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一ノ瀬さんが逮捕された日
ニュースはそれに持ちきりだった

つい、ほんの数日前までは刺された事に可哀想だなんて声は掛けられていたのに、人は簡単に手の内を返すと思う

両親を殺した事について、その過去の話等が調べに調べ尽くしたマスコミはニュースに取りあげられる

そして本名 ルイス・ド・ボーデンがマフィアのボスだと言うのとも事実だった為にその社長が経営していた会社は一気に株が下落し多くの社員が自ら自主退社したと言う

サラリーマンで賑わう会社は今では誹謗中傷を受ける会社へとなっていた

「 .... 」

「 陽妃さんこねぇな 」

もう一人、この事で居なくなったのは
一つだけ残った教室の後ろにある机だ
その机には暴言が幾つも書かれ、陽妃さんは人殺しの兄の娘として苛められ来なくなった

ほんのつい最近までニコニコしてたクラスメートの女子は手打ちを返し、彼女から得た一ノ瀬さんの隠し撮りすらネットにばら蒔き

その内容は嘘は嘘を重ねて、よくわからないことすら言われていた

" 幼女を犯した!? "

" AV男優らしい "

人の嘘は簡単に拡散すると俺は耳を閉じて背けたかったが、今回の事は和泉家が関わってるからこそ俺には可哀想だという声ばかり届く

街を歩き、ニュースが流れても一ノ瀬さんの事で持ちきりになり最悪の状況まで告げられていた

" 死刑だ "

" 人殺しのマフィア!! "

" 夫婦以外に殺してる筈だ "

一ノ瀬さんを殺したくて堪らない人達は増えて、ネットではその事やニュースのマスコミすら裁判の判決を待っていた

「 下らない.... 」

あの人が死刑されるわけがない
そこまでする必要もないし、もし全て本当だとしても俺はいつでも待つ気でいた

" 11月11日、会おう "

きっと何年先でも彼は来るだろう

リクさんとして、俺の前に....

それまで待っていようと決めたんだ

学校も詰まらないが、一ノ瀬さんに言われた通りに医者になるために休まず通っている
バイト先は問題を起こした子を雇えないと言われて辞めてしまったがそのお陰で勉強する時間が増えたと思えば十分なほど

彼が一文無しに出てきてもいいように俺が頑張ればいい話だ

「 ただいま....って、兄貴.... 」

此処最近、また姿を消していた兄がちゃぶ台の前に座ってることに驚いた俺は靴を脱ぎすて、玄関の扉を閉めてから駆け寄った

「 お帰り、海君 」

「 一ノ瀬さんはどうなるんだ!? 」

本当は平気な顔をしてても気にしていた俺に、兄は俺の頭に触れ優しく撫でてきた

「 海君、颯が好き? 」

「 好き....かは分からないけど、信じてる....殺害をする人じゃないって 」

まだ恋愛とかは分からない
けれど、誰も信じないのなら信じたいと思う俺は真っ直ぐと兄を見れば彼は頭を撫でてから笑った

「 本当、君は真面目だね。俺はね....ずっと君が好きで大切だった 」 

「 えっ.... 」

引き寄せられ抱き締められた時には一回りは小さいはずの兄の腕の中にいた

俺はこれを知っている

幼い頃から兄がよく抱き締めてくれたことを....

だから俺は、寂しくなったことも知ってるんだ....

「 だから、本当の事を言うよ....両親を殺したのはね....俺なんだ 」

「 !! 」


___
____


拓海 視点


一ノ瀬 颯、彼がファッションモデルになったときに俺はそれを交差点にあるビルのポスターで見た

俺と同じクラスに通っていても、こうも違う生き方をしてるのが気に入らなかった

それなのに俺と同じく同い年の弟を持ち、そして両親が家に居ないことも同じなんて
違うのは金があるか無いかの差

「 ただいま.... 」

「 拓海!お金を貸して 」

「 パパ達、必要なんだ! 」

「 ...... 」

仕事を終えて家に帰れば、ギャンブルによって無くなった金を貸して欲しい
俺が帰ってくる前に漁っただろう部屋はグシャグシャで、物も全てひっくり返っていた

まるで泥棒が入ったように、けれどやった本人達は無自覚の様に俺にすがり付く 

「 拓海.... 」

「 拓海....食べ物を買うお金だけでもいいんだ.... 」

「 そう、ママはお腹すいたわ.... 」

すがる親が惨めで、そしてこの光景をなにも知らない大切な弟に見せたくなかった

目についた時計を見ればもう少しで小学校のバスが来る時間帯のために、ポケットから財布を盗りだし入ったばかりの給料の半分を渡した

「 ありがとう拓海!貴方を産んで良かったわ 」 

「 倍して返すからな! 」

「 どうでもいいよ。さっさと行きなよ 」

仮面をつけたような笑顔を向ければ両親は急いで外へと向かった

「 俺を産んでよかったか....なら、海君は? 」

金を渡すだけの子供が俺だとしても、二人の眼中に海斗の姿はなかった

分かっていたことに、腹が立った

「 兄ちゃん、たっだいま~!って、なんじゃこのへや!? 」

「 おかえり、海君 」

両親の事は放置して、帰って来た海斗に向けて笑顔を浮かべてから散らかった部屋を片付け始める

「 おれの絵本まででてるー 」

自分の物は片付けてくれる海斗に泣きそうになりながら掃除をしていれば、俺の元へ一冊の絵本を持ってきた

「 兄ちゃん!これ、しってる? 」

「 シンデレラだね、それがどうかしたの? 」

絵本が好きな海斗の為に、少しでも余裕が出来れば買っていた絵本の一冊
その中でも海斗はシンデレラが好きだった

掃除する手を止めて、しゃがみこんで目線を合わせれば柔らかい頬をめいいっぱい持ち上げて笑う

「 おれ、シンデレラになりたい!ぼろぼろだけど、さいごは王子さまとけっこんして、ゆうふくになる! 」 

「 ふはっ、海君が王子様にならなきゃ 」

「 うーん、おれはおかねもちじゃないから....王子さまじゃない.... 」

シンデレラはボロボロでこんな家みたいな場所で生活していても、優しい心を持ちそして、それを見かねた魔女が舞踏会へと招待した

「 なら俺が海君の魔女になってあげる 」

「 えっ?兄ちゃんが? 」

「 そう、綺麗なドレスを着せて舞踏会に連れていってあげる。それまでに優しくて真面目なシンデレラに成長するんだよ? 」

「 うん! 」

君をシンデレラにしてあげる

それを叶えたくて頑張ってきた

そして、後にすれ恋で出会った明らかに金持ちのお嬢さん風の子と出逢わせてあげたかった

俺の変わりに行ってなんてほんの出任せだ

けれど、心配で着いていった俺は海斗が出逢ったのが直ぐに颯だと知った 

「 なんで?まさか.... 」

最初はあの日の仕返しかと思った

俺がした事を颯の責任した

あの日の出来事


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