すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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9話 すれ違った相手

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目にいれても痛くない我が子

泣いても笑っても可愛いから沢山キスをしていれば、当時20歳の俺には一つ屋根下で生活してる子供が可愛くて仕方なかった

「 おに、ちゃん? 」

小学校に入ったばかりの陽妃が可愛かった、とにかく女の子みたいで男っぽさも無いほどに小さくてくりくりとした琥珀色の瞳は純粋に俺を見上げる

『 陽はお兄ちゃんの事好き? 』 

「 うん、だいすきっ! 」

『 お兄ちゃんも、大好きだよ.... 』

頬への口付けはその日は唇へとしていた
驚くように目を開ける陽妃にそっと頭を撫でれば閉じる素直な子だ

柔らかな唇を堪能するようキスをし、不意に頬を染めてる陽妃に現実へと思考は引き戻される

『 ごめん、ごめん....俺は何をしてんだろうか.... 』 

命を奪う俺が、温もりが恋しいからと
近くにいた我が子にまで手を出すなんて正気じゃないとそっと抱き締め何度も謝った

それでも、陽は笑って小さな手で俺の背中を撫でてくる

『 俺は陽妃を守るんだ....その為に此処にいる.... 』

優秀な子は成長すれば、その能力を欲する国へと売られると言う
スキルを習得するのもその為であり、陽妃には勉強の他に、ピアノやら、基本的な家事も教えた

時に厳しく、時に甘く....

だから陽妃は絵本の中のお姫様のように素直な子に育った、途中までは.... 

「 お兄ちゃん、ハイポーズ! 」

『 ん? 』

俺は一つ、間違った育て方をしたらしい
何かの子育ての本でお小遣いは月に50円で十分なんてあったから50円しか渡さなかったことで陽妃は俺の写真を売るようになった

その事は直ぐに、拓海から聞いた 

「 1枚2000円。裸っぽいのは5000円。君は何て育て方したの!? 」

『 ....可笑しいな、お小遣いあげてたんだが 』

「 足りないから、中学生がするんでしょ! 」    

『 そう御前はどうなんだ? 』

「 俺はまぁまぁだよ....仕事優先してるけど、海君はいい子だよ.... 」

俺の仕事の回数より遥かに多い
それに俺は陽妃に向けられた刺客を殺す程度だが、拓海は依頼まで受けていた

俺達は似た生き方をしてるのに全く、違っていた

何処から変わったのか....

その境目は、俺が陽妃と兄弟になったあと
拓海の出番になった時だ....


近くで見ていた俺は知っている

「 ....なんで、育てなきゃいけないの....汚れた手で自分の子供をなんて....何十人と夫婦とその子を殺したのに.... 」 

抱いていた赤ちゃんは眠ってるようで静かで、陽妃より大人しいのだと思った

拓海もまた俺と同じ道なんだと思って近付こうとすれば、上司の言葉は違った

「 10499646、御前に支給する金はない 」 
 
「 なっ、どういう事!? 」 

「 自分で働いて稼ぐことさ。御前は10110103より頭脳は優れてないからな。落ちこぼれに期待はしてない 」

「 なっ...... 」

拓海は俺を見てから上司を睨み、契約書にサインした後にやってきた 

『 いっ!! 』

「 後からやってきたくせに、なんで君だけ好かれて俺はこんなドブネズミみたいな生活しなきゃいけないんだ!! 」 

一発殴られるとは思ってたが、相変わらず馬鹿力だと背をつき頬を触れる俺は言い返すことが出来なかった

「 学校でも人を透かしてるような君が気に入らない! 」 

『 俺は、誰にでも笑ってるような薄気味笑い御前の方が気に入らないがな.... 』

「 ....君の弟、いつか殺してあげるから 」

この会社にいるときは話すが、外では全くの他人として過ごしていた為にクラスの中では目線が合うことはなかった

唯一弟の話をするときだけたまに会話する程度であり、それ以外は仕事の中だ 

「 車貸して 」 

『 またかよ、ほい.... 』 

「 ありがとう 」 

辛い生活を送ってる拓海に唯一知ってる俺は何かしら手を貸したかった 
 
けれど仲良くする度にまるで引き裂くような者が現れるから気に入らなかった

『 俺はこの任務から抜ける。彼奴と一緒になるために....陽妃に普通の社会人として生活して欲しいために....貴方を殺す.... 』



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