ヤクザ娘の生き方

翠華

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しばらく歩くと、ドーンと佇む大きな屋敷の門に『桜組』の表札。


「………」


しばらく沈黙が続き、


「お、おいお前…もしかして桜組の人間か?」


「え?そだよー」


「いやいやいや!軽くね?」


「まあ、何となく分かる気はしますけど」


「びっくりだけどらしいっちゃらしいよね」


「え、二人共どういう事?」


「ま、ヤクザの娘って感じはするよな」


「…うん」


「ちょっとかっち!うん、じゃないよ!何だよ皆!」


「ま、メスザルの口が悪い理由は理解出来たな」


「なんだとオスチンパンジー!」


「ああ!?やろうってのか!」


外でぎゃあぎゃあ騒いでいると、


ガタン、キィィィィ。


扉が開く。


「おかえりなさいませ。花子お嬢様」


扉の開く音と共にしゃんと背筋を伸ばす。


「ただいま。鈴音」


五人全員がウチの変わりように驚いた様子だ。


「そちらの方々はお友達ですね」


「はい」


「中で飛春様がお待ちです。お友達の皆様もご一緒にとの事です」


「そう。ありがとう」


中に入り、父さんの部屋に向かう。


「花子です。友人と一緒に参りました」


「入れ」


「失礼します」


とっち達はあまり緊張していないみたいだ。常に周りには敵しかいない状況だからだろうか。


七代目の目の前に座り、とっち達はウチの後ろに並んで座る。


「ただいま帰りました」


「おかえり。後ろのお前の友達とも挨拶をしたい」


「はい」


横にはけて翠の隣に座る。


「初めまして。桜組七代目の一条飛春だ」


「初めまして。クインテットのリーダーしてます、芝木叶真です」


堂々と真っ直ぐ七代目の目を見て挨拶する。


「へぇ、いいね。後ろの四人のお前への信頼が見てわかる」


「ありがとうございます」


七代目は楽しそうだ。


「城山咲也です」


「お前真面目だろ。道から外れた事すんのが嫌いな目だ」


「まぁ…」


「関城真白です」


「可愛い顔してんじゃねぇか。でもお前、ちょっと危ねぇ感じがすんな」


「………」


「黒田優です」


「お前はちょっと自分だけで世界を作ってる感じだな」


「………杉田奏明…です」


「いい声じゃねぇか。だがお前は内に籠りすぎな気がするな」


全員を見透かしているように七代目は言った。でも驚いた顔をしている辺り、当たっていたのだろう。


ウチも気づかなかった事をすぐに見抜いてしまう。七代目の怖い所だ。


「次はうちの大事な家族を紹介しよう」


そう言うと七代目は翠を見る。


「桜組の情報収集担当の田代翠です。以後お見知り置きを」


「七代目ボディガード。五十嵐蓮だ」


「門番。久瀬遥人ですな」


「同じく門番。久瀬彰人ですの」


「以上が直属の部下達だ」


「………」


「どうした?何か言いたい事がありそうだな」


「そんな大切な情報を俺達に話してしまってよかったんですか?」


「大切な情報だから話したんだよ」


皆訳が分からないという顔だ。


全く、少しも自覚がなかったとは。悲しい話じゃないか。


「分からねぇって顔だな。お前らは俺の大事な娘が連れて来た友人。という事は信頼出来る人間だ。そうだな?」


七代目はウチを見る。


「はい」


「そういう事だ。娘が信頼するお前らを俺ら家族が信頼しないはずがないだろう」


「………」


「花子、お前もまだまだこいつらに信頼されてねぇな」


「申し訳ありません。努力不足です。もっと精進致します」


「ま、そういうこった。まずはお前ら全員風呂入って来い」


「え?」


「鈴音にはもう頼んである。さっさと入って来い。俺らは先に居間で待ってるからな」


「分かりました」


ウチは皆を引き連れて部屋を出る。


「じゃあ風呂入って来なよ。案内するから」


「お、おい」


「まあまあ質問とかは全部あと!風呂入ってご飯食べてゆっくりしたら話は聞くから!」


そう言って風呂に案内し、着替えやらタオルやらを渡して自室に向かう。


今日の夕食は楽しくなりそうだ。
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