬として鍛えられたシェパードやドーベルマンの遺伝子と組み換えられ造り出された
" 軍犬 "は必要に応じて人の姿にもなれ
獣特有の身体能力や嗅覚、聴覚もよく
それにて遺伝子組み換えの際に治癒能力も高められ傷の治りの早い軍人となる

黒一色の軍服と金色の瞳を持つ、
ナンバー11096....クロと言う渾名の軍犬が主人公らしく
軍犬には其々首輪がつき、その首輪には識別判断のNo.と情報のID、そして位置を知るためのGPSが付けられいる

クロは軍人で言えば指揮官の立場であり、他の軍犬を指示をする方だが、ある日彼に任務が下る

それは研究者が機密に造り出した実験体の護衛であり、そこにいた目には黒い目隠しをされ手首や足首には枷に繋がった鎖のついた少女の姿がある

その少女との出会いが命令しか聞かず、
殺す事さえなにも思わない只の生物兵器の心を動かしていく....

と言った明らかにB級映画なのだが、
アクションの多さの流れる血や犬や人がバタバタと倒れていくのは
陽妃には刺激が強いのだろ、繋いだ手に時より驚いた振動が伝わる

" 只一言  Tötenころせ と命令されたのなら、
浸しい友人でも同胞でも殺すことは躊躇わない
それが" 軍犬 "の掟

涙は見せず尾は振らず
軍犬としての誇りとプライドを胸に
ターゲットを殺す

それでいい筈だった

それなのに何故
命令を無視してまで
守りたい と 傍にいたい と
何故....願うのだろうか

これが" 人 "の 心か.... "

まるでどっかの誰かさんの事を言ってるような内容に、何となく観るのも嫌になりそうな事に目線は自然と陽妃の方へと行く

今日、出会ったときに男の子だとは一目で分からないほど可愛く着飾って、周りに通り過ぎる男達の視線なんてきっと気にしてはない

俺を見るなり嬉しそうに単純に笑顔を向けるその表情に胸は締め付けられるほど苦しくなる

映画の台詞や内容がまるで俺の事を言うように胸へと刺さる

" 俺が守る....信じてくれ  "

" クロ!! "

元々実験体であり、研究所から逃げるためとは言えど連れ出したクロは少女を奪う為に情報を得た他国の刺客から狙われ戦闘を繰り返す

傷だらけになり、回復すら間に合わない身体で必死に最初の命令である
実験体少女を守れ  "と言う命令に
従っているだけ
けれど、其が次第に少女を守りたいと単純な思いに代わり
元々実験体を研究してた政府から返せ
と言われてもクロは返すことは出来なかった

好きになったんだ

感情を無くすよう造り出された生物兵器に唯一少女という存在は大きくなり守りたい、傍にいたいと言う思いが強くなった

「 そんな.... 」

フィクションの映画に感情移入する感受性が強い陽妃は実験体だった少女が殺された事で、涙を流したクロに影響され泣いていた

もし、俺がこの軍犬の立場であり君を殺すことになっても少女のように
" クロになら殺されたもいいわ "と
微笑んで手を差し伸ばすのだろうか

それはまるで颯のようで、そうなれば陽妃は颯そのものだろうね

この映画はクロが感情を得てから、少女が死んだことで二章へと繋がるみたい

クロの復習か、それとも新たな出会いがあるのかは分からないけれどきっと俺が二作目を見ることは無いだろう

「( 海くんから、連絡ないけどって.... )ごめん、陽ちゃん。ちょっとトイレ行ってくるね 」

『 あ、はい。どうぞ 』

映画を観終えて、外へと出るときに電源をつけてすぐ海斗から電話がありトイレへと向かった

内容はどうするんだ!?とばかりの焦ってることに少し面白くなる

なんせ、俺として会ってることになるんだからね

電話を早々に終えてから陽妃を探せばグッズ売り場へといた
見ているのは金色の瞳をしたドーベルマンのぬいぐるみで、欲しいのだろうね
横へと行くなり問い掛ける

「 デートの記念に買ってあげる、その大きさでいい?大きいのあるよ 」

『 えっ?あ....この子がいいです、前に柴犬取って貰って....丁度このサイズなんです 』

そう言えば前に颯に似てるからと柴犬を取ってたのを思い出した、嬉しそうに抱える陽妃を見て態とらしく告げようと思った

次はいったい誰をイメージしたのかと....

けれどその言葉は先に陽妃から答えてくれた

『 クロって、拓斗さんみたいでした。拓斗さんドーベルマンみたいなイメージあります。最初はゴールデンレトリバーみたいな感じしたけど....今日の黒一色の服とか 』

一瞬、俺の心が読まれたのかと驚いた
それにクロのように血を浴びてるようなドーベルマンみたいな犬にかと思ったけれど陽妃は単純に服だと答えたなら自然と笑っていた

「 俺はドーベルマンみたいなワンコじゃないよ。どちらかと言えば狼とか 」

嫉妬の狼、そんな事を思いながらもう一つ敵側として現れた狼のぬいぐるみを持てば陽妃はまるであの少女のように微笑んだ

『 いえ、拓斗さんはドーベルマンですよ。だって、ドーベルマン可愛いじゃないですか 』

「 ....君には敵わないな、プレゼントするの無しね。買わないで 」 

『 えっ?なんでですか!? 』

「 ぬいぐるみに" 嫉妬 "するから 」

『 えぇぇ 』

もし俺をドーベルマンと言うのなら、その腕に抱くぬいぐるみにすら嫉妬する

「( らしくない.... )」

もしクロも少女の傍にいて任務の事が頭から薄れてもう少し傍にいたいと思ったのなら、今の俺のように" 自分らしくない "と思ったのだろうか

今更、あのB級映画に感情移入してしまうとはそれこそらしくないね

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