すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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番外編

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ゲームセンターが初めてなのに玩具だとしても銃を使い慣れてるような俺を何一つ気にしないで笑う様子は、銃と関わりのない生活を送ってきたのだと分かる

颯がどれだけ大切にしてたか、血の匂いを気付かせないように、そして敵からも守っていた颯に少しだけ羨ましくなる

『 んー!中々取れない! 』

「 この犬がいいの? 」

『 うん!お兄ちゃんみたいで 』

二階のクレーンゲームへとやって来れば一目見て立ち止まり、何度かやってる陽妃が狙うのは颯のようにふてぶてしい顔をしてるがクリーム色をした柴犬みたいなぬいぐるみ

クレーンで掴むというより、ボールの先に板がありその左右をずらして落とすと言うゲーム
掴むだけならまだ簡単だと思うんだけど、余りにも頑張るからやってみた

「 陽ちゃんはお兄さんが好きなの? 」

『 ....はい、過保護で口煩い兄ですが、とても優しくて.... 』

アームを動かしながらいい位置を考えつつ問い掛けた俺に陽妃はほんのりと頬を赤くし照れたように答えた

『 でも、完璧すぎるから....劣る私が嫌なんです 』

「 優れた人を見るとね 」

『 拓斗さんもあるんですか? 』

「 あるよ、でも....この世に完璧な人なんていないから 」

ボタンを押しワームが下がれば板をズラす
陽妃がやるより大きくはずれたけどそれでも落ちることない其を見て笑みを浮かべる

「 俺も完璧じゃない。きっと君のお兄さんも君の前では強がってるだけだよ 」

『 ....もし、そうなら。弱音とかも吐いて欲しいです 』

海斗もきっと同じ事を考えてるのだろうか、そう思うと颯の気持ちも分かるし陽妃の言ってることは痛いほどに胸へと刺さった

コインを入れアームを動かしながらもう一度狙って、ボタンを押す

「 俺が兄なら弱さは見せないかな 」

『 何故ですか? 』

ぐらりと揺れ、そのままぬいぐるみが出口へと落ちればしゃがみこ中から取り出し差し出しながら笑った

「 だって、可愛い妹がいたらお兄ちゃん頑張りたくなるよ。其が兄ってものだからね 」

『 そう言うものなんですね....フフッ、ありがとうございますっ 』

抱き締めれるほどの縫いぐるみを嬉しそうに受け取る陽妃を見れば、颯が弱音を見せないのは分かる
泣かせたくないとな色んな思いがあるから弱音を言わないのだろ

10年以上共にいる俺にも言わないのだから、自分より弱くて守る対象には尚更不安にさせないと思う、俺ならそうするから

『 次、プリクラ撮りませんか? 』

「 プリクラね~詐欺って遊ぼうか! 」

『 はいっ 』

陽妃と居ると海斗と遊んだような気持ちになる
遊べなかった俺がこうして時間を返してるよう
けれど、海斗じゃなければ意味ないんだと思う

それに俺は....彼女に恋心を持たせる必要がある
そのやり方は何一つ分からなくなったほどに、陽妃の素直な笑顔や言葉が聞きたくなっていた

「( 駄目だな....下手な感情は任務を失敗させるのに )」

プリクラの機械がある三階へと嬉しそうにエスカレーターを上がる陽妃の後ろ姿を見てから目線を外した

俺は、陽妃を誘惑するのに戸惑っていた

颯の子供とかじゃない、只....陽妃の初恋が俺ではなく他の人がいいんじゃないかと思うから

結局最後はふってしまうことになるのだから、好きな相手を見付けて欲しい
颯のような兄心がある

『 この機械にしましょ! 』

「 200円いれるよ。楽しみだね~! 」

『 はいっ! 』

写真やら極力避けてる俺が撮られてもいいなんて可笑しな話

まぁ、今どきのプリクラは詐欺並みに顔が変わるからいいか

『 ははっ!拓斗さんメルヘンチックになったね!綺麗で可愛い! 』

「 宇宙人の間違いだよ。フフッ、陽妃ちゃんは実物の方が数倍も可愛いけどね 」

『 なっ、御冗談を! 』

32歳の俺が高校生とこんなにはしゃげるなら、たまには悪くないよね

『 あの、沢山遊んでくださりありがとうございました 』

「 俺の方こそありがとう。次は食事でもしようね 」

『 あ、はい! 』

沢山遊んで、簡単なカフェも一緒に食べ過ごした

雨は上がり雲の隙間から光が射し込めば、ふっと振り返った時には虹がかかっていた

まるで陽妃と俺を繋いでるような、そんな橋は色鮮やかに人々の心を魅了した

「フフッ、悪くないよ 」

歩きながら手に持ったプリクラの半分を見て笑みは溢れる

悪くない、また会いたいと思うほど楽しかったよ



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