上 下
54 / 193

08

しおりを挟む
 

釈放され、何事もないように事件は自殺へと変わったときには俺は拓海に同情を向けていた

だからある程度の事は手を貸し、ある程度の事は目を閉じていた

そう、あの日に銃殺したのが拓海だと知っていても黙っていた

『 結果、金を払って欲しくて脅したのは俺だし....金を持って来いと言った時に500万なんて、欲しい人から見れば目が眩む額を請求したのも俺なんだ。彼奴が引き金を引いた原因は俺でもある 』

精神的に悩んでる人を追い詰めて、結果両親を殺すように促してしまったことは自覚してるから
それについては何もいいたくなかったし、
俺のせいとして全部受け止めて終わるなら其で良かったんだと頷く

「 ....ルイス・ド・ボーデンというマフィアの名前はどう言い訳する? 」

『 あぁ、それは単に借金取りに雇うヤクザさん達が素直に言うことを聞く名前を出しただけです。よくよく考えてみろよ。俺はスウェーデンの母と日本人の父を持つんだ。そんな人間が、イタリアのマフィアなんてわけないだろ? 』 
 
国が違えばマフィアになれるわけもないと軽く笑った俺に、刑事は二人の顔を合わせてから頭を抱えた

「 俺達は、まんまと名前に踊らされたのか.... 」

『 その名前を使ってた事も犯罪でしょな 』

「 当たり前だろ馬鹿が!!ヤクザ雇う、会社がどこにある!! 」

『 ははっ、ですよねー 』

そう言うが、この世界はヤクザによって成り立っている
金を取るために、脅すためには彼等の力が必要な時はあるんだ

だが、ほんの綻びで其が仇になることはある

「 牢に入って頭でも冷やしてろ 」

『 はいはい 』

陽妃を泣かせないと決めて、また泣かせてしまった

" お兄ちゃん、なんで!?お兄ちゃんは人殺ししないよね!? "

" ごめんな....陽 "

あの日、俺は本当の事を言えずに陽妃を泣かせた
人殺しの妹として小学校でどれだけ苛められたかは考えるだけで胸が苦しくなる

それでも、拓海の事を庇いたかった偽善者の俺がいた

騙される父親も悪いと思ってる俺は、今でも父親が好きではない


あの日、前回も早く来てたと思い近くの公園で待っていた俺はブランコに座りながらゆらゆらと動き、溜め息を吐いた

『 めんどくせ.... 』

金なんて必要ないと思うのに父親は前金貰ってこい、それがあるなら借金返済する気があるとして認める
なんて言わなければこんな冬間近の寒い時期に契約なんてしなくて済んだんだ

あー、寒い
もう少し分厚いコートを着てた方が良かったと思う俺は白い息を吐きながら待っていた

『 ったく、10分遅刻かよ 』

いつまでも来ないなと、端末を見てから電話をかけようと受話器を押し電話をかけても繋がらない

『 出ないのか....! 』

一瞬、受話器から聞こえた音かと思ったが違う
2発の音はかなり近いところから聞こえたことに顔を上げた

自然と向けた先は拓海の家の方で、身体に感じる寒気はこの音がよくないものだと忠告してるように頭の中で警戒音が響く

続けて聞こえた音、その度に肩は揺れる

「 今の音はなにかしら? 」

「 せんせー!さようなら! 」 

音の原因がなんなのか固まっていれば公園の前に到着した生徒用のバスに目を見開く

「 和泉君、気を付けてね 」

「 はーい! 」

『( 和泉?っ!! )』

聞こえてきた和泉という声と同時に、少年は元気よく家に向かって走っていくことに咄嗟に俺の身体は動いていた

あの音が彼の家の方からなら、危ないと思ったんだ

全力で走って追いかける俺を気付かない程、帰ることに夢中の少年はアパートの前に立てばドアノブに触れる

『 ま、くそっ!! 』

声をかけて止めようと思ったが、遅いと分かりそのまま走り後ろへと行ったときには目を見開き咄嗟に少年の目を隠した

「 に、ちゃん....? 」

違う、これは拓海じゃないと分かった
けれど初めて見る倒れた人と流れる血は吐き気を感じるものだった

「 おえっ、っ....おに.... 」

『 おい、しっかりしろ!! 』

気を失った子供を支え抱き上げてから顔を肩に乗せるよう隠し、中に入ることなく後ろへと下がった

パトカーの音にハッとするも、直ぐに疑われたのは俺自身

だが、鞄があってその持ってくる筈の本人がいないなら分かるだろう....

『 御前が殺ったんだな? 』

「 っ、それでも....そうせるよう仕向けたのは御前だ!!人殺し!!! 」

無実だと分かり、出た俺は拓海の居場所を掴んで話を聞いたがやっぱり俺のせいだということに笑えてしまう

『 なら、もう二度とそうさせないでくれ。払い続けろ、どんなことをしてもだ 』

「 っ.... 」 

俺を騙したければするといい
其で返せるなら、其で御前の弟が救えると思うなら其でいい 

俺達は兄弟は、優れたレールがあるからこそ何度無一文になっても立ち上がれる

それを分かってるからこそ、陽妃を泣かせることになっても拓海達の将来に掛けた

『 さて、次はどのぐらい此処にいるんだろうか 』

鉄格子から見える外の景色

きっと、出たときには変わってるのだろ


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

処理中です...