上 下
99 / 193
番外編

17

しおりを挟む

お兄ちゃんの事を考えていれば眠れなくなって、いつの間にか朝になっていた

夢だったらいいのに、そう願いながら恐る恐る一階へと降りる

鼻に付く朝食の香りとお弁当にいれたと思われるお肉の香りに、いつものようにお兄ちゃんがお弁当を作ってくれたんだと思った

「 おはよう、陽。晩御飯食べなかったんだな?調子悪い? 」

『 あ、平気だよ....残りを晩御飯に食べるから置いといてね 』

「 そうか?まぁ、分かった 」

昨日の晩御飯、そう言えば食べてなかった
御風呂も入ってないからメイクもボロボロだし、残飯だってきっと見たと思う
だけどお兄ちゃんは普段と変わらない態度で告げてくるからそれがちょっと怖いと思ってしまう

『 御風呂、入ってくるね。疲れて寝ちゃって....時間だったら先に行ってて? 』

その場を逃げるように風呂場へと向かった
脱衣場のカゴにまたあれが有るんじゃ無いかと怖かったけれど、服ともに無かった

ウィッグを外し、服を脱いでから風呂場に入りシャワーを浴びる

お兄ちゃんが持ってた銃がもし、弾丸も入ってる殺傷能力のあるものならば....
いったい誰に、いつ使ってるのか分からない

猟師だと聞いたことも警察官だと聞いた事もない、何処かの社長としか聞いてないからこそ
お兄ちゃんの素が分からない....

『 ずっと一緒にいるのに、お兄ちゃんの知ってることは....名前と元雑誌モデルで、今は社長だってこと....家族なのにな.... 』

何故、今まで深く考えようとしなかったのか
其すら分からないと頭を悩ませて、さっさとメイクを落とし身体と頭を洗えば風呂を出た

「 仕事行ってくる。今日は帰るのは遅くなると思うから先に夕食の残りで悪いが食べててな 」

『 あっ、うん!行ってらっしゃい 』

「 行ってくる 」

お兄ちゃんが背後に立つときに気配とか足音とか全く無い気がする
だから声を掛けられた時に驚いて、振り返ってしまうんだ

お兄ちゃんが本当に其処にいるのか確認するように

精一杯に笑えば、お兄ちゃんは優しげに微笑み仕事へと向かった

離れた場所から秘書さんとお兄ちゃんの声が聞こえたことに、もうそんな時間なんだと思いながらメイクをし終えてリビングへと行く

相変わらず美味しそうな朝御飯を、一人手を合わせて食べる

『 あ、拓斗さんだ.... 』

少し気が沈んでた私にとって朝一に拓斗さんからのメッセージの続きを送られてくるのは嬉しい

次は食事に行こう、その約束通りに彼はメッセージをくれた

" 10月5日 晩御飯一緒に食べない? "

ほんの一週間後にくれたお誘い
私はその日は学校だけど、晩御飯なら大丈夫だと思い返事を返す

お兄ちゃんには晩御飯はいらないと伝えればきっと許してくれる

そう思うから答えてからスマホを鞄にいれ、食べ終わった皿を食器洗い器へと突っ込み御弁当を持って学校へと向かった

拓斗さんとメッセージ出来たお陰で気分はいいと自転車を漕ぐ脚も軽やかになる

町にある電気屋にあるテレビには昨日の通り魔殺人事件のニュースが流れていた

犯人は無実を主張してるが証拠があるからこそ警察は逮捕したと言う

犯人が逮捕された事で安心する、人々だけど不意に思い出すお兄ちゃんの拳銃に寒気は走る

『 お兄ちゃんは....人殺しなんてしない.... 』

優しくて、かっこよくて、なんでも完璧にやるあの人はそういうのをするわけ無い
きっとお兄ちゃんは悪ではなく善だと思う

ヒーローみたいに助けてくれるのを小さい頃から知ってるからこそ、違うと信じたい

" 陽を泣かせたやつは誰だ?あ"ぁ? "

" ごめんなさい!! "

よく虐められていた私を助けてくれた
お兄ちゃんには似合わないよ....

もし、お兄ちゃんが誰かを殺めて悲しませたとしても私は育てられた恩を含めて受け入れる以外の選択肢はない

『 大丈夫....私のお兄ちゃんだから.... 』


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三限目の国語

理科準備室
BL
昭和の4年生の男の子の「ぼく」は学校で授業中にうんこしたくなります。学校の授業中にこれまで入学以来これまで無事に家までガマンできたのですが、今回ばかりはまだ4限目の国語の授業で、給食もあるのでもう家までガマンできそうもなく、「ぼく」は授業をこっそり抜け出して初めての学校のトイレでうんこすることを決意します。でも初めての学校でのうんこは不安がいっぱい・・・それを一つ一つ乗り越えていてうんこするまでの姿を描いていきます。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

メス落ち♡からの創世再始動

ひづき
BL
赤い蔓状の触手に捕まり、幼少期から知り合いの神父に空中で犯される青年アリスタ。 地上には無数の死体があるのに、それどころじゃないのに、きもちいい♡らめぇ♡ 人外攻め/強姦/空中浮遊/野外露出/触手/流血/小スカ匂わせ/嘔吐イキ/攻めフェラ(ノドコキ)/メス落ち/男体妊娠匂わせ/惨殺/転生/公開プレイ(観客は死体オンリー)/精神破壊/洗脳………などなど順不同 以上を詰め込んだ頭の悪いお話です。 なるべくグロくならないよう、さらっと、しれっと略したら全体的に短くなりました! ひとつでもダメだと思った方は読まずに引き返して下さい。 宜しくお願い致します。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

処理中です...