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しおりを挟む「 それで、御前の方はどうだったー? 」
「 どうって.... 」
制服を普段の私服へと着替えてから、二人で朝御飯の食パンを齧り筒昨夜の話へとなった
どうって言われてもなんて報告したらいいか分からない
寧ろ、兄に教えて興味があるなんて言われたら少し複雑だから言葉を考えて逆に朝帰りした事を聞いてみた
「 そういう兄貴はどうなんだよ?朝帰りしだし 」
俺も朝帰り、なんて言える訳もなくて伏せてから問い掛ければ兄は一気に力尽きたように溜め息を吐き、丸いテーブルへと顔を伏せた
「 ざーんぜん....映画行ってカラオケまではいいんだけど。カラオケで酒の飲み放題呑みまくったせいでホテルだと不能でからさ....先に寝ちゃった.... 」
「 不能って.... 」
「 俺って酒が入ると全然、やる気にならなくて寝るのを優先しちゃうんだよね....海斗はそうじゃないといいね 」
父親がそうらしい、なんて告げた兄にすでに俺もその血を継いだのかと思うと嫌になる
いや、酒を呑んだ状態で襲わないのは良いことなんだろうが互いに女より先に寝てしまうことに此処まで落ち込んでるのだと分かる
「 ....で、なんで28歳でカイって名乗ってんだ?32歳だろ? 」
「 32歳ってJKからしたらオッサンじゃん!それに、俺の本名 拓海なんて知られたら.... 」
32歳がオッサンとか言ってるけど、その年齢で高校生と仲良くしようなんて気持ち悪いことをしてる兄に引いた
そんなに本名知られたくないのかと告げようとすれば、アパートに近づく荒い足音に兄は口元に指を当てた
「 おい、クソ拓海!!金返せ!! 」
「 居るのは分かってんだよ!!ブラックリストにも載りやがって!!拓海!! 」
ガンガンっとアパートの扉を叩く借金取りの声と、その呼ぶ名前に兄は青ざめてからこそっとテーブルの下に頭だけを隠した
「 和泉 拓海ってネットのブラックリストにも載ってるんだよ....だから課金サイトなんて登録できないし.... 」
「 だからってさ、弟の名前を使うかよ 」
カイなんて、渾名だと教えられた時には嫌がらせかと思ったが案外リクさんと話してみるとカイさんって呼ばれるのは嫌ではなかった
「 思い付かないんだよ....沢山、偽名使い過ぎて.... 」
「 いっぺん、あの人達に連れて行かれた方がよくね? 」
「 海斗ひどっ!! 」
ぐすんっと鼻を啜る兄に、俺は溜め息しか出ない
出会い系サイト以外にも銀行などにも登録してるらしいが、ブラックリストに入ってる為に金を借りることも出来ない
寧ろ、借りた分を払い終わっても利息の支払いが残ってる為にその利息が更に利息がついて、今はもう手に終えないとか言うじゃないか....
「 其なのに女と遊ぶんだな。それも犯罪の女子高生 」
「 手を出さなかったら犯罪じゃないし....それに、彼女はお金持ちしか興味ないから.... 」
「 お金持ち? 」
テーブルからゆっくりと顔を上げた兄の言葉に傾げれば、彼は小さく頷く
「 理想はお金がある男性らしい....その為にデートのときはお金が必要なんだよ 」
「 金のかかる、人なんて止めればいいだろ 」
「 海君には分からないよ.... 」
「 は? 」
悲しそうに兄は俺の頭に触れ、くしゃりと撫でながら言葉を続けた
「 本当に好きになった子は手にいれたいと思うんだ。一目見た瞬間から好きになるんだから.... 」
「 一目見た瞬間から.... 」
「 そ、歩いてくるその姿を見ただけで好きになってしまったんだから。俺はどんな手を使ってもお金を集めるよ 」
兄が何故、お金が有りそうな人をキープしてるのか分かった気がする
だがそれはきっと自分の為にもならないしキープされた側も嫌だろ
どちらにも嘘をついて、好きになった相手にも金持ちだと嘘をついてる事になる
「 ....俺には分からないけどさ、そう言うなら働けよ 」
「 ....そ、それはちょっと....身体の拒否反応が.... 」
「 拓海!!!金返せ!! 」
働いてるというかバイトしてる俺は借金ないが、今は働いても無いのに借金抱えてる兄を見るとリクさんにちょっとだけ誇らしく自慢してしまったことを取り消したくなる
「 あ、海君。君は子犬みたいにへたれなんだから好きな人には狼になりなよ?じゃっ! 」
「 あ.... 」
裏の窓から逃走した兄に、あんな奴が兄だとリクさんの伝えるのも嫌なために忘れ去りたくなる
だが" 狼になりなよ "って言葉に少しだけ勇気は貰えた
「 メール....してみるか 」
ホテルの事とお金について謝るべきなんだろうって考えると、それを言い訳にメールをしても良い気がする
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