すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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朝起きて、メッセージを返してくれる時間は昼過ぎた辺りにひょっこりと送られてくる
おはようございます、なんてメッセージが気持ち悪いかと思っていたが

一ノ瀬さんは然程気にして無い様子であり俺も安心して返せるときは返していた

季節は寒くなっているのに関わらず心は何処か受かれたように暖かくなる

「 まるで御前に春が来たみたいだな? 」

「 は?なんでだ? 」

前の席に座る八木 遊馬の言葉に疑問になり、昼休みの時間に返ってきたメッセージを眺め口元が緩んでいた俺は目線を向け、首を捻る

「 だってさ、此所2、3日気持ち悪いぐらい浮かれてるだろ?何がそんなにいいか、俺にも教えろよな 」

答える必要は無いのだが、このサイトを進めたのは遊馬であり、俺はそのお陰で一ノ瀬さんと会話が出来ている

隠す必要は無いかと思い返す

「 サイトで相談に乗ってくれる優しい人と出逢ったんだよ....その人と食事する約束もしたし 」

「 食事ねぇ。出逢っていいのかよ? 」

「 えっ? 」

逆に駄目なのだろうかと首を捻ったまま幾分か硬直する

「 相手は明らかに成人だろ?御前は高校生。その立場の差ぐらい考えろよ 」

「 ....そのぐらいは知ってるさ 」

「 いーや、知ってないな 」

「 なんでだよ 」

高校生と社会人、それも一回り年上の相手に興味をもって会おうとしてるのは理解してるが、それも全てリクさんにメールを送るための口実だ

それは最初から変わり無いと断言できるのだが、遊馬は机に頬杖を付き答えた

「 だって、御前....優しくされたら好きになりそうじゃん。相手がどんな奴かは知らねぇけど、高校生が社会人好きになるのは止めとけ。負担するのは向こうだぞ 」

「 なっ、男相手に好きになるかよ!それに俺は気になる女性いるし 」

「 ....どっちでもいいけど。御前って他人には無感情に見えて、好意持った相手には尽くしそうだから心配だわ。遊ばれて捨てられなければいいな 」

なんて事を言うんだと怒りたくなった
かっと頭に上る血に文句を言ってやろうと口を開こうとするも、ふっと視線の端に見えた一ノ瀬 陽妃の姿に血の気は引いた

彼女は俺とお兄さんの事を知ってるのだろうか?
もし、食事に行くときに俺がクラスメートだと分かればどんな反応をするのか

高校生が社会人好きになるのは止めとけ、って言葉は予想以上に胸に引っ掛かり怒りの矛先は何処かに消え去った

リクさんだって社会人じゃないか

俺は嘘をついてる高校生....

最初の過ちを何処で修復したらいいのか分からない
だが、先に一ノ瀬さんから伝えたいと思った

俺は高校生だと

「 ....食事代奢らなきゃ、って思うのだろうか。自分の分は払いますって先に言うべきか.... 」

女性に送るメールでも悩んでるが、男性に送るメールすらもこんなに悩むとは思わなかった

学校を終え、バイトも何処か上の空で家に帰ってからひたすら年上男性について調べていた

「 30代男性 恋愛事情....年下彼女とのデメリットとメリット....って、恋愛じゃねぇ!! 」

なんでいつの間にか30代男性の恋愛について調べてるんだと、自分の検索履歴にツッコミを入れスマホを布団へと落とす

「 これじゃ....二人のリクさんが気になってるみたいじゃないか.... 」

恋愛とは無縁の俺が、此所まで悩まされるとは思わなかった

どちらを優先するなんて考えられられず、どちらとも仲良くしてみたいと思う欲が生まれてるのは分かる

金持ちなのは知っているだが、そんな事は関係無いほど気になるんだ

「 ....くそ、気持ち悪い 」

考えればムカムカとする胸焼けに眉を寄せ、布団に丸まっていればピロンと鳴り響く通知音

一ノ瀬さんからだろうかと開けば、其処にはやっぱり彼らしい文が書かれていた

「 先に寝る。お休みって....態々言ってくれるんだ....いい夢見てください。おやすみなさい、っと....なんだこれ 」

相手は男性なのにまるで恋人同士が寝る前に送り合うメッセージみたいじゃないかって思えば、一気に恥ずかしくなり枕へと顔を埋める

「 なんで、なんで、なんで、なんで!こんなにも一ノ瀬さん気になるんだよ!! 」

「 まぁ、颯君美形だからね。気になるのも無理ないよ 」

「 だよな....って兄貴!!? 」

聞こえてきた声に頷いてしまったが、兄貴どこ行ってたんだと驚けば彼はいつの間にか、窓から入りしゃがみこんでいた体勢を崩し、俺の布団の横へと横たわった

「 颯君と会わせてあげることは簡単だけど....俺は嫌われてるからねぇ 」

「 あ、なぁ....一ノ瀬さんって俺の事をしってんの? 」

「 知らないよー?俺に弟がいることは知ってるけど、顔まではねぇ 」

気になっていた事を聞けたことに安心はするが、
其れなら何故....焼肉屋のバイトの時にじっと俺を見てきたのだろうか

まるで俺を知ってるような雰囲気だったことは覚えている

「 ....颯君は止めとき。海君が泣くよ 」

「 えっ? 」

何故だ?その言葉を聞く前に兄貴は眠りにつく

俺が泣く?それはどう言うことなんだ?

意味深な言葉を残して寝ないで欲しい
タイミング合えば聞いてやると思って、
俺もまた眠りについた



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