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番外編

05

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即家に帰り、靴を脱ぎ捨て脱衣場へと走った

鏡を見れば醜い姿を見てウィッグを掴み引き外し床へと落ちたウィッグ放置し水道の蛇口捻れば水を盛大に出し顔につけ
置いてあるメイク落としのオイルを手に付け外していく

流れるアイライナーの黒い液や、肌につけたファンデーションやコンシーラー全て外せば顔を上げる

『 ....お兄ちゃんよりカッコ悪いよ....カッコ良くもなければ可愛いくもない。そんなの知ってる....ううっ、っ.... 』

昔からお兄ちゃんは周りの親御さんからよく働く人だと言われていた
兄がモデルしてる時は何度もスタジオに行って、当時のマネージャーである黒澤さんと一緒に見てることが多かった

スポットライトを浴びて綺麗な顔をした兄を見るのは好きだった
けれどどんなに憧れて望んでも私は兄のように綺麗でも、羨ましいほどの身長なんてない
女子より少し高い程度で運動部でもない男子に身長を抜かれて

イケメンだとか格好いい、可愛いとか綺麗とか、そんなランキングがクラスで決められるなかに私はいない

唯一頭がいいってのも、クラス一番に頭のいい和泉君に毎回負けてばかりで....

『 私がお兄ちゃんに勝てる部分なんてあるわけないじゃん.... 』

お兄ちゃんのカッコよさに負けたから可愛さでは勝とうと思った
けれどそんなのはまやかしであり本当の女子達が持つ可愛さでないのも知ってる

お兄ちゃんは可愛いって言ってくれるけど、それは子供に向けるような可愛いと言う単語

もう、18になる私が可愛いなんて可笑しいんだよ....

溢れる涙は悔し涙で、女子達の文句より実感する差に悔しくなる
血の繋がった兄弟なのになんでこうも違うんだろう....

お兄ちゃんに似た唯一のクリーム色の髪の毛と琥珀色の瞳 
日本人離れした外見はお兄ちゃんそのもの
けれど、お兄ちゃんを知ってる人からすれば私の容姿など比べれないほど劣る

『 そんなの....知ってる.... 』 

涙を拭いて床に落ちたウィッグ拾ってから二階にある自分の部屋へと行く
不意にお兄ちゃんの部屋の前を通ったから、なんとなく扉を開けて中へと入ってみた

『 本当、イメージ通り.... 』

抱き締めれる位の大きなぬいぐるみがベッドの上にあって
本棚は医学書を含めた様々な専門書があり、上の段には若い頃に出版社から貰った雑誌
シンプルな机の上にはノートパソコンと写真立てには私の姿

『 ....お兄ちゃん写真なんて、モデルの時か私の隠し撮りしか無いんだよね 』

いつもカメラを持っていたのはお兄ちゃんの方、誕生日もひな祭りやこいのぼりの日、クリスマスもお正月も全部私一人しか写ってない

お兄ちゃんがどんな顔をして私を写真撮ってたか、なんて幼い頃のは覚えてる筈がない
だけど....つい最近のは覚えてる
お兄ちゃんは両親を余り知らない私が寂しくないよう楽しませてくれようとしていた

『 お兄ちゃんが好きなんだけど....嫌ってごめんね.... 』

幼い頃の私は純粋にお兄ちゃんが好きだっと思う、だけど今の私の心は歪んでる

幼い頃の私の写真立てを静かに倒してから部屋を出た

お兄ちゃんの部屋には思い出の物や私の写真が沢山ある、けれど私の部屋には其がない

『 ......なにもない 』

女の子のように特別可愛い物が好きなわけでも、アクセサリーや服が好きなわけでもない
女装するから必要ってだけでベッドと机とクローゼットがある程度のシンプルな部屋
机の上にあるメイク用品は必要最低限のみ
 
『 ....趣味も可愛いくない 』

ベッドへと仰向けに倒れ、首にぶら下げてあるネックレスを掴みシルバー細工の部分を見る

お兄ちゃんが受け取ってくれたプレゼント私の父親からのネックレス

其処には言葉が書かれている

『 いつも君を見守っている。愛しい我が子.... 』 

刻まれたスウェーデンの言葉

そんな国なんて行ったことないけど、離れていても父親が傍にいる気持ちになるから嬉しくなる

お兄ちゃんは余り両親の事を言わないけど、子供は好きな仲のいい夫婦と言ってくれる

お父さんとお母さんに会いたい
そしたら私がどちらに似てるのか分かるのに....

そんな事を思いながら泣いていた身体は子供のように眠りについた


「 ....陽、俺の部屋に入ったな?悪い子だ....幼い頃の君にやきもちかい? 」

ふっと聞こえてきた声は兄のものだと分かる
けれど学校で疲れていた身体は起きれなくて、そのまま目を閉じていれば
ベッドのスプリング音と共に触れられたネックレス、それをそっと取られればアクセサリーへと口付けを落としたように囁いた

『 愛しい我が子....ゆっくりおやすみ 』

お兄ちゃんに聞きたいことがある

たまに私を見る表情が悲しそうな理由を知りたい
でも、きっと言ってはくれないことも知ってる....

リップ音と共に額に当たる口付けと撫でるようにそっと髪へと触れる手の心地に
夢の中へと落ちていく

夢の中で、お父さんをみた気がする....

優しくて暖かいお父さんと
華のように綺麗なお母さんを....

手を伸ばせば届きそうな距離なのに
前に現れるのは、行くのを止めるお兄ちゃんの姿だった....

『 まって、お父さん!!っ.... 』

楽しい夢の筈なのに、起きれば泣いてしまっていた

『 情緒不安定なのかな....私 』

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