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しおりを挟むごく普通の会社では日曜日は必ず休みとなる
なんていいんだと朝起きて思っていた
身体は重く痛いが、折角の休みに寝ていても問題ないと張り切りながら陽妃にメールをする
メイクの仕方をそれとなく聞いてから、コートにあるポーチを取り出し脱衣場に置いてから風呂に入れば、上がった頃には海斗が起きてきた
何気無く朝にはルーズと言うかゆっくりと行動するのを見てると、待ち合わせとかには真面目なんだと思う
「 移動手段どうするんだ? 」
『 もちろん、俺の車を使う 』
「 えっ? 」
車あるんですか?みたいな視線だが有るに決まってる
どんなに刑務所にいたとしても前に社長になったときに所々に所有していた車庫は健在であり、その一つはこのラブホテルから近い
運転なんて久々だと思うが、それがまた楽しいとラブホテルを出てから向かう
「 車....そう言えば兄がよく車を借りてたって.... 」
『 あぁ、俺のな。大半はぶっ壊すから帰ってこなかったよ 』
「 えぇ、颯さんの借りるなんて.... 」
『 安心しろ。保険かけてたから車は直ぐに新しいのと買い換えていたし、壊したからって請求したこと無いさ 』
歩きながら話す内容は、海斗の兄である拓海のこと
よく借りていた時の事を思い出せば今では懐かしいと思うと反面、其だけ彼奴には色んな事を負担させてしまったんだと思う
『 ....拓海は俺の仕事を受けていた。潜入調査、情報収集。必要だから車なんてガラクタ並みによく買い換えていた 』
「 ....こう言うのあれですが、颯さんって普通の社長じゃないですよね。スパイ? 」
スパイ?とか疑問系に告げてきた海斗を見ればその目は信じてる人の透き通った曇り無い目だった為に吹き出した
『 なわけあるか!俺の上司からの依頼さ。スパイって、あははっ。現代の子供でも信じねぇぞ 』
「 だって....颯さんってなんか、掴めないから。知らないこと多過ぎなんだ 」
確かに俺の素性がなんだと聞かれたら前の俺なら立場を防いで誤魔化していたが、今の俺はもう関係無いんだ
目線を落とす海斗の手を左手で取り掴めば、驚きながら握り返す彼に笑みを向け指を絡めて歩く
『 なら知るといいさ。答える。つーか、隠すこともなく暴いたのは御前だがな? 』
「 えっ?あ、あれとこれとは違うんです! 」
『 同じ様な気もするがな 』
隠そうと思えば全て脱がされて、壊れて求めるほどに暴かれた昨夜
そんな事は今までにあっただろうけど考えれば無いのだから、海斗は相当俺の懐に入るのが上手いと思う
「 違うさ.... 」
『 ん? 』
笑っていた俺に立ち止まった海斗によってするりと外れた指先は握るものを無くす
「 俺は貴方の背中を追い掛けて医師になった。なのに、何も知らない....調べてもあの会社は医療や物の輸送してた位で貴方がなんの仕事をして、刺されるほどに恨まれる親を持つのかも分からなかった.... 」
知りたがりの子供は何も知らないまま成長して、不安になる
会わなかった時間、どれだけ海斗が調べたかは推測は出来る
彼は刑事でもなければ只の青年であり
少し興味本意があるだけ
調べれた範囲はネットの中に表示された此方が提供した岳の情報程度だろ
それなら、俺が政府と関わっていたことも拓海が危ない連中に追われてることもこいつは知らない
スパイ、そう言われても可笑しくないほど俺と拓海は陽妃や海斗に黙っているんだ
一番近くにいる唯一の肉親が
一番知らないなんて悲しい現状だな
まだ黒澤君の方が色々知ってるだろう
『 確かに前の俺は、公表できない仕事をしていた。だが、今はゲーム制作会社に勤める只のサラリーマンだ。それだと、だめか? 』
「 駄目じゃない!でも、兄は?拓海は何処にいるの?颯さんの仕事をして無いなら帰ってきてもいいのに.... 」
親を知らない海斗にとって拓海は親代わりの様なもの
まるで彼を見てると陽妃を思い出すほど、俺達の生き方は水面に映る水鏡のよう
けれど違うのは俺は常に陽妃の傍にいて、裕福な暮らしをさせていたが
拓海は常に海斗の傍には居られず貧相な暮らしをさせてしまっていた
不安なのだろ、両親が死んだと聞いてから肉親を失ったらと思う気持ち
だが、嘘は言いたくなかった
『 ....拓海という男は、死んだんだ 』
「 うそ、だ....兄貴が、そんな! 」
4年前に、俺がまだ刑務所に居るときに
やって来た元情報屋から聞かされた
拓海は....自ら命を落としたと....
『 本当さ。拓海という男は死んだ 』
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