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番外編

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自然と颯の傍に居ることが多くなった

元々、ペアを組んで組手やら御互いの駄目な部分をカバーし合って生活するから

同族の管理する中学へと行く頃には俺と颯は寮で同じ部屋を使い、共同生活していた

「 それ塩だからね?砂糖じゃないよ 」

「 ん?....入れ物同じにすんなよ 」

「 ふふっ、お店に文句言ってもダメだよ 」

休みの日は一緒にカフェに行き、颯の好きな料理を食べては俺をそれを見ながらいつも持ってる無地のノートに颯の様子を絵に書く

「 また絵を描いてるだろ。外でも描くなんて、どんだけ好きなんだ 」

「 俺は君の顔が好きなんだよ。ねぇ、君は俺がどんな髪色で目の色か分かる? 」

絵を描きながら告げた俺に、颯は砂糖を入れ溶かした紅茶を一口飲み琥珀色の瞳を此方へと向けてきた

雰囲気で大体の容姿が分かると言う彼は小さく笑った

「 御前は出逢ったときも今も珊瑚のように黄色っぽくて海のような瞳だろうなと思ってる。まぁ、実際そうだろ?女子が王子様~なんて騒いでるし 」

「 ....君にとって俺は王子様に見える? 」

「 王子様と言うより下僕だな 」

「 なにそれ~ 」

颯にとって俺はいつでも海のような人らしい
常に波のように僅かに音を立てて傍にいて、広い心を持ち落ち着いてると
その反面、一度嵐のように大荒れになれば面倒なやつだと
本当、その通りだと思えると笑える

「 ふはっ、君にとって俺は王子様じゃないのか 」

「 胡散臭く笑う御前が嫌いだわ 」

「 君の前だとちゃんと笑ってるよ? 」

「 ....御前だけじゃない。人は仮面をつけた笑みを貼り付けてるから嫌いだ 」

見えない颯にとって、人の視線は嘲笑ったように笑ってるように見えるなんて寂しいね
俺は確かに冷血だとか言われるけど彼の前だと素直に笑えてる気がした

そんな俺は彼に惚れている

それを、彼は知らないしきっとパートナーであることも仕方無く受け入れてるようで俺には興味ない

そんな頃かな中学生に入り健康診断の内容が変わったのは....

呼ばれた男女は、同族が管理する病院へとやって来て別々の診療室へと行く

呼ばれた人数はクラスメートより遥かに少なくて、俺と颯は偶々そこにいるような気もしてた

「 君達、陰毛は生えてるかい? 」

「 12の頃から....少しずつ 」

「 俺もだな 」

「 ならいい 」

いい?何がいいんだろ?と颯と顔を見合わせれば、先に呼ばれたのは俺の方だった

「 646、君からおいで 」

「 はい。行ってくるね 」

「 行ってら 」

ひらっと手を振った颯はベンチに座って待てば、俺は医者に似た研究者っぽい人間と共に部屋の更に奥へと行った

其処にいた女性に驚き、一歩足を下げれば後ろの扉は閉まり数人の医師は顔を見せることなく特殊なマスクをつけていた

明らかに只の健康診断とは違うことは分かる

「 今から実技訓練を行う 」

「 実技、訓練? 」

「 其処にいる女の中に二度、深く射精しろ。此は任務だ 」

セックスなんて体験したこともなかった
そんな事すら考えたこともなくて、只気を失って股を開かれてる女性は俺より年上だけどまだ若い20代ぐらい

「 安心しろ。その女も同族だ 」

同族、つまり孕む為に選ばれた女性だと分かった
もし今日一緒に来た女子達が将来こうなると考えるならこの大人達は一体何をしたいのか悩む

今回は孕む為ではなく、射精する練習だとするなら尚更質が悪い

だが、きっとこの女の人は俺の前にも相手したんだと分かる

「 射精しなかったら、不能と見なす 」

「 ....任務なら分かりました 」

自ら促して射精するとはまた別で、制服の手首のボタンとシャツを緩め、ズボンを下げてから指示されるままに行動した

また、颯に人形だとか言われるかも知れないけど
俺は任務と言われ、指示をされなければきっと勃起するのも射精することも出来ない身体なんだ

「 っ、 」

「 もっと腰を振って深く入れろ 」

初めての射精は、沢山の人に見られたまま行われた生身の人間相手による行為だった

気持ちいいとか、そんなこと関係無く不能だと思われた瞬間殺されても可笑しくない殺意に、只言われるがまま動いた

「 合格だ。次の者の準備をするから服を整え出ろ。拭くものなら其処にある 」

使った物を拭き去って服を整えてから颯の元へと向かった

一瞬、今の俺が近付くのは嫌だったが待ってるのが疲れて眠ってる颯を起こす必要があったからこそ頬へと触れた

「 103、起きて 」

「 ん.... 」

琥珀色の瞳はゆっくりと瞼を開け、俺の目を見れば小さく笑った

「 終わった?なげぇよ 」

「 ごめん、大変な検査だけど頑張ってね 」

「 面倒な.... 」

「 うん、そうだね 」

そう、面倒でとても長かった

けれどそれをまた彼もやるのかと思うと
止めようとしまった俺は、無駄な感情を向けてるからこそ嫉妬した

「( 103の精子....っ.... )」

あの女には何一つ、罪は無いのだけど 
それでも颯から流れるものが他の者に行くなんて嫌で嫌で仕方無くて、待ってる間は苛ついてた

苛つくなんて感情は無くしてたつもりなのに何故かむしゃくしゃした

爪を噛み、時間を潰す俺は考えてる事はずっとずっと颯が行為をしてる映像だけだ

狡い、狡い、狡い....

颯の知らない顔を誰か見てるのが気に入らない....

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