すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

文字の大きさ
上 下
94 / 193
番外編

12

しおりを挟む

雨の日にずぶれなんて明らかに違和感がある為に一度着替えてから任務へと向かった

男が通る瞬間に殺害、なんて人目を気にする俺の行動ではない

もう一人、その狙った男を殺した相手に用事があった俺は追い掛けたのだが路地に入ったところで諦めた....フリをし息をつく

「( 追い掛けてもしかたないよね.... )」

俺の後に続けてきていた人物を知ってた為に少し影により、そして行くのを止めた

「( 君が突っ込めば颯が悲しむ )」

陽妃、君の生きる世界とこの暗い路地のような道は住む世界が違う

颯が永年隠してた事を俺から教えるのも意味が違う
だからこそ、自然と告げた言葉は
デートに行こう だった

不自然過ぎる誘いなのに余り気にして無い様子にはほっと胸を撫で下ろす

デートなんてまともにするのは初めてなんじゃないかと思うほど、ゆっくりと歩きながら陽妃が行きたい場所を答えるまで殺害現場から離れていく

『 あ、ゲームセンター行ってみたかったんです!駄目ですか? 』

「 ゲームセンター.... 」

陽妃が立ち止まったのは少し大きなゲームセンター 
三階はプリクラで二階はクレーンゲーム等、そして一階はコインゲームとかになってる場所

確かに俺も学生の頃にゲームセンターで遊んだような記憶は無いから、ちょっと楽しみになる

「 いいよ、行ってみようか! 」

『 はいっ! 』

傘を閉じて共にゲームセンターへと入る
この音が大きい感じは何となくパチンコ店を思い出すが、騒がしいからこそ楽しいと思えるのだろうね

自動ドアを入ってから目を輝かせる陽妃の横顔を見てから、そっと背を押す

『 わっ、拓斗さん? 』

「 気になるもからやっていこうよ 」

『 そうですねっ、一階はコインで遊ぶ場所なんだ....何があるかな 』

全て見るのは初めてのように、颯に良く似た横顔と琥珀色の瞳をゲームへと向ける

颯の事だから門限とか作ってそうだし、ゲームセンターになんて来たら機嫌は悪くなりそう

質の悪い奴が多いこの場所に、可愛い弟は行かせたく無いだろうね

『 これやってみます! 』

「 うん、へぇ....ワニさん叩くんだ 」

『 点数高かったらこれでるらしいので 』

ワニをハンマーみたいなので叩くのを見れば、それは点数が一定に上がれば小さなオモチャが出てくるような仕組み

張り切ってハンマー持つ陽妃に俺は片手を出した

「 ちょっとそれ持たせて 」

『 ん?どうぞ 』

受け取ったハンマーは少し重く、華奢な彼が持つにはスピードがないようにも思えた

「 此で打たなくても多分、手で叩いても点数はいるよ 」

『 そうなんですか?なら手で叩いてみよ 』

お財布からコインを入れて始まる音と共にワニは顔を覗かせる

『 わっ!あ、叩ける! 』

そんなに強くしなくても一定の押した位置によってワニの頭は叩かれたように引っ込んでいく

只、恐ろしいほどに陽妃は鈍感だと思った

" 怒ったぞ~ "

『 ふあっ!?えっ、あっ、まっ! 』

二つ同時に出てくればどちらを叩くか迷ってる内にワニは引っ込む
叩いた数によって速度や出てくる数も増えてる
そのきっと最初のグレード2辺りでゲームは終わった

" ワハハハッ、ざまーみろ! "

『 なっ、拓斗さん!ワニさん多かった! 』

ガチャが出なかったことに少しだけ落ち込む彼に俺は小さく笑ってから自らの財布を出し札を両替し、残りを胸ポケットに入れ百点玉を入れた

「 次は俺がやってみるよ 」

『 是非!ガチャを! 』

「 たいしたものは入ってないと思うけどね 」

ガチャへと視線を向ければ入れ物すら小さい気がして其でも欲しがるなんて可愛いと思いながらゲームが始まれば軽く叩いていく

" 怒ったぞ~! "

『 怒るの早い? 』

「 きっと叩くときの速度も関係あるかもね 」

身体全部が出てくる前に口先だけが穴から出ればそれを叩き引っ込める
その単純なゲームは次第に速度が上がる

" 喰ってやる!! "

『 わっ、4体いっぺんとか! 』

「 ダメだよねぇ。ハンマーひとつしないのに4体とか。手でやれっていってるみたいなもの 」

左右に指を伸ばしピアノをするように押さえ、最高グレードの後半
全部が出てきたときには出た順番から押さえていく

" うぅ、やられたぁ~.... "

「 ふぅ、中々楽しかったよ 」

" 結果。パーフェクト! "

『 凄い!私、目で追えなかった! 』

子供がするゲームだと思うけど最高グレードまで行けばそれなりに楽しいと、最後に出てきたガチャを受け取り陽妃へと渡した

「 どうぞ、反射神経は良くてね 」

『 いいの?ありがとうっ。何がでるかな~ 』

彼女がしてもそのガチャはきっと出ていた
周りは黒く塗り潰されてようなガチャのボールをテープを開け開けば、陽妃は嬉しそうに笑った

『 ワニさんの消しゴム!! 』

「 やっぱりたいしたことなかったね 」

『 いいえ!使えますよ!学校のときに 』

消ゴムと言ってもワニの形だから消し辛そうなんて実用性を考えてしまう俺とは違って、陽妃は使えるものだからと喜ぶ
ほんの100円程度のプレゼントで此処まで喜ぶ人を海斗以外に初めてみたかもしれない

『 ありがとうございます!次、あれやりたい! 』

「 いいよ 」

誰かとこうやって遊んだのはいつ振りだろうか


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

処理中です...