本当は違うはずなのに

2話

そんな私が婚約者と上手く行かないのには理由があった。王太子は、ゲームの設定から想像していた人物とは違い過ぎるのだ。私はゲームでは悪役令嬢だった。ヒロインをいじめぬいて、最終的には処刑までされるという役割だ。だからそんな私が婚約者に好かれるはずがなかったのだ。しかし、実際の、王太子である殿下は違うのだ。

　彼は乙女ゲームのヒーローであり、ヒロインの恋い焦がれる相手であるはずだ。その彼の気持ちが私にあるとは思えないのだが、彼はいつも私に愛を告げるのだ……それも人前で。例えばそれはアカデミーに入学する前のことである。ゲームの設定では私と王太子とのアカデミー入学が重なるのは3歳の時なのだが私は今6歳だ。そのため入学は5歳か、入学の歳にはギリギリまで私は決めかねていたのだが王太子である彼がアカデミーに入学するから、と私までアカデミーに行くよう勧めてきたのである。

　ゲームでもヒロインであるアリスが入学する時に一緒に王太子も一緒に入学したはずだから……と。それはゲームの設定通りだとして……私は、王太子とアカデミーで会わずとも彼と結婚する未来は変わらないと思っていたのでそれを受け入れていたのだが……。彼は私と共にアカデミーに通うために3歳でアカデミーに入学してしまったのだ……王太子である彼が3歳での入学なんて前代未聞である。

　彼はアカデミーで私に出会うとすぐに私をダンスに誘い……そして、私に愛の囁きを繰り返す……それがいつもの流れだ。
　そんな彼は、アカデミーに入学してから2ヶ月程たってヒロインに出会うのだ、そう、私の断罪イベントのある日に。王太子である彼と出会ったヒロインを虐めた罪で私は処刑されることになるはずだし、そして処刑エンドを迎えるはずなのだけれど……その断罪イベントをヒロインが上手く回避したならゲームとは違うエンディングも有り得るのではないかと思っている。

　それは、ヒロインは王太子の攻略対象の一人と恋仲になっているのだからその彼とのハッピーエンドを迎えることだって考えられるからだ。その場合でも私がヒロインに対して行った嫌がらせは断罪され処刑エンドを迎えることになるのだけれど……処刑エンドを回避するならそちらを希望だ。つまり王太子との結婚を断り断頭台への道のりを回避するには、ヒロインに王太子のルートに入ってもらえることが重要だと思うのだが……。しかしそれが上手く行かないのだ。