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番外編
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しおりを挟む途中から寝てるっぽいけどなんとか俺の部屋まで来た彼はそそくさ眠り俺はその寝顔を見て布団をかけていれば、告げられる
「 あす、ま....おいで.... 」
虚ろの瞳は只優しげに片腕を広げ入ってくることを許可してくれれば、少し照れ臭くなってきた年頃の俺でも素直にその腕の中へと入る
「 ....ん、 」
もう子供じゃないと言いたいくて、恥ずかしくてでも嫌じゃないことに複雑のまま誤魔化すように顔を埋めれば頭をそっと撫でられる
その心地は小さい頃から変わらない
「 起きたらいない....いつものこと 」
そして、起きたときには居ないと知ってるからこそもう寂しくはない
実戦は颯さんが持ってくる簡単なものばかり
上司の御使いやら、武器の手入れとか
まだ人殺しすらやったことない俺はもう小学生5年生になっていた
「 よしっ、やるか 」
手首にサポーターをつけ特殊な機械の前に立ち
深く息を吐き、黒い布を目につけるよう結べば片手を上げる
操作する人物に合図を送れば機械は作動し時速100㎞越えて野球ボールは飛んで来る
それを避けては、当てれる部分は殴ったり蹴ったりして弾き返し次から次へと出てくるそんの一瞬の音と角度を計算し回し蹴りを擦れば頑丈なサポーター着けた爪先に辺り弾き返す
「 遊馬、此所に居たのか。ちょっと来い 」
「 颯先輩!いっ、あだ!い"っ!! 」
足音で気付いた為に喜んで振り返れば頭やら背中にぶつかってくる球に前のめりで倒れてから、直ぐに起き上がり走り、避けてから彼の前へと立つ
「 お疲れ様です!今日はなんの訓練ですか?任務ですか?それとも....お風呂? 」
「 嬉しいのは分かった。少し落ち着け 」
まるでブンブンっと尾を振る犬のようにずいずいと顔を近づけ言葉を待つ俺に、彼は片手で停止させ俺も静かになる
「 今日は任務だ。其もかなり長期の任務を伝える 」
「 なんですか? 」
長期の任務、それは難しいのだろうかと疑問になれば歩き出した彼に着いていく
その訓練場から出て、通路にて再度向き合えば真剣に告げた
「 御前を飼った理由は、俺の陽妃を守って欲しいからだ。中学上がるときから高校卒業まで学校内で護衛しててくれ 」
「 えっ?俺ってそんなために飼われたんですか? 」
そんな為、とは言ってはいけないけど衝撃的だった
だって、同じ試験管ベイビーの子供であり元々は俺と同じ場所で生きて生活する筈だった子の護衛をしろって、そんなバカな話が有るのかと初めてきっと反抗した
「 ボディーガードっても分かりやすくではなく見守ってくれるだけでいい。学校内で虐められていたら助けてやってくれ 」
「 なっ....っ 」
陽妃さんには甘いと思っていた
可愛いからと甘やかしてたのは分かる
けれど俺は血を吐くほどの努力もしたし沢山頑張って来たのに、甘やかせて育てた子供の面倒を俺が見ろって事に腹が立った
「 颯さんが見ればいいじゃないですか!貴方の子供っすよね!?俺は別の任務なら命張れるけど....ボディーガードなんて.... 」
俺が望んだ任務じゃない
強くなって颯さん達が怪我しなくてもフォローできるように強くなろうとした
なのに、なんで....
震える声と反抗的な態度に、彼は溜め息を吐いて俺の横を通り過ぎた
「 っ! 」
「 もういい。御前のような者を時間を使ったのが間違いだった。別の奴に頼む 」
幻滅して、捨てられる....
そう察しられるのは早くて、嫌だとかそんな我儘よりも彼に捨てられるのが何よりも怖かった
「 やだ、俺を捨てないで....任務、受けるから、背を向けないで.... 」
気付いた時にはその背に抱きついて泣いていた
どんなに寂しくても泣かなかったのに、
どんなに訓練が辛くても泣かなかったのに
背を向けられて幻滅された事に泣いていた
「 やだよ、おとうさん....言うこと聞くから.... 」
俺にとって育ててくれた父親であり飼い主であり、訓練してくれた上司だ
そんな人に捨てられたら俺はそれこそどうやって生きて行けばいいのか分からなくなる
すがり付いて泣いて、振り向いてほしくて必死の俺は情けなく写ってるだろう
それでもいいから....いかないで....
泣いてグズグズの顔をスーツに擦り付けていれば、颯さんは溜め息を吐いて振り返った
離れた手に不安になるも、直ぐに顔は両手で包まれ上げられていた
「 おと.... 」
「 御前は最初から俺の言うことだけ聞けばいいんだ。分かったか? 」
「 ....はいっ 」
「 いい子だ、遊馬 」
俺には颯さんしかいない
顔を上げられたまま目元へと口付けられる事にただ素直に受け入れた
中学受験、颯さんに言われた場所を合格しそして俺は数年振りに陽妃さんを見た
「( えっ、可愛い.... )」
何故、颯さんが学校でも守ってほしいのか分かるほどに可愛くなっていた
写真で見せてもらったより数倍可愛いからこそこの任務、苦に思わなかった
1、ボディーガードと気付かれるな
2、学年平均は中よりのちょっと上辺り
3、そして目立つな
白髪の髪から黒髪へと染めた俺はちょっとチャラい男子ぐらいのポジションにいた
陽妃さんは女子達と居るから、俺は幼稚園の頃に知ってる海斗の傍に居ることが多くてそれが自然になっていた
「 陽妃さん可愛いよなぁ~ 」
「 そうか?まぁ....兄に似てるよな 」
そうか、海斗は颯さんの子供が陽妃とは知らないのか....
でもそれを教えることは俺にとってはタブーだから軽く笑った
「 マジな!お兄さんもめっちゃ格好いい 」
「 ?どちらかと言えば綺麗とかの言葉が似合うんじゃないか?よく知らんが.... 」
俺はこの秘密を誰にも言うことは出来ない
知ってるのは俺と颯さんと勘のいい拓海さん、後は試験管ベイビーを作ってる上司ぐらいだろ
「 そう言えば御前、そのネックレスになんて書かれてるんだよ 」
「 あーこれ?お父さんから貰ったんだよ。" 我が愛しい子 "って書かれてる 」
そうっすよね、颯さん
「 すげー気障な父親だな 」
「 確かに、はずいわ 」
それでも俺にとっては大切な宝物なんっすよ
これだけはどんな事があっても取られたくなかった....
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