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しおりを挟む弟が好きで大切なのは彼もまた同じだった
けれど当時の父親はそれを知ってか
知らずか、どっちにしろどうでもいいらしく
俺へと数ヶ月振りに電話をかけてきた
『 父からだ....はい、もしもし。颯です 』
丁度、休憩時間のために良かったと電話を取りながら視線の先で陽妃が黒澤君からおやつを貰って上機嫌な事を見てから
話を聞かれても困ると、その場を離れスタジオの裏へと行く
" 和泉 拓海を知ってるか? "
『 和泉?あぁ、元高校生のクラスメートで、陽妃の同級生だろ?それが? 』
急に電話をかけて聞いてきた内容は、元同級生の事だった
そこまで面識はなく、只クラスメートって位だったのだが彼奴のニコニコした顔は何処か胡散臭くて好きには慣れなかった印象がある
今はもう、似たような黒澤君がいるから慣れると思うんだが高校生時代の俺は笑ってるやつが気に入らなかったんだ
" その和泉の両親が俺に5億の借金して逃げた "
『 はぁ?えっ.... 』
到底、将来返せるか分からないような金額に驚いて声が出てしまった俺は口を塞ぎ静かに言葉を待つ
" そのお陰で俺の会社は赤字だ。株を買わされたがその株を持つ会社は倒産....戻ってくると言われた金は帰ってこない。頼む、元同級生なら両親の居場所を聞いてくれ "
『 面識余りないからな....分かった、聞くさ 』
" ありがとう、颯 "
和泉の2人に騙されて株を買わされた父親は、何度かに渡って株を買ったが
その売ってる会社は倒産、株も無かったことになれば買った意味がないだろ
そして、直ぐに気付いたが株は一株10万円ほどで買えるのを父は一株100万で買ったらしい
その残った金は彼等が好きにギャンブルで使ったとなると俺は流石に黙ってはいられなかった
元同級生の奴等に拓海の連絡先を聞き、直接会うことを約束した
『 陽、ちょっと黒澤君といてなー?今日は帰るの遅くなる 』
「 うん!いい子でまつ! 」
『 いい子だな。黒澤君、頼むな 』
「 えぇ、行ってらっしゃい 」
よく黒澤君に預けてた為に、その日も任せてからタクシーを使い待ち合わせの場所へと向かった
少しルーズな拓海のことだから遅れて来るだろうと思っていたが、予定より早く来ていた
待ち合わせは、彼の家の近くにある小さな公園だ
端末を弄ってたこいつは俺を見るなり、また着けた仮面のような笑顔を向けてきた
「 久しぶり!颯君、話って~?お金になると嬉しいなっ 」
『 そうだな、今日は俺から情報提供だ 』
「 なーんだ。それならタダね。なに? 」
噂でこいつが情報屋をしてるのは聞いていたが、まさか出逢って直ぐに言われるとは思わなかったと苦笑いを漏らすが、俺にも予定があるために早急に話を進めた
『 御前の両親って今は何処にいるんだ? 』
「 ....両親?知るわけないじゃん....ギャンブルでもしてんじゃないかな 」
一瞬崩れた仮面だが直ぐに何時ものように笑うが俺にとってギャンブルをしてると言うことは気に入らなかった
『 ほう、ギャンブルをしてるなら誰の金なんだろうな? 』
「 さぁね....誰のでもよくない? 」
『 それがなぁ、良くないんだよ 』
「 なんで?っ.... 」
俺も相当機嫌悪いんだ
両親が帰ってこないと思えば赤字になって、金を返して欲しいからと関係ない俺に頼む
張り付けた笑顔は消えて、冷たく睨めばやっと理解した拓海の表情から笑みは失い目線は泳いだ
『 俺の両親に5億の借金してんだよ。御前の両親 』
「 ご、うそ.... 」
『 本当。父親が株を買わされてその会社は倒産。一株10万の株を100万で売られていたが残り90万は好きに使ってるそうじゃないか。そんな金をもって何処に逃げたかと聞いてんだよ 』
両親の事で子供同士が喧嘩はしたくないだろ
返して欲しさに、俺は戸惑ってる拓海の肩に触れ耳元へと顔を近付けた
『 知ってるか?外国では8歳前後の子供の臓器は高く売れんだよ。御前の弟....8歳だったよな? 』
「 !!俺の弟に手ぇ出すな!それだけは許さない!! 」
目を見開き、俺を押し返し胸ぐらを掴んだ拓海に向けて続けて言葉を投げる
『 俺が売らなくても、御前の両親なら金がなければ子供でも売るんじゃねぇ? 』
「 !!....っ 」
『 図星だな。金は既に、使った後か.... 』
父親にはどうやって話そうか、そんな事を既に考えていれば拓海は手を離し座り込んだ
多額の借金を背負った両親が次にすることは子供なら分かるだろう
「 颯....俺が、変わりに支払うから....海君には手を出さないで....俺の唯一の、大切な弟
なんだ.... 」
『 支払ってくれる奴がいるなら父親もなんも言わねぇだろ。元同級生ってことで支払い期限は無期限にしてやるから、せいぜい頑張って? 』
しゃがみこんだ拓海の肩をポンって叩いてから話が終えた事に背を向け歩き出す
『 父親に許可貰えば、契約書持ってくるわ。それまで前金、用意しとけよー 』
「 っ、わかった.... 」
俺だって大切な弟がいる
だから拓海が弟を守りたいと思う気持ちはわかる
だけど、甘いことは言えないんだ
俺だって陽妃を守るために必死なんだ....
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