すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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兄の話からすれば互いの写真は見せあってないらしく、容姿の雰囲気だけ伝えていると言う

「 金髪か.... 」

黒髪の俺は、兄のように金髪ではないがだからといってブリーチするのも面倒だからこそ、
一旦家に帰ってから髪に触れ考えていた

兄ではない、と正直に伝えてその場を直ぐに帰ればいい話だと思うが兄が
" 高級レストラン予約してるからそれだけ食え!! "と言ったから兄に成り代わるしか選択肢は無いだろう

なんて、面倒なんだと前髪を撫でてから仕方無く一日限定のカラーリングを入れた

「 ....本当、兄貴だ 」

髪を染めて風呂から上がれば、多少幼い頃の兄みたいな容姿に嫌気がする

あんなチャラ男ではないと言いたいが、
この金髪と青い目ならそう思われても仕方無い

寧ろ、兄のイメージが固定されて金髪野郎なんてチャラいしか思わない

「 はぁー....面倒だが、21時までの辛抱だ。頑張れ、俺 」

兄から聞けば相手は18歳だと言う、21時過ぎ迄連れ歩くなんて成人してる男としてどうかと思うが、まてよ....ふっと有ることに気付き鏡へと見直す

「 俺は28歳に見えるか? 」

兄の設定年齢が28歳だが、俺は18歳だ
年の離れてる兄弟だとは自覚してるが
まだ高校生の俺が兄貴みたいに見えるわけ....

「 いや、見える.... 」

兄貴も大学生みたいなチャラさと童顔で俺は私服の時は二十歳に越えて見られるほど老け顔をしている
それがクラスメートには大人っぽいと言われていたが、まさか此処で役立つとは思わなかった

誇らしいような寂しい容姿が複雑と思いながら、ホストをしてた兄貴の使っていたスーツを取り出しカッターシャツとネクタイを結びロングコートを羽織る

ネクタイの結びかたは学校の制服がネクタイで鍛えられてるために、手早く結びもう一度鏡を見て前髪の半分から髪をかき上げる

「 ....なんとか20代には見えるだろう 」

髪型一つで変わるものなんだなと思い、時計へと目線を向ければ18時50分を過ぎている

此処から行くには丁度いいと、とりあえず財布を持ち中身を確認してからそれなりの値段が入っていればコートのポケットへとスマホと共に突っ込む

「 バイト代貰っていて良かった.... 」

レストランを予約してるとは言えど金はきっと俺もちなんだろ

男だから支払う必要があるが、この出費は俺には関係無い

後から請求してやろうと思い、家を出て歩いて駅前へと向かう

駅前から離れた街外れのアパートの為に徒歩で20分は使うが、自転車で行くなんて大人はしないだろ

特に兄は見栄をはって車はレンタカーを使うか、金のある、良い車に乗ってる友人にでも借りるらしい

兄が言う友人なんてたいした奴じゃ無さそうだがな

「( 少し早く来過ぎたか.... )」

待ち合わせは19時30分
兄では無かったことの言い訳を考えながら早歩きで来た為にまるでデートが楽しみな男みたいになってるじゃないか

生まれてから18年間、彼女すら出来たことなければ女と二人っきりでデートした事のない俺にとって色んな意味で緊張する

駅の前にある時計塔の下で待ち合わせなのだが、写真も見てなければどんな奴かは分からない

只知ってるのは、来ると言う女の年齢とネットで使っていたと言う名前だけだ

「 はぁー、さみっ.... 」

夏が終わり秋はもう少しで冬になる
冷たい北風に身を縮めて、白い息を吐けば行き交う通行人の中に一際耳に響くほどのカツンと音のしたブーツの音に、足元からゆっくりと視線を上げた 

「 !! 」

明らかに時計塔へとやって来る、綺麗なロングの髪をした女は膝丈のコートにブーツを履き白い鞄を持っていた

淡いピンク色のマスクをした女の子は身長も高くスタイルもいいが、俺を見てから目線を外し時計塔近くに来ては立ち止まる

「( あれ?リクさんじゃない? )」

リクさんだとするなら、雰囲気は18歳には見てない
二十歳ぐらいのお姉さんに見えるのだが、俺を見て話し掛けてこない様子に違うのだろうかともう一度他の人が来ないか駅の方へと視線を向ける

隣では甘い香水をほのかにつけてる女性は、時計を見てから白い息を吐いた

『 ....少し早く来すぎたかな.... 』

「( 声、可愛い....? )」

彼女も待ち合わせなのだろうかと思うがポツリと呟いた声は案外、可愛い印象があった


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