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番外編
02
しおりを挟む依頼主が出てくるのを待っていればいつものように黒い車で通り過ぎた為に溜め息を吐いた
「 やっぱり直接出向かなきゃいけないってか....仕方無いねぇ 」
こそこそとその場で待っていた俺はまるで不審者だけど、まさにその通り
どんな情報でも嗅ぎ付けるんだから俺を知ってる者からは良いようには呼ばれない
それでも唯一の家族である弟を養うためには汚れ仕事も受け入れる
その為なら....
「 待ち伏せぐらい....うわっ!! 」
『 !!!? 』
歩き出そうとすれば、シルバーの自転車に乗った女子高生
目の前に現れたクリーム色の髪に琥珀色の瞳は何処かで見覚えてるし、いや間違いないと思った時には衝撃で倒れていた
「( えっ、颯の妹?弟だよね?....うん、明らかに小さいときに見た颯の弟だ.... )」
俯せのまま地味に痛む額より、相手が誰なのか、そしてなんでぶつかったのかと考えていればその答えは直ぐに見えてきた
「 はっ! 」
パッと目を開け、起き上がれば今にも泣きそうな女子高生ではなく相手を見ては俺の存在を知ってるのかと不安になった
絶対に、颯の事だから俺が怪我させたなんて知られれば殺しにかかってくると精一杯に笑顔を向ける
本当は前方不注意について怒ってやろうと思ったけど、颯の妹だから、そう依頼主の妹だからと心を静めて爽やかな笑顔の仮面をつけた
数回交わして立ち去ったその後ろ姿を見てから、やっぱり颯そっくりだと思う
「 因みに颯ってのは此れから会う依頼主さ、誰に話してるかって?君だよ、君 」
後ろに顔を向けウインクしてから歩き出した俺は、仕方なく近くに止めていた依頼主から借りていた車に乗り走り出す
依頼主は駅前近くに構える、大きな構想ビルを数個所有する社長だ
凄いよねぇ、こんなビルの社長とドブネズミは知り合いと言うのだから世間も罪深い
「 よし、お兄さんこの車任せたよ 」
「 あ、はい 」
車の中でボックスから取り出した絆創膏で額にばつをつけるよう応急措置してから、ビルの前に立つ使用人に車のキーを預けそのままビルへと入っていく
もちろん、止められる
「 関係者以外立ち入り禁止だ 」
「 社員でもないだろ 」
此所の社員は全員お揃いのバッチをスーツの胸元につけている
それを見て判断するのだが、そんなの幾らでも手にはいるのが現在の裏ルート
「 ちゃんと持ってるよ。確か、此処に~ほらね 」
ポケットを探り、お尻側のズボンのポケットから取り出したバッチを見せれば警備員の二人は顔を見合わせ前から退いた
なんて忠実な警備員さんなんだろ、でも考えが甘いな~って思いながら片手を振り歩きながらバッチを胸元につけ進む
「 本当、無駄に大きいよね.... 」
中央は一番上から二番目まで筒抜けの作りになり
筒抜けを囲うようにオフィスやら会議室などがある
広さと空間を使った、何て言う造りのビルだが今の社長の前に座っていたオーナーのデザインらしい
センスの欠片が見えないと、自動で行きたい階に案内してくれるエレナビさんを通り過ぎ、勝手に最上階行きのエレベーターに乗る
「 あ、どうも.... 」
周りがお堅くスーツを着込んでる中で俺だけパーカーに部屋にあった弟のスウェットを履いてるような、部屋着姿だと冷たい目を向けられる
御客には優しく、なんて方針のビジネスは此処にはないようだ
「 さて、到着。最上階、社長室のあるフロアだね 」
チーンと古い電子レンジが鳴るような音と似た、エレベーターが止まる音
開いたと同時に出ればそこは人の歩きが極端に減った静かな一本道の通路がぐるっと上手くフロア全体を繋げていた
パッと見れば一本道なのだが、これも人の錯覚を使った通路らしくて気持ち悪くなるよ
何度か社長室にお邪魔した事がある為にそのまままっすぐ進み、一際大きな扉を開けば声は聞こえてきた
「 あぁぁあ....この書類の間違えをなぜ、今日に限って報告したんだ!直ぐにやり直させてこい! 」
「 すみませんでした!! 」
「 やってるねぇ、社長さん。そうカリカリするならカルシウム取った方がいいよ? 」
紙を向けた社長によって頭を下げた男は直ぐにオフィスを出ていった
社長へと近付くなり笑顔を向けてる俺は、スーツの胸元に手を突っ込んでる彼の秘書へと停止の合図を出す
もう知ってるから言うけど、この秘書は俺とこの社長を雇っているボスであり
彼は今、拳銃を取り出そうとしてる
それだけ彼にとって俺は邪魔であり、社長が大事な存在なんだ
これもそう彼が20歳の頃から変わらない
「 俺は争いに来たんじゃない。依頼の情報提供に来たんだよ? 」
「 黒澤君、彼の言うとおりだ。問題ない 」
「 ....分かりました 」
今思えば凄い演技派の二人だと思う
三人とも素性を知ってるのに、この二人の上下関係は変わらないのだから、俺もこの威圧に時に押されそうになるよ
「 秘書君を抑えてくれてありがとう。情報提供しただけで脳に風穴空くなんて嫌だからね 」
『 茶番は良い。それで向こうの動きは? 』
どちらかと言えば俺が先輩で颯が後輩なんだけど、この差はなんだろうね?
まぁいいけど
そう、この社長が一ノ瀬 颯
今朝ぶつかってきた美少女に似せた女装男子のお兄ちゃんなんだ
世間って狭いよね?
この番外編は、そんなお兄ちゃんからスポットを外したさっきの女装男子君と俺の兄の目をくぐり抜けながら出逢ってイチャイチャする話だよ(多分
本編では語られなかった颯が行動してる時に動いてた俺の裏の話とか出てくるから
気になる人は先に進んでね!
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