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捜索者から逃れる為に俺は、妹の意識を全力で遠ざけるのでした
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(マリー! もうここまで嗅ぎつけてきたのか!?)
絶対に追跡されぬ様に様々な工夫をしたのだが、向こうの方が一枚上手だったようだ。しかしまだ直接見られたわけじゃない。
ここは何とかして隠れなければ……。顔を隠す為、俺は真里ちゃんの横に座る事を思いついた。
「一口貰う前に隣に座っても良いかな?」
「ふえ!? 隣ですか!」
「ご、ごめん……時間がないから!」
答えを聞く前に俺は真里ちゃんの横に移動する。そうしなければ俺の顔がマリーに見られる可能性があるからな。後ろ姿なら他の人と勘違いするかもしれないと思い、すぐ様席を立つ。
「はわわ……!」
「ご、ごめんね。追い込んだみたいになっちゃって……」
四人掛けのテーブル席で、二人掛けの椅子に俺と真里ちゃんが腰掛けている。更に俺は真里ちゃんを壁側に押し込む様に座ってしまった。急いでいた為強引に感じるかもしれないと思い、真里ちゃんに謝罪をするが……。
「い、いえ……強引なのも好きですので……」
「え……」
「あ、あれ! 私今何言ってんだろ……あはは」
つい本音が出てしまい、目をぱちくりさせて混乱している真里ちゃんの反応が心にグッとくる。
しかしそれよりも、今は外に意識を向けていなければならない。するとお店の扉が開いた音と共に、凄まじい気配が店内を圧倒する。
『いらっしゃいませ……』
長年共にいたから俺には分かる。いまあの金色のマリーが同じ空間にいることが。
『すみません、この写真の子に見覚えありますか?』
恐らく店員に写真を見せて俺がいるかを確認しているのだろう。犬かな俺は?
『おや、君はたしか藤麻君の妹さんだったよね?』
会話に割って入ってきたその声に俺は聞き覚えがあった。いまなら大丈夫だと思い、俺は入り口に目を向ける。するとそこには闇を纏った金色のマリーと、お店の制服姿の銀髪少女の先輩がいた。
先輩とは制服検査の時に一度話した人だ。未だ名前を聞いていないが、どうやらここでバイトをしている様だな。生徒会などで忙しいと思っていたのだが大丈夫なのだろうか。
『誰だお前は。何処の虫だ?』
『虫じゃなくて優曇華銀杏だよ、マリーちゃん』
先輩は優曇華銀杏と言うのか、聞いたことない凄い名前だな。
『あっそ、それよりお兄ちゃん見てないか聞いてるんだけど?』
先輩に向かってなんたる態度をとっているんだ我が妹は。そんなマリーに対して銀杏さんは余裕の表情で言葉を返した。
『さっきまで居たけど、一人で何処かへ向かっていったね』
『それさえ教えてくれればあんたなんかに用は無いわ、消えて』
消えるのはあなたの方でしょうに……。マリーは店を後にして再び俺を捜索しに出ていった。緊張の糸が切れた俺は、横の真里ちゃんに顔を向ける。
「やっといったか……」
「い、今の人って金神マリーちゃんですか?」
「知ってるの?」
「……はい、噂は予々
どうやら同世代の子にはかなりの知名度がある様だ。どのような噂が流れているのかは分からないが、きっと良くない方だろう。
「藤麻さん、追われているんですか?」
「ははは、ちょっとね……」
「こ、これ飲んで元気出してください!」
昇天ペガサスmix盛りとも呼べるそのビジュアルに圧倒されるも、俺はいよいよストローに口を近づける。表現が古いか……。
ゆっくりストローに口を近づけると、横から視線が来ていることに気づく。横目で見ると真里ちゃんが真っ赤な顔で俺を見ていた。
そのぷっくりと膨らみ、艶のある魅力的な唇を見た途端に心臓が跳ねる。あの唇と間接的ではあるが、キスをするとなると自然と下腹部に熱が溜まった。静まれ……俺のおチビ。
「はわわ……はわわ」
「い、頂きま……「お客様にはまだ早いですよ」」
口を付ける瞬間、真里ちゃんの反対側から俺が握っていた飲み物を取り上げた人物がそう告げる。顔を上げると先程俺を隠してくれた銀髪の恩人だった。
「優曇華先輩!」
「あれ、なんで名前知ってるのかな?」
「マリーとのやり取りを聞いていたので」
「それじゃあ説明は不要だね、これはそのお礼として貰っておこう」
エクストラまみれのそのフラペチーノを全て飲み干した銀杏さんは、空になった俺にそれを返してきた。
折角の真里ちゃんとの間接キスが……。そのまま戻っていくと思いきや、俺の耳元で銀杏さんが一言囁く。
(今度私ともデートしてよ、君の事もっと良く知りたいから)
「え!?」
「それじゃあ、ごゆっくり~」
ひらひらと手を振り店員たちの元に戻って行く。空の容器を持ったまま硬直している俺を、真里ちゃんが心配してきた。
「大丈夫ですか? 何を言われたんですか?」
「いや、大丈夫だよ。何なら最高の気分さ……」
「……本当に大丈夫ですか?」
不敵な笑みを浮かべる俺に少し怯える真里ちゃん。美人先輩とデート出来る機会なんてそうそう無い、気分は最高潮だった。
今日はこのままの気分でいたいが、時間はとっくに夕方を迎えていた。遅くまで真里ちゃんを外に居させるのは気が引けるので、駅前で別れを告げて俺も帰ろうとする。
