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しおりを挟む向けられた銃口は全て下ろされ
軽く咳をし座り直せば邪魔な程に長いウィッグを掴み無造作に引き剥がす
露になる薄いクリーム色の髪をくしゃりと掻き軽く髪を整えれば、二人へと向き合った
「 正直、ウィッグ付けてた方がいいよ 」
『 いいんだよ、分かったんだから言うな 』
そりゃスカート履いてメイクもしてるのにウィッグ外せば似合わないだろうが、この状態で一人女装を続けてるのが嫌になっただけだ
腕でごしごしとメイクを擦り取り、立ち上がり部屋の壁に触れ開き隠しクローゼットからカッターシャツとズボンを拝借し着替えていく
「 それで、話はなんですか? 」
「 人様の物をごく普通に....って、そうだった! 」
シャツのボタンを第三迄開こうと思ったが昨夜を思い出しキツいが全て閉め、ズボンのファスナー上げ、ヒップホルスターを取り付けていた物をズボンへと移動させ
銃やら確認したのち上着を羽織り直す
『 そうそう、仕組まれてた。ぜーんぶな。その男に.... 』
「 全部って? 」
『 俺が生まれてきた事も拓海が生まれたことも....御前が早くして両親を亡くしたことも、その御前が後に和泉夫婦を殺したことも全部仕組まれてたのさ 』
「 ......えっ? 」
驚くことも無理ない、俺もこれを知って驚いたと同時にショックだった
だからこそ目の前にいる黒澤君を脅してまで答えを聞きたかったんだ
『 ....いつも変だと思ったんだよ。拓海に銃を渡すまえに他の奴から誰からか持っていくよう頼まれて....拓海がバックを持ってる時に運よく現れる両親。そして、6年前な俺を刺されて入院した後に牢屋にぶちこまれるなんて....全部な、近くに御前がいんだよ、黒澤! 』
俺が拓海と交渉してるときに指示を出していた本人は、黒澤だった
『 俺の両親の名前を刺した奴が言ってるのは可笑しい話なんだよ。新輝....俺の仮の両親はな、殺されてんだよ。生きてるわけねぇだろ! 』
「 !!? 」
ずっと幼い頃に両親は誰かに殺され、そして一人生きてきた俺は自分の誕生日も名前も知らずに生きてきた
適当に孤児院に連れてこられたがそこは他と違ってるとすぐ分かった
誰も名前を呼ばない、誰もまともな名前ではなかった
そして8歳になる頃から毎年数回に渡って行われる健康診断は只の検査診断では無いことも高校生卒業した辺りから気付いた
でも言わなかった、言えなかったその時にはもう....大切な子がいたのだから
『 ギフテッドとおぼしき子を集めて、そいつらが8歳を過ぎてから大人の段階に成長したか調べる検査。俺はな....12歳の時には大人になっていた 』
「 颯、さっぱり話に着いていけないんだけどどう言うことか一つ一つ説明してよ 」
『 ....すれ恋って、出会い系アプリ知ってるか? 』
無言のままの黒澤君に、全て図星なのかと呆れながら動揺してる拓海へと視線を向け、壁に凭れながら告げる
「 知ってるよ....やってるし、リクから依頼されてたから....それがなに?っ....!まさか.... 」
『 そのまさかさ。拓海に調べてもらっていたすれ恋の登録者、そして態と結び付かせるような仕様。黒澤君....御前ってすれ恋の設立者なんだろ?いい遺伝子残すために人間の心理を利用したな 』
「 いい、遺伝子....?そんな、だって.... 」
『 俺達は最初から一本の道しか無かったんだよ 』
すれ恋をしていて一つ思ったことがあった
それは年齢なんて何一つ関係無いほどに年齢確認がガバガバだと言う点
そして、いいね!をしてくる人達が街中ですれ違っていた、と言う恰も運命的な出会いを演出させた人達
もう一つは、彼等のプロフィールを見てると自分で勝手にやってる判別はまるでいいメスを探すオスのよう
そして、メスもまた学歴、年収、顔、全てを揃った理想のオスを探すように選んでいく
運命的な人と出会い、そして自分の理想とするプロフィールの相手なら子供もきっと優秀だと思うだろう
特にそれが、俺達のような優秀だと評価された者が始めれば選ぶ相手もまた自分の本質と近くなる
『 優秀な人材....御前はよく口にしてたよな。それに、俺がアプリをやるきっかけも御前の一言なんだよ 』
「 そう言えば俺も、陽ちゃんと出逢ったのはあのアプリであり....初めたのは、ボスからの指示だった。陽ちゃんのスキルを上げろって.... 」
『 なぁ、ボス。黙ってないでそろそろ真実言ってくれよ。俺達がこうなることを知ってたんだろ? 』
陽妃と拓海が出逢ってるのは知っていた
拓海は仕事の依頼で陽妃と近づいてたが、陽妃はコイツの正体を知らず好いていった
それは同時に、まるでデータを取ってるように俺と海斗も出会い御互いに引かれ合った
けれどもし、それが全て決められた事なら俺は自分を許せないし黒澤君を許すことは出来ない
こいつは、俺達を試すように態と俺を刺すよう仕向けて、そして牢屋へとぶちこんだ
6年の歳月、相手のことを考えてるだけで想いが募り、破裂した
好きだと言ったら負けように、俺は今此処にいる
「 君は鋭く賢いと思っていたが此処までとは、だったらどうしたと言うのです?惹かれ合ったなら十分でしょ?アプリの効力を発揮しただけですよ 」
『 それが気に入らないってんだろ!! 』
もし、それで子が生まれたなら俺達と同じ道を歩かせることになる
それはこの人の目的であり政府の目的だ
「 優秀な子供だけの世界。大人に忠実で裏切らない絶対的な信頼関係。社会のごみみたいな大人は失敗作の子孫を諸とも死ねばいいのですよ 」
「『 !!!! 』」
「 我が可愛い息子達よ。これはね、一つのプロジェクトなんですよ。
" ギフテッド制作 "のね 」
俺達の任務は人殺しだった
罪がある、無いとこの問題ではなく
只上からの命令だった
それが唯一の恩返しだと思っていた
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