すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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番外編

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痛む身体、意識の遠退いていた思考を起こしてゆっくりと目を覚ませば真っ白な天井だった

「 えっ.... 」

いったい何が、起こったのかさっぱり分からなくてはっと上半身を起き上がらせ首元に触れ

「 ネックレスが、ないっ....っ、いっ.... 」

「 まだ起き上がらない方がいいですよ? 」

聞こえてきた優しげな声と、彼女の服装を見れば看護師のナースウェアを着ていた

此処は病院なのかと気付き、身体に巻かれた包帯や繋がってる点滴に目を見開き問い掛けた

「 おと、いや....誰が俺を運んだんですか!?綺麗な髪を.... 」

「 安心して此所は同族が管理する病院。103が貴方を連れてきました 」

「 103....は、いまどこに? 」

「 ほんのついさっき帰りましたよ、ってその身体で動いたらダメですよ! 」

同族が管理する病院ならきっと、俺が生まれた場所の病院だと分かった

お父さん、どうやって俺を助けてくれたのか本当に金を払ったのか色々気になって体が痛い事を忘れて点滴を抜き去ってから裸足で追い掛けた

「 颯さん、りくっ.... 」

出口だろうかと階段をかけ下りていれば聞こえてきた赤子の泣き声に脚を止めた

其処には颯さんが立っていたから

「 っ..... 」

謝りたくて、御礼を言いたくてそれでも何も言えず立ち止まってしまった俺に彼はガラスに触れてから優しく告げた

「 陽妃も御前も....小さくて保育器に入ってたんだ。母は違えど我が子には違いない....俺は、一人しか育てる事も出来ないと思ってた....だから、一人だけ....でも、御前を忘れた日はない.... 」

初めて陽妃さんを見た日、隣にいた俺にも気付いていたけれど一人だけで精一杯だったと教えてくれた

「 まぁ、その次の年にも俺の遺伝子を持つ我が子は居たけどな....でも、俺の遺伝子の子供は弱いらしく3歳までに殆どは何かしらの病気で死んだ....14歳過ぎていきた奴等は俺の目の前で殺された....同族にだ 」

「 !!なん、で.... 」

何故、子供が死ぬのかと驚いた俺に颯さんは壁に拳を当て肩を振るわせる

「 俺が....任務を失敗したんだ....感染病を打たれた子達は元々身体が弱いのに衰弱していった、俺は父として責任もって殺せと命令されたが出来なかった....自分の任務の失敗で感染したのに、我が子を殺せるわけないだろ......だから俺は、他の子を育てるのを放棄して、御前と陽妃を育てた.... 」

一人で全て背負ってきたんだと知った
でもそれはきっと拓海さんや、彼等と同じ同世代の同族が上司から言われた子育ての任務は余りにも無惨で過酷なのだろ

何故、強い子供を作らなきゃいけないのか
何故、父は我が子を殺さなければいけないのか

捨て駒と言われてた俺達の世代の子は
泣きながら殺す父達によって互いを嫌っていたんだ

捨て駒じゃなかった、そうしなきゃいけないのが彼等の任務なんだ....

「 御前は我が子の中で一番身体も強い....だから辛くあたり任務で死んでほしくなかった....陽妃は身体も弱くメンタル面も弱い....だが御前には荷が重すぎたな.... 」

「 そんな事ない!俺は陽妃さんが可愛いし、一目見た時から守って上げたいと思った!守るの楽しかった、荷なんて重くない....俺は、任務に失敗した.... 」

捕まって、父さんは来ないと思った
だけど助けてくれて話もしてくれた
そんな彼に俺が嫌うわけがない

そんな事を言わないで、とゆっくりと近づいた俺に彼はガラスに凭れて赤子を見ながら小さく笑みを浮かべた

「 流石、お兄ちゃんだな....本能的に、分かるか.... 」

「 颯さんが、お父さんだと初めて見た時から気付いてた.... 」

本能的に分かったんだ、この人は俺の父親だと
家族が居ないと言われ続けた俺に優しく手を伸ばして抱き上げてくれた彼を知ってる

「 こんな、父に幻滅しないか?退院すればまた陽妃を守れって命令するぞ? 」

「 ....上等っす。どんな任務も貴方から言われたなら答える....俺は貴方の愛犬子供だから 」

そっと片手を伸ばす颯さんの手に触れる事なく、身体へと抱き着けば彼は優しく包み込むように抱き締めてくれた

「 遊馬....無事でよかった....本当、陽妃を守ってくれてありがとう 」

「 お兄ちゃんっすか....守るよ 」

きっともう少しで俺の方が身長も越すし体格もよくなると思う

貴方の大きかった胸板はいつの間にか小さく思えるようになったのだろ

「 ....Jag älskar dig.愛してる Mitt kära barn私の愛する子 」

優しく囁いた父親に俺は涙を流して強く強く抱き締めた

「 俺も、っす.... 」

立場の関係で素性を証せない
けれど、内緒の関係でも絆はきっと強いんだと思う

「 ところでどうやって助けてくれたんですか? 」

「 陽妃が同級生が拐われたと言ってきたから、拓海やら複数の下僕引き連れて全員でマシンガン持って突撃した。ものの5秒で終わったぞ 」

「 それって、俺に流れ弾が当たる可能性は....? 」

「 ........ 」

「 待って!!マシンガンっすね!?俺の安否確認してから撃ったんっすよ!?こっち見て!! 」

わーわー騒ぐ俺に、この人は子供っぽく口先を尖らせて告げた

「 正直もう死んでるかも思ってぶちギレてたから全員の身体をミンチにしてから生きてる事を知った....あ、一人逃げたか.... 」

「 ミンチって....ってことは俺、血を被って.... 」

「 あ、おい!気絶すんなよ!血に慣れろ!血に! 」

無茶な、なんて思ったけれどぶちギレてた....と言ってくれた颯さんに本当に嬉しくなった

「 そうそう、これ 」

「 えっ....これって!壊れたんじゃ 」

気絶しかけた俺の首にかけられたネックレスを見れば綺麗なその数字は増えていた、陽妃の数字も刻まれている

「 そんなもん幾らでも作れるからな。即作った 」

「 わ!!ありがとう!! 」

「 御前はいいから寝てさっさと退院しろ!! 」

俺の1日は朝起きて訓練する、直ぐに学校に行って陽妃の笑顔を見て、そして帰ってから任務を確認し無ければ訓練

時々、遊びに来る上司に任務よりきつい訓練をさせられる

「 後200発!!! 」

「 はぁっ、はい!! 」

でも其が終われば一緒に風呂に入る
彼が社長になって忙しいくなって寝ることはなくなったけど、俺も高校生になったし平気なんだよな....

「 うぅ、ぅ....颯先輩と距離が離れてる 」

「 情緒不安定なの!?それとも実は実は凄く甘えん坊なの!? 」

やっぱり颯さんの傍にいたいのは愛犬心ってやつっすよ


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