しかしこのまま帰ればマリーにカッター穴を開けられるのは必然。どうしたもんかと悩んでいたら、遠くに吾郎が通ったのを目撃した。俺は急いで吾郎の元に駆けて、一泊出来るか相談したのだった。
絶対に追跡されぬ様に様々な工夫をしたのだが、向こうの方が一枚上手だったようだ。しかしまだ直接見られたわけじゃない。
ここは何とかして隠れなければ……。顔を隠す為、俺は真里ちゃんの横に座る事を思いついた。
「一口貰う前に隣に座っても良いかな?」
「ふえ!? 隣ですか!」
「ご、ごめん……時間がないから!」
答えを聞く前に俺は真里ちゃんの横に移動する。そうしなければ俺の顔がマリーに見られる可能性があるからな。後ろ姿なら他の人と勘違いするかもしれないと思い、すぐ様席を立つ。
「はわわ……!」
「ご、ごめんね。追い込んだみたいになっちゃって……」
四人掛けのテーブル席で、二人掛けの椅子に俺と真里ちゃんが腰掛けている。更に俺は真里ちゃんを壁側に押し込む様に座ってしまった。急いでいた為強引に感じるかもしれないと思い、真里ちゃんに謝罪をするが……。
「い、いえ……強引なのも好きですので……」
「え……」
「あ、あれ! 私今何言ってんだろ……あはは」
つい本音が出てしまい、目をぱちくりさせて混乱している真里ちゃんの反応が心にグッとくる。
しかしそれよりも、今は外に意識を向けていなければならない。するとお店の扉が開いた音と共に、凄まじい気配が店内を圧倒する。
『いらっしゃいませ……』
長年共にいたから俺には分かる。いまあの金色のマリーが同じ空間にいることが。
『すみません、この写真の子に見覚えありますか?』
恐らく店員に写真を見せて俺がいるかを確認しているのだろう。犬かな俺は?
『おや、君はたしか藤麻君の妹さんだったよね?』
会話に割って入ってきたその声に俺は聞き覚えがあった。いまなら大丈夫だと思い、俺は入り口に目を向ける。するとそこには闇を纏った金色のマリーと、お店の制服姿の銀髪少女の先輩がいた。
先輩とは制服検査の時に一度話した人だ。未だ名前を聞いていないが、どうやらここでバイトをしている様だな。生徒会などで忙しいと思っていたのだが大丈夫なのだろうか。
『誰だお前は。何処の虫だ?』
『虫じゃなくて優曇華銀杏だよ、マリーちゃん』
先輩は優曇華銀杏と言うのか、聞いたことない凄い名前だな。
『あっそ、それよりお兄ちゃん見てないか聞いてるんだけど?』
先輩に向かってなんたる態度をとっているんだ我が妹は。そんなマリーに対して銀杏さんは余裕の表情で言葉を返した。
『さっきまで居たけど、一人で何処かへ向かっていったね』
『それさえ教えてくれればあんたなんかに用は無いわ、消えて』
消えるのはあなたの方でしょうに……。マリーは店を後にして再び俺を捜索しに出ていった。緊張の糸が切れた俺は、横の真里ちゃんに顔を向ける。
「やっといったか……」
「い、今の人って金神マリーちゃんですか?」
「知ってるの?」
「……はい、噂は予々
どうやら同世代の子にはかなりの知名度がある様だ。どのような噂が流れているのかは分からないが、きっと良くない方だろう。
「藤麻さん、追われているんですか?」
「ははは、ちょっとね……」
「こ、これ飲んで元気出してください!」
昇天ペガサスmix盛りとも呼べるそのビジュアルに圧倒されるも、俺はいよいよストローに口を近づける。表現が古いか……。
ゆっくりストローに口を近づけると、横から視線が来ていることに気づく。横目で見ると真里ちゃんが真っ赤な顔で俺を見ていた。
そのぷっくりと膨らみ、艶のある魅力的な唇を見た途端に心臓が跳ねる。あの唇と間接的ではあるが、キスをするとなると自然と下腹部に熱が溜まった。静まれ……俺のおチビ。
「はわわ……はわわ」
「い、頂きま……「お客様にはまだ早いですよ」」
口を付ける瞬間、真里ちゃんの反対側から俺が握っていた飲み物を取り上げた人物がそう告げる。顔を上げると先程俺を隠してくれた銀髪の恩人だった。
「優曇華先輩!」
「あれ、なんで名前知ってるのかな?」
「マリーとのやり取りを聞いていたので」
「それじゃあ説明は不要だね、これはそのお礼として貰っておこう」
エクストラまみれのそのフラペチーノを全て飲み干した銀杏さんは、空になった俺にそれを返してきた。
折角の真里ちゃんとの間接キスが……。そのまま戻っていくと思いきや、俺の耳元で銀杏さんが一言囁く。
(今度私ともデートしてよ、君の事もっと良く知りたいから)
「え!?」
「それじゃあ、ごゆっくり~」
ひらひらと手を振り店員たちの元に戻って行く。空の容器を持ったまま硬直している俺を、真里ちゃんが心配してきた。
「大丈夫ですか? 何を言われたんですか?」
「いや、大丈夫だよ。何なら最高の気分さ……」
「……本当に大丈夫ですか?」
不敵な笑みを浮かべる俺に少し怯える真里ちゃん。美人先輩とデート出来る機会なんてそうそう無い、気分は最高潮だった。
今日はこのままの気分でいたいが、時間はとっくに夕方を迎えていた。遅くまで真里ちゃんを外に居させるのは気が引けるので、駅前で別れを告げて俺も帰ろうとする。
しかしこのまま帰ればマリーにカッター穴を開けられるのは必然。どうしたもんかと悩んでいたら、遠くに吾郎が通ったのを目撃した。俺は急いで吾郎の元に駆けて、一泊出来るか相談したのだった。
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