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しおりを挟む釈放され、何事もないように事件は自殺へと変わったときには俺は拓海に同情を向けていた
だからある程度の事は手を貸し、ある程度の事は目を閉じていた
そう、あの日に銃殺したのが拓海だと知っていても黙っていた
『 結果、金を払って欲しくて脅したのは俺だし....金を持って来いと言った時に500万なんて、欲しい人から見れば目が眩む額を請求したのも俺なんだ。彼奴が引き金を引いた原因は俺でもある 』
精神的に悩んでる人を追い詰めて、結果両親を殺すように促してしまったことは自覚してるから
それについては何もいいたくなかったし、
俺のせいとして全部受け止めて終わるなら其で良かったんだと頷く
「 ....ルイス・ド・ボーデンというマフィアの名前はどう言い訳する? 」
『 あぁ、それは単に借金取りに雇うヤクザさん達が素直に言うことを聞く名前を出しただけです。よくよく考えてみろよ。俺はスウェーデンの母と日本人の父を持つんだ。そんな人間が、イタリアのマフィアなんてわけないだろ? 』
国が違えばマフィアになれるわけもないと軽く笑った俺に、刑事は二人の顔を合わせてから頭を抱えた
「 俺達は、まんまと名前に踊らされたのか.... 」
『 その名前を使ってた事も犯罪でしょな 』
「 当たり前だろ馬鹿が!!ヤクザ雇う、会社がどこにある!! 」
『 ははっ、ですよねー 』
そう言うが、この世界はヤクザによって成り立っている
金を取るために、脅すためには彼等の力が必要な時はあるんだ
だが、ほんの綻びで其が仇になることはある
「 牢に入って頭でも冷やしてろ 」
『 はいはい 』
陽妃を泣かせないと決めて、また泣かせてしまった
" お兄ちゃん、なんで!?お兄ちゃんは人殺ししないよね!? "
" ごめんな....陽 "
あの日、俺は本当の事を言えずに陽妃を泣かせた
人殺しの妹として小学校でどれだけ苛められたかは考えるだけで胸が苦しくなる
それでも、拓海の事を庇いたかった偽善者の俺がいた
騙される父親も悪いと思ってる俺は、今でも父親が好きではない
あの日、前回も早く来てたと思い近くの公園で待っていた俺はブランコに座りながらゆらゆらと動き、溜め息を吐いた
『 めんどくせ.... 』
金なんて必要ないと思うのに父親は前金貰ってこい、それがあるなら借金返済する気があるとして認める
なんて言わなければこんな冬間近の寒い時期に契約なんてしなくて済んだんだ
あー、寒い
もう少し分厚いコートを着てた方が良かったと思う俺は白い息を吐きながら待っていた
『 ったく、10分遅刻かよ 』
いつまでも来ないなと、端末を見てから電話をかけようと受話器を押し電話をかけても繋がらない
『 出ないのか....! 』
一瞬、受話器から聞こえた音かと思ったが違う
2発の音はかなり近いところから聞こえたことに顔を上げた
自然と向けた先は拓海の家の方で、身体に感じる寒気はこの音がよくないものだと忠告してるように頭の中で警戒音が響く
続けて聞こえた音、その度に肩は揺れる
「 今の音はなにかしら? 」
「 せんせー!さようなら! 」
音の原因がなんなのか固まっていれば公園の前に到着した生徒用のバスに目を見開く
「 和泉君、気を付けてね 」
「 はーい! 」
『( 和泉?っ!! )』
聞こえてきた和泉という声と同時に、少年は元気よく家に向かって走っていくことに咄嗟に俺の身体は動いていた
あの音が彼の家の方からなら、危ないと思ったんだ
全力で走って追いかける俺を気付かない程、帰ることに夢中の少年はアパートの前に立てばドアノブに触れる
『 ま、くそっ!! 』
声をかけて止めようと思ったが、遅いと分かりそのまま走り後ろへと行ったときには目を見開き咄嗟に少年の目を隠した
「 に、ちゃん....? 」
違う、これは拓海じゃないと分かった
けれど初めて見る倒れた人と流れる血は吐き気を感じるものだった
「 おえっ、っ....おに.... 」
『 おい、しっかりしろ!! 』
気を失った子供を支え抱き上げてから顔を肩に乗せるよう隠し、中に入ることなく後ろへと下がった
パトカーの音にハッとするも、直ぐに疑われたのは俺自身
だが、鞄があってその持ってくる筈の本人がいないなら分かるだろう....
『 御前が殺ったんだな? 』
「 っ、それでも....そうせるよう仕向けたのは御前だ!!人殺し!!! 」
無実だと分かり、出た俺は拓海の居場所を掴んで話を聞いたがやっぱり俺のせいだということに笑えてしまう
『 なら、もう二度とそうさせないでくれ。払い続けろ、どんなことをしてもだ 』
「 っ.... 」
俺を騙したければするといい
其で返せるなら、其で御前の弟が救えると思うなら其でいい
俺達は兄弟は、優れたレールがあるからこそ何度無一文になっても立ち上がれる
それを分かってるからこそ、陽妃を泣かせることになっても拓海達の将来に掛けた
『 さて、次はどのぐらい此処にいるんだろうか 』
鉄格子から見える外の景色
きっと、出たときには変わってるのだろ
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