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しおりを挟む" 11月11日 19時30分。御話がしたいので
駅前の時計塔前で御待ちしてます "
前フリや大人としての言葉をつける事無く、要件だけを書いて送ったメール
リクさんが来ても来なくてもそれでもいい
只俺のけじめをつけたいから送ったんだ
返すそうと思って返せてないホテル代や
言いたくても言えなかったこと
それを引くるめてもし来たなら伝えようと思った
送ったその日に、来ると言うメールは帰って来なかったけれどそれでいい
俺が待てばいいのだから....
「 おはよう、海斗!また一週間始まるな! 」
「 おはよう、そうだな.... 」
「 もう11月だぜ!早いよなー 」
秋の紅葉は落ち始め、冬の風が強くなった
もう今年も残すところ後少し
肌寒さも増したように冷たい北風はどこか俺の心を氷らすように吹き抜ける
何時ものようにクラスメートと出逢い、そして学校に向かって歩いていく俺は彼が軽く指差した方へと視線を向けた
「 御前の好きな社長の到着だぜ 」
「 だから好きじゃねぇって何度言えば.... 」
誤魔化してるけど、気になるのには変わらない
黒のベンツは何時ものようにビルの前に止まり俺はそれを見ていた
一目でも一ノ瀬さんが見えれば其だけで嬉しいんだ
「 なんかさ、黒のベンツは格好いいんだけどヤクザとかも乗ってそうだよな 」
「 それはイメージだろ。お偉いさんだって乗ってるもんだって 」
「 まぁ、そうだけどな.... 」
「 つーか、あの人....誰? 」
クラスメートは目線を向けた
その先には此まで居たことのない人が影に隠れたように立っているのを見えた
そして俺達はその男が持ってるものに目を見開く
「 おい、まさかあれって....ここ、日本だろ!?って、海斗! 」
「 一ノ瀬さん!!出てきたら駄目だ!! 」
道路にある柵に手を兼ねて声を出した俺の言葉は、目の前を通り過ぎる車によって掻き消された
行きたくても交通が多い道路では赤信号になるまで待つしかなくて、止めたくても止めらない事に苦しくなる
せめて、気付いて欲しくて手を伸ばしてもそれは何の意味ももたない
「 社長、足元に気をつけて下さいね 」
『 黒澤君は心配性だな 』
扉を開き出てきた一ノ瀬さんは先に歩き始め、そして秘書さんはいつものように扉を閉め直した
待って、そんな....!
秘書さんに気付いて欲しくても影に隠れていた男は走り出した
『 !!? 』
「 社長!! 」
秘書さんの焦る声と通行人の叫び声に俺達は目を疑った
「 死ね、新輝! 」
『 誰と....間違えてやがる 』
男は離れけれど彼が持っていた包丁は既に無かった
「 海斗!!行くなって!! 」
「 一ノ瀬さん!! 」
赤信号になったと事に走り出した俺と同時に男は逃げ、一ノ瀬さんはその場で崩れた
「 颯!!なにを立っているんですか!早く救急車を!! 」
「「 はいっ!! 」」
秘書さんによって支えられた一ノ瀬さんのスーツは徐々に赤く染まり
近くまで駆け寄った俺に秘書さんは腕で停止する
「 近付いては駄目です 」
「 俺は医者を目指して勉強してます。止血だけさせて下さい 」
「 ....分かりました。颯、少し動かしますよ 」
『 っ.... 』
痛みで顔を歪まず一ノ瀬さんに秘書さんは刺された部分の包丁に触れる事無く俺へと見せた
「 海斗って....っ! 」
「 大輝、実技と思って!そっちを支えてくれ 」
「 お、おう! 」
俺達は医師を目指す医学部に所属してる
応急処置は何度も練習してきたと大輝に指示を出して一ノ瀬さんを支えて貰えば服の上から刺された部分を見る
「 腹部....包丁を抜きます。直ぐに止血するので動かないよう抑えていてください。一ノ瀬さん....頑張って下さい。いきます.... 」
焦りは禁物だと教師がよく言っていた
俺が出来ることの一番の事をするために冷静に告げてから包丁に手を当て真っ赤に染まる両手を気にしないままそっと引き抜いた
痛みで唸る一ノ瀬さんを見て涙が流れそうになるも、其よりも先だと服を捲り上げ腹部に部活に使うタオルを押し当てきつく圧迫する
「 これで、大丈夫です.... 」
「 ....颯、俺の不注意だ....すまない 」
何処かクールな印象のあった秘書さんの目に涙は浮かび、彼の身体を気遣うように抱き締める姿は上司とかそう言うのとは違ってると察した
彼は....一ノ瀬さんが好きで、大切なんだ....
『 っ、御前が泣くなんてな.... 』
血の流れが緩くなり痛みによって麻痺をしてる一ノ瀬さんはうっすらと目を開け、秘書さんの表情を見て密かに笑っていた
「 泣いてません....喋らずじっとしてなさい.... 」
『 ふっ....調べてくれ.... 』
「 なにをですか? 」
こんな時でも仕事の事を優先するのかと、止血して抑えてるままの俺達は一ノ瀬さんの言葉に耳を傾けた
『 ....一ノ瀬、新輝....俺の父に、まだ借金してる奴を....さっきの奴は、金を返せといってきた....っ 』
「 動かないで下さい! 」
無茶苦茶な人だと思ってたが、本当に無茶苦茶な人だ
刺されたのに自らの腹部を抑えて立ちたがろうとしたのだから秘書さんは止めるよう肩を抱く
『 探せ....俺が全て、負担する.... 』
「 分かりました、探します 」
一ノ瀬さんの言葉に驚いた
借金を返済しろ、ではなく負担するといった
それも自らの父親が貸した金を相手が返せなかった場合の意味だろ
ふっと、兄が借金返済したって意味が分かった気がした
鳴り響く救急車の音とパトカーの音
直ぐに緊急隊員が近付けば傷口を見てから俺達へと視線を向けた
「 応急処置が完璧だが、血を触った君達も検査が必要だから救急車に乗ってください 」
秘書さん、大輝、そして俺は検査の為に同行することとになった
目撃していた人は警察官に事情聴取されていたが、刺した男はあのビルから離れた場所で他の刃物を使い自害し、川へと身を投げていた
大手企業の社長が刺されたことで
直ぐにニュースへと流れた
